『アオのハコ』の守屋菖蒲と高砂は、原作第203話「ジグソーパズル」で別れます。京都の修学旅行2日目の夜、別れを切り出したのは高砂の方でした。
理由は浮気でも喧嘩でもありません。お互いに気を遣いすぎて、最後まで素の自分を見せられなかった。二人とも相手を大事にしようとして、その頑張りが恋を息苦しくしていたんです。
しかもこのすれ違い、付き合う前から始まっています。菖蒲が保健室を立ち去った直後に、匡は咲季の想いを断っていました。あと少し菖蒲がそこにいたら、第168話の選択は違っていたかもしれません。
悪者がいない別れほど、読んでいて逃げ場がないんですよね。高砂もちゃんと優しい。だからこそ第203話はしんどい。
※この記事は『アオのハコ』原作第231話までのネタバレを含みます。アニメSeason1では描かれていない展開です。
この記事でわかること
守屋菖蒲と高砂はなぜ別れた?理由は「遠慮しすぎた恋」
別れの理由は、二人とも相手に合わせすぎて、恋人なのに本当の自分を見せられなかったことです。高砂がそう振り返り、菖蒲も受け入れました。
高砂は恋人と二人きりの時間がほしい人。菖蒲は、恋人も友達も部活の仲間も、全部を大事にしたい人。どちらも普通の願いで、どちらも間違っていません。
ただ菖蒲は、高砂の願いを断れませんでした。断ったら、昔の「合わないとすぐ別れる自分」に戻る気がしたからです。この怖さが、修学旅行でじわじわ効いてきます。
別れたのは23巻収録の第203話「ジグソーパズル」
第203話は、2025年7月14日発売の『週刊少年ジャンプ』33号に載った回です。単行本では、同年12月4日発売の23巻に入っています。
清水寺から旅館に戻った夜、菖蒲は高砂に呼び出されます。旅館の外で先に口を開いたのは高砂で、「別れようか」。菖蒲が「ごめん」と返して、それで終わりました。
集英社の23巻紹介が示すとおり、この巻は菖蒲が「自分の気持ちと折り合いをつけられない」ところから始まります。迷い続けた菖蒲の答えを、先に言葉にしたのは高砂の方でした。
口にした理由は「遠慮」、心の中には匡への嫉妬
高砂が菖蒲に伝えたのは、互いに遠慮して何も見せていなかった、という二人の問題だけです。匡の名前は、別れ話の中に出てきません。
ところが一人になった高砂は、自分は菖蒲が思うほどいい男じゃない、と心の中で認めます。菖蒲と匡の関係に、ずっと嫉妬していたから。
つまり「匡のせいで別れた」は言いすぎですが、「匡は無関係」も正確ではありません。高砂は匡への負けを飲み込んだまま、理由を二人の問題として差し出したんです。
ここ、高砂の株が上がるところだと思いませんか。嫉妬を菖蒲にぶつければ、菖蒲は自分を責めたはず。それをしないで、最後まで格好をつけて去っていく。
守屋菖蒲と高砂はいつから付き合った?告白は162話、交際は168話
高砂の告白は第162話「いいかも」、菖蒲が交際を決めるのは第168話「これが私だ」です。間の6話で、匡と菖蒲は何度もすれ違います。
- 第161話:匡が「彼女に興味はない」と話すのを菖蒲が聞いてしまう
- 第162話:1年時のクラスメイト・高砂が菖蒲に告白。返事は文化祭が終わるまで保留に
- 第166話:告白を目撃していた匡が、菖蒲を好きだと自覚する
- 第167話:保健室で咲季が匡に迫る姿を菖蒲が見て立ち去る。その直後、匡は咲季を断る
- 第168話:菖蒲が高砂に交際を伝える
並べると、すれ違いはどれも「聞いてしまった」「見てしまった」から生まれています。第161話の「彼女に興味はない」も、匡が冷やかしをかわすための方便でした。
第162話、高砂は「文化祭が終わるまで考えて」と待った
高砂は、その場で返事をしようとした菖蒲を止めて、文化祭が終わるまで考えてほしいと頼みます。急かさない告白です。このあたり、高砂は最初から相手のペースを気にする人でした。
一方の菖蒲は、進まない匡より、自分を好きになってくれる高砂の方が楽かもしれない、と考え始めます。第162話のタイトル「いいかも」が、ちょっと怖く見えてくる。
第167話、菖蒲が見たのは「断られる前」の咲季だった
文化祭当日、体調を崩して倒れた匡を、菖蒲が保健室まで運びます。菖蒲が匡のための買い物に出ている間に、匡の初恋の相手・金石咲季が来ました。
眠る匡に咲季が顔を寄せたところを、戻ってきた菖蒲が見てしまいます。よりによってその瞬間に。菖蒲は誰にも気づかれないまま、その場を離れました。
そして菖蒲が去った直後、匡は「今は別に好きな人がいる」と咲季を断ります。その「好きな人」が菖蒲です。
いやもう、なんでそこで帰っちゃうの……! もう少しだけそこにいれば、全部聞けたのに。ここはもう頭を抱えるしかない。
目を覚ました匡が聞かされたのは、菖蒲と高砂が付き合い始めたという話でした。匡の幼なじみ・咲季との過去は咲季と匡の初恋と失恋で詳しく追っています。
