『アオのハコ』の千夏は、夢佳とのウィンターカップ予選決勝に勝利。しかし全国大会はベスト8で敗退し、高校女子バスケ部を引退します。全国優勝ではありません。
夢佳に勝った74対69と、最後に負けた54対69。どちらも千夏が朝練を重ねてきた先にあるんです。そして最後の朝、バスケを終えたはずの千夏がまた体育館にいる。そこまでが、この大会です。
※原作20~22巻、第179~192話のネタバレを含みます。夢佳との決着、父・冬樹とのすれ違い、全国での敗戦と引退翌朝まで触れます。
この記事でわかること
千夏のウィンターカップ結果は全国ベスト8!夢佳との「決勝」は予選決勝
栄明高校女子バスケ部は、彩昌高校との予選決勝に74対69で勝ち、全国大会では3勝して準々決勝へ。54対69で敗れ、最終成績は全国ベスト8でした。
夢佳と戦ったのは、全国大会の切符を懸けた予選の決勝。千夏のラストシュートで勝った試合と、全国の頂点を懸けた試合は別です。
| 試合 | 対戦相手 | 栄明高校の結果 | 原作 |
|---|---|---|---|
| 予選決勝 | 彩昌高校(夢佳) | 74―69で勝利 | 21巻・第183話 |
| 全国1回戦 | ― | 勝利 | 21巻・第189話 |
| 全国2回戦 | 嵐川高校 | 69―49で勝利 | 21巻・第189話 |
| 全国3回戦 | 舞屋高校 | 63―60で勝利 | 22巻・第190~191話 |
| 全国準々決勝 | ― | 54―69で敗北 | 22巻・第191話 |
表のスコアは栄明高校の得点を左に記載。対戦校名を記載していない試合は「―」としています。
舞屋との3回戦を3点差で勝った翌日、今度は15点差で負ける。「明日も試合がある」が、たった一日で「これが最後だった」に変わってしまう。大会の終わりは、待ってくれません。
だから第191話、勝敗が決まったあとの千夏を、どうしても見たくなるんです。
予選の始まりから引退まで何巻・何話?20~22巻で追える
| 巻 | 収録話と追う場面 |
|---|---|
| 20巻 | 第172~180話。父との話し合い、予選決勝の開始 |
| 21巻 | 第181~189話。第183話で夢佳との決着、第189話で全国大会へ |
| 22巻 | 第190~198話。第191話で全国ベスト8・引退、第192話で猪股家のお疲れさま会 |
試合の決着を読むなら第183話「バスケしよう」と第191話「お前の番だ」。でも僕は、そこへたどり着く前の20巻も飛ばせません。
予選を前に父とぶつかった千夏が、どうやってあの最後の一投を打つところまで来たのか。勝った場面だけでは見落とすものがあります。
20巻では予選と父娘の衝突、21巻では夢佳との決着、22巻では全国での敗戦と引退へ。三冊を通すと、勝った後も続く千夏の時間まで追えます。
千夏と夢佳の予選決勝は74対69!勝ったあと「またバスケしよう」に泣かされる
全国行きを懸けた相手が、よりによって夢佳なんですよ。小さい頃に千夏と一緒にボールを追い、いったんバスケを離れ、今は彩昌高校のエースとして戻ってきた幼なじみです。
千夏はずっとコートに立ち続け、夢佳にはそこを離れた時間がある。同じ相手ともう一度戦っても、二人がこの試合までに持ち寄った時間は同じじゃない。だから一投の重さも違います。
「仲良しの幼なじみ対決」で片づけたくないのは、二人とも相手の知らない年月を背負って、今の自分のバスケをぶつけるからです。
第182~183話|残り6秒のシュートを決めるのは千夏
栄明がリードする終盤、ベンチにいた夢佳がコートへ戻ってきます。勝ちが見えかけた千夏の前に、小さい頃から知っている夢佳が、今の彩昌のエースとして立つ。ここで最後まで気が抜けるわけがない。
昔は隣で同じボールを追った二人が、今度は互いのゴールを阻む。近さを知っている相手ほど、遠慮してもらえない勝負です。
第182話、残り6秒で千夏が放ったシュートが、第183話の冒頭で決まる。栄明74―69彩昌。全国へ進むのは千夏たちです。
よっしゃ千夏! と叫びたくなる一投です。でもすぐ、夢佳の方へ目が行く。千夏がずっと練習していたことを知る幼なじみは、その積み重ねに敗れた側でもあるんですよ。
夢佳は終盤にもう一度コートへ戻り、千夏も最後まで本気でシュートを打つ。勝った側だけを祝って閉じるには、相手もこの試合を全力で戦っていたんです。
敗れた夢佳が、千夏をもう一度バスケに誘う
負けた夢佳には涙が残る。彩昌を決勝まで連れてきたと仲間に感謝されても、悔しさは消えない。自分が離れていた間も練習を続けた千夏に負けたのだから、「いい思い出」で片づくはずがありません。
でも夢佳は、負けたまま千夏とのバスケまで手放さない。また一緒にボールを追う時間へ、千夏を誘うんです。
全国へ進めるのは千夏。でも、二人が一緒にバスケをする未来まで勝者が独り占めするわけじゃない。この誘いで、あのラストシュートを見た胸の痛さが少しほどけます。
そして夢佳は、全国大会では客席へ来て千夏を応援する。予選で向かい合った二人が、今度は同じコートを見つめるんですよ。勝敗を越えた関係を、一つ先の場面で見せてくれるのがうれしい。
バスケを一度離れた夢佳が、なぜ千夏の隣へ戻ったのか。千夏と夢佳が友達として重ねてきた時間も知ると、予選決勝の最後の誘いがまた違って響きます。
父・冬樹が見たのは「交際している娘」だけではなかった
予選決勝の前、千夏は一時帰国した父・冬樹に大喜との交際を伝え、猪股家で暮らすことをめぐって衝突していました。全国を目指して練習したい時期に、家へ帰れば自分の居場所の話が待っている。
ただでさえ大一番が近いのに、20巻は千夏を休ませてくれません。
それでも冬樹は決勝の観客席にいます。家で交際や暮らし方について向き合った娘が、目の前では一人のバスケ選手として勝利を追っている。父も、その姿を見ることになるんです。
千夏が勝つと冬樹も喜び、試合後には父娘が話す。猪股家で大会まで暮らすことにも、二人の間で折り合いがついていきます。コートでの勝利が、家での話まで一瞬で全部解決したわけではありません。
僕がほっとするのは、父が娘の交際をただ許したから、という一点じゃない。千夏が何を目指して、どんな毎日を守りたいのかを、父が聞く方へ動いたことなんです。
第183話では、千夏が大喜へ「毎日朝練に来てくれてありがとう」と伝えます。夢佳と離れたあとも続いた朝の練習。そこへ大喜が来るようになったことを、千夏はちゃんと覚えていた。
あの「ありがとう」は、全国出場を決めた日のご褒美の言葉みたいに聞こえます。でも、まだ終わらない。最後の大会の翌朝、今度は千夏が大喜へ言葉を返すんです。
一人で通っていた体育館に、毎朝もう一人が来るようになった。試合の勝敗に映らないこの変化を、千夏は最後の日まで大切にしています。
父の反対と、千夏が大喜と暮らし続けたかった理由は千夏と冬樹の父娘関係からも見えます。あの観客席の冬樹は、ただ「娘が勝った」と喜んでいるだけの父ではありません。
第181~183話で夢佳がコートへ戻るところから、千夏のシュートが決まるまで。勝者が分かってから読み返すと、僕はどうしても夢佳の表情を追ってしまいます。
全国大会は3回戦の舞屋に63対60で勝利、準々決勝で54対69の敗北
第189話、全国へ向かう千夏を猪股家のみんなが見送ります。そこで大喜が、家族の前で千夏を名前で呼んで応援する。会場へ向かう前から、二人の距離の近さが家の中に漏れているんです。
その呼び方、家族がいる前でさらっと出しちゃうのか!