第168話「これが私だ」、パンを半分こした後に菖蒲から交際を提案
第168話は、同じ時間を菖蒲の側から描き直す回です。菖蒲は匡に渡すはずだった飲み物を自分で飲みながら、咲季の姿を思い返します。
匡の初恋が実るなら、自分は邪魔になる。しかも菖蒲は、障害を越えてまで追えるほど匡を好きではない、と自分に言い聞かせます。本当にそうなら、飲み物をやけ飲みなんてしないんですけどね。
やけ飲みの直後に現れたのが、パンを半分こしてくれる高砂です。優しさが一番しみる時に、優しい人が来てしまった。そして菖蒲の方から、付き合おうと言います。
好きな人を追うより、好きになってくれる人を選ぶ。「これが私だ」は、菖蒲が昔の恋のやり方へ戻る宣言でした。
ただ、高砂を匡の代わりにしたと言い切るのは違います。菖蒲はこの後、高砂との恋を本気で大事にしようとする。問題は、その「本気」の向きでした。
19巻で第167話と第168話を続けて読むと、保健室の同じ数分を匡側と菖蒲側から二度見ることになります。二度目の方が、飲み物の場面がずっと苦い。
交際中に何があった?修学旅行の前から菖蒲は自分を抑えていた
ひびが目に見えるのは第201話から始まる京都の自由行動ですが、菖蒲の我慢はその前から始まっています。修学旅行の前日と初日から見ていきます。
第199・200話「不満があったら言って」と言う菖蒲
第199話で菖蒲は、高砂の友人から「もう少し彼氏に気を遣ってあげて」と言われます。菖蒲が他の男子と一緒にいても、高砂は我慢して理解しようとしている、と。
これを受けて菖蒲は、他の男子と距離を取ろうと決めます。男子バド部のマネージャーが、です。大喜には、高砂のいいところと、長く大事にしたい気持ちを話していました。
第200話の修学旅行初日の夜、菖蒲は高砂に「直してほしいところがあったら言って」と伝えます。高砂の返事は、明日は二人で回りたいでした。
「何でも言って」と言った直後の「二人で回りたい」。菖蒲の立場で考えると、これはもう断れません。自分で開けた扉から、一番断りにくいお願いが入ってきたんです。
第201話「大切に」、15時の約束が揺らぐ
菖蒲は条件をつけて受け入れます。雛たちと15時に合流するまでなら、二人で回る。翌日、二人は金閣寺へ行き、歴史好きの高砂が楽しそうに解説します。
高砂が調べてくれた店は長い行列。菖蒲は一瞬ひるみますが、せっかくだからと並びます。その間に高砂は、道に迷ったおばあさんを案内しに行ってしまいました。
戻った高砂は、待たせたお詫びに菖蒲の分まで払ってくれます。困っている人を放っておけず、恋人にも気を配る。菖蒲も、こんなにいい人なんだから大事にしなきゃ、と思います。
ただ、「いい人だから大事にしなきゃ」は、好きだから一緒にいたいとは少し違います。この小さなずれが、この回の一番こわいところです。
15時が近づくと、高砂は水族館へ行こうと誘います。水族館に行けば、清水寺で待つ雛たちとの約束に間に合いません。
菖蒲の頭に浮かぶのは、マネージャーの仕事、バド部の仲間、雛たち、そして彼氏。どれも捨てたくない。
小さい頃から、飽きたり違うと感じたりしたらすぐ投げ出してきた菖蒲です。だから今回は、何ひとつ手放したくないんです。
「全部大事にしたい」と頑張るほど、自分の「行きたい」だけが後回しになる。菖蒲、そこは言っていいところだよ……。
答えを出せずにいる菖蒲の前に現れたのが、匡でした。
第202話「私のまま」、匡の「気を遣わなくていいんじゃない」
匡は大喜や工藤と一緒に二人と出くわし、みんなで清水寺へ行こうと提案します。高砂はしぶしぶ了承。結果的に、菖蒲は雛たちとの約束を守れました。
混んだバスで隣になった菖蒲は、分かってて言ったの?と匡に聞きます。匡は、気を遣わなくていいんじゃない、今の守屋さんを好きで一緒にいるんだから、皆、と返しました。
この「皆」が絶妙です。匡は告白も横取りもせず、菖蒲の居場所だけを戻しました。
清水寺で雛やにいなと合流した菖蒲は、叶えたい願いは特にない、みんなと「私のまま」楽しく過ごしたいと話します。第168話「これが私だ」と並べると、同じ「私」でも中身がまるで違う。
高砂は、清水寺を勧めてくれたことを匡に感謝します。匡の返事は、菖蒲が雛たちといて楽しそうなのを見たかっただけ。高砂はその後、匡はずるいくらいできすぎだと大喜にこぼします。
他人の幸せを、そのまま自分の幸せにできる男。こんな相手と比べられたら、恋人の方はたまりません。
京都2泊3日の修学旅行編は、23巻にまとめて収録されています。表紙には修学旅行を楽しむ雛・菖蒲・匡・大喜の4人。
別れの巻の表紙で、菖蒲の隣にいるのが高砂ではなく匡と雛たち。答えを知ってから見ると、なかなか意味深な並びです。
第203話「ジグソーパズル」で菖蒲と高砂はどう別れた?