でも千夏が全国のコートに立つ間、大喜には大喜のバドミントンがある。お互いの大会が近いからこそ、ずっと一緒にいたくても相手の練習を代わることはできません。
1・2回戦を突破|大喜の練習も全国の試合も、同時に進む
栄明は全国1回戦を突破し、2回戦では嵐川高校に69対49で勝ちます。その頃、大喜も匡たちと自分の練習を続ける。二人とも、好きな人の試合だけを見て一日を終える選手じゃないんです。
千夏は千夏のコートへ、大喜は大喜のコートへ。一緒にいる時間が減っても、相手が勝ってほしい気持ちは減らない。見送りの一場面に、その関係が詰まっています。
第190~191話|舞屋高校との3回戦は3点差、応援席には夢佳も
舞屋との3回戦、観客席には大喜や匡、針生たちだけでなく夢佳もいます。予選では千夏のシュートを止めたかった相手が、今は千夏の勝利を願っている。同じ夢佳が客席にいるだけで、予選決勝の続きが始まるんです。
第190話には栄明が27対22でリードする場面があり、第191話で63対60の勝利にたどり着く。2回戦の20点差とは違う、わずか3点差の試合です。
全国で一つ勝つことの難しさが、もうスコアに出ています。予選を勝ち抜いた千夏たちにも、楽な道なんてありません。
その接戦の最中、千夏が練習してきた日々を振り返る。朝の体育館で何度も繰り返した動きが、今は全国の相手と競り合う一つ一つのプレーになっているんです。
そして客席には大喜がいる。毎朝一緒に練習してきた人が、今度は千夏の勝負を見守っている。もう、ここで胸がいっぱいになります。
第190話の「もし大喜がバスケを選んでいたら」は、二人の出会いの答え合わせ
ところが3回戦の途中で、第190話は僕たちに別の人生まで見せます。もし小学生の大喜がバドミントンではなくミニバスを選び、千夏と夢佳にもっと早く出会っていたら。
その世界で大喜はバスケを頑張ってスタメンに入る。でも、代わりにコートへ立てなくなった仲間がいる。自分がうまくなるほど、隣の誰かが試合に出られなくなる。そこで大喜の表情が曇るんです。
やがて大喜はバスケから演劇部へ進み、千夏は海外へ向かう。現実より早く出会って、同じ競技まで選んだのに、二人は一緒にはいられない。えっ、そっちへ行ってしまうのか。
早く出会えばよかった、同じ競技ならずっと隣にいられた――そんな単純な話じゃない。「もしも」の二人を見て、現実の朝練が急に貴重に思えてきます。
ここで大喜が本当にバスケへ転部したわけではありません。第190話は、あくまで違う選択をした場合の「もしも」。現実の全国大会は、そのまま続いています。
現実の大喜はバドミントンを選び、千夏はバスケを続けた。別々の競技だから、同じ体育館で朝を重ねられた。「違うものを選んだ」ことが、二人を離さずにいたのが面白いんです。
別の道に千夏を応援する大喜はいない。でも現実には、客席から千夏を見る大喜がいる。第190話のタイトル「運命なんて」が、ここで強く響きます。
第191話|準々決勝は15点差で敗戦。全国優勝には届かない
舞屋との3点差の勝利から一夜明け、栄明は準々決勝で54対69と敗れます。千夏の高校最後の大会は全国ベスト8で終了。もう次の試合はありません。
夢佳には勝ち、全国へ行った。それでも全国優勝には届かない。千夏が勝った試合と負けた試合の両方を知っているから、この終わりは余計に悔しい。
予選決勝の最後のシュートには何話もかけたのに、全国の敗戦は驚くほど短く訪れる。もっと千夏の試合を見ていたかった僕は、ページをめくって置いていかれた気持ちになりました。
でも第191話は、「54対69で敗れました。以上」では終わらない。コートの外に出た千夏には、まだ大喜へ渡す言葉があるんです。
全国を終えた千夏へ向けて公開された22巻発売記念の動画。全国優勝を飾った選手ではなく、最後まで戦って引退する千夏に「お疲れさま」を贈る一本です。
映像に向かって「お疲れさま」と言いたくなるのは、全国を勝ち抜いた結果だけじゃなく、そこまでの千夏の朝を知っているからなんですよね。
引退翌朝も体育館にいた千夏|第1話の「インターハイ行ってください」を大喜へ返す
準々決勝のあと、チームメイトが泣く中で千夏は笑顔を見せる。その笑顔を見て、僕も最初は少し安心しかけました。けれど、全国優勝を目指してきた時間が、たった一つの表情で消えるわけがない。
悔しさも、ここまで走りきった思いも、同じ人の中にあっていい。千夏の笑顔は、僕には「悔しくなかった」よりも、試合を終えた今の千夏がようやく見せられた顔に見えます。
大喜は「もう千夏先輩と朝練で会えないかも」と寂しくなる。でも自分の引退の日だっていつか来る。なら今は練習しようと体育館の扉を開けると――。
……千夏、いるんかい!! 引退翌朝も、いつもの場所で先にシュートを打っているんです。大喜より早い。そこは変わらないのか!
千夏は早起きが体に染みつき、前日の試合後のクールダウンも兼ねて来たと話す。誰かに「もう練習へ来なくていいよ」と言われたって、朝が来れば体が体育館へ向いてしまうんでしょうね。
部活の最後の日は来た。でも、千夏がボールに触れたくなる朝まで終わったわけじゃない。順位表には出ないこの姿を見て、やっと僕も千夏の引退を受け止められました。
大喜が第1話で千夏に渡した言葉が、第191話で逆向きになる
しかも千夏は、ただシュートを打ちに来ただけじゃない。大喜へ自分から伝える言葉を持っているんです。
第1話で大喜は、千夏にインターハイを目指してほしいと伝えました。憧れの先輩へ、後輩が一生懸命に投げた応援です。その言葉が第191話で、今度は千夏の口から返ってくる。
「インターハイ行ってください」――今度は大喜が言われる番。大喜が毎朝千夏の練習を見ていたように、千夏も毎朝、大喜が打ち続ける姿を見てきたんです。
千夏の大会が終わった朝に、大喜の目標を口にする。あの第1話の言葉が逆向きに返るだけで、二人で通った体育館の時間が、一気につながる。なんてきれいな返し方なんだ。
千夏が「私の代わりに優勝して」と結果を押しつけたわけじゃありません。大喜が挑むのは、彼自身のバドミントンです。相手の競技を自分の競技みたいに語らずに、同じ熱で応援する。その距離がいいんです。
二人が朝の体育館へ通い始めた頃を思い出すなら、公式の朝練フリースロー動画へ。あの場所でボールを打つ姿を見てから第191話に戻ると、千夏が翌朝も体育館にいたことが、いっそううれしくなります。
第191話で千夏の言葉を聞いたら、1巻の第1話へ。あの頃は先輩の背中を追っていた大喜が、今度は同じ体育館から送り出される。二つの朝を続けて読むと、二人の時間がぐっと近くなります。
千夏の引退後は?第192話のお疲れさま会と、猪股家を離れる次の一歩
試合の翌朝を終えても、千夏にはもう一つ、区切りが待っています。第192話「お世話になりました」では猪股家で、ウィンターカップのお疲れさまと引退を祝う会が開かれるんです。
全国のコートでの54対69から、次の話ではみんなでたこ焼き。落差がすごい。でも、結果が出たら一人の選手の生活まで大会が持っていくわけじゃない。家に戻れば、千夏はいつもの千夏です。
大喜と具材をめぐってわちゃわちゃしているのを見ると、あの大会を終えた千夏が、ちゃんと家へ帰ってきたんだなとほっとします。
たこ焼きと「お世話になりました」|家族と過ごした時間にも区切りが来る
千夏は変わり種の具を試したがり、大喜も張り合う。全国での最後の試合を見たばかりなのに、この食卓では二人ともいつもの調子。こういうときほど、同じ家にいることが当たり前に思えてしまう。
だから、千夏が猪股家の人たちへ「お世話になりました」と感謝を伝えると、さっきまでのたこ焼きの賑やかさが急に別の音に変わるんです。
千夏はこの家から朝練へ出かけ、大喜と同じ屋根の下へ帰ってきました。でも大会が終わり、父との事情もあって、猪股家で過ごす日々にも区切りが近づいています。
高校の部活を引退するだけじゃない。毎日「おはよう」と顔を合わせる暮らしも、今の形では続かない。第192話の食卓が、急に名残惜しくなってくるんですよ。
千夏が大喜へ贈った鹿のぬいぐるみも、この家で過ごした時間を思わせます。ついさっきまで具材をめぐって言い合っていたのに、もう次の暮らしを考える二人になっている。
お疲れさま会で笑えたぶん、同じ食卓でのお別れの気配が余計にこたえます。
「引退=バスケそのものをやめた」ではない。全国の次にはそれぞれの時間がある
千夏が終えたのは、栄明高校の女子バスケ部での活動です。引退翌朝にも体育館へ来ている千夏を見れば、バスケという競技そのものと別れたわけではないと分かります。
ただ、その先にどんなチームへ進むのかは、この大会の成績だけでは決まりません。全国ベスト8を、千夏のバスケ人生の最終成績みたいに言ってしまうのは、あまりにも早い。
そして朝の体育館では、今度は大喜が挑戦する側にいます。千夏の全国大会を客席で見届けた大喜が、自分のインターハイへ向かう。同じ場所で練習していても、二人の次の目標はそれぞれにあるんです。
ここまで一緒に朝を重ねてきた二人が、これからも相手の代わりに試合へ出ることはできない。それでも、相手を応援する言葉は渡せる。僕はこの距離が本当に好きです。
二人が交際を始めてからも部活を手放さなかった理由は、千夏と大喜が付き合いながら重ねてきた時間を通して見ると、さらに伝わります。引退翌朝のあの一言も、恋人だけではなく選手同士の応援なんです。
まとめ|千夏は全国ベスト8で引退。でも最後の言葉は大喜へ届いた
夢佳を破って全国へ。舞屋との接戦を抜け、準々決勝で敗れて引退。千夏の最後の成績は全国ベスト8です。でも、千夏の物語がそこで途切れたわけじゃありません。
予選決勝で夢佳に最後の一投を決めた千夏が、引退翌朝には大喜へ「インターハイ行ってください」と言う。勝った日も負けた日も、あの体育館へ帰ってくるんです。
千夏の最後の大会を、ただの敗戦で終わらせたくない。全国優勝には届かなかったけれど、千夏は大喜の次の挑戦を、あの朝と同じ場所から見送った。その続きまで僕は見たいです。
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