別れ話そのものは短く、どちらも相手を責めません。菖蒲は別れ際、二人の恋をジグソーパズルにたとえました。
高砂の「楽しかったよ、ありがとう」
高砂は、お互いに気を遣いすぎて遠慮し、何も見せていなかったと振り返ります。短い間だったけど楽しかった、ありがとう。そう言って去ろうとしました。
昼間は「最後まで二人で」と粘っていた人が、その夜には自分から手を放す。清水寺で匡と菖蒲を見て、何が足りなかったのか分かってしまったんでしょう。
「完成図が違った」──ジグソーパズルと、のぞみ・こだま
菖蒲は、二人の恋は完成図が違ったのだと話します。似た絵柄もあって、はまるところもあった。それでも目指す一枚の絵が違えば、最後まで組み上がりません。
さらに菖蒲は、自分たちを新幹線の「のぞみ」と「こだま」にもたとえます。同じ線路を走っていても、速さも停まる駅も違う二本の列車です。
そして、どちらのピースも欠陥品じゃない。それぞれが理想の恋を作っていけるはず、と伝えました。
| 場面 | 高砂が望んだこと | 菖蒲が望んだこと |
|---|---|---|
| 第200話 初日の夜 | 明日は二人で回りたい | 雛たちとも回りたい(15時まで) |
| 第201話 15時前 | 最後まで二人で水族館へ | 清水寺で雛たちと合流 |
| 第202話 清水寺 | 恋人との時間 | みんなと「私のまま」過ごす時間 |
並べると、高砂の絵は「二人」、菖蒲の絵は「みんなの中の私」です。どちらかがわがままだったわけではない。ただ、同じ一枚には収まらなかった。
別れた夜、菖蒲はパズルアプリを開く
一人になった菖蒲は、スマホでジグソーパズルを始めます。恋人と別れるたびにパズルをする。菖蒲にはそういう習慣がありました。
高砂には「どっちも欠陥品じゃない」と言ったのに、一人になると「私のピースはどれだけ歪なんだろう」とつぶやく。友達のおかげで少しは丸くなったはずなのに、と。
相手には優しい言葉を渡して、自分には一番きつい言葉を向ける。円満な別れの裏で、菖蒲はちゃんと傷ついていたんです。
ただ、前の恋と違うところもあります。昔の菖蒲は「違う」と感じたら自分から終わらせていました。今回は最後まで続けようと踏ん張り、相手の言葉を受け止める形で終わっている。
別れを知った匡は?菖蒲は第231話で匡と付き合う
高砂と別れた菖蒲は、第231話「人生で一番幸せだ」で匡と恋人になります。別れから28話後、26巻に入っている回です。
第203話、匡は「不謹慎」と思いながら喜ぶ
パズルをしている菖蒲のそばを、匡が通りかかります。そこへ雛たちが来て「用事はもういいの?」と聞くと、菖蒲はあっさり「別れ話」と明かしました。
それを聞いた匡の顔が、もう隠せていない。不謹慎だと自分でも思いながら、うれしさがにじみ出てしまいます。
第167話で失恋を知ってから、ここまで36話。そりゃ顔にも出ます。
その夜の女子部屋では恋バナが始まり、一人が「笠原くんいいな」と言い出します。すると菖蒲は、匡は眼鏡に「メロディ」と名前をつけて愛でている、と話してその子の熱を冷ましにかかります。
別れたその夜にこれです。菖蒲さん、それはもう「取られたくない」の顔ですよ。
ただ、この時点で二人は付き合っていません。匡が菖蒲をどう想い続けてきたかは、匡の恋の行方で匡側から追えます。
第231話、菖蒲が初めて自分から告白しようとする
大喜と千夏、匡と菖蒲の4人で遊園地へ行き、途中から大喜と千夏を二人にするため別行動になります。匡と過ごすうちに、菖蒲はどんどん意識してしまう。
なのに匡からは、恋愛っぽい動きがひとつもない。それなら自分から伝えてもいいんだ、と菖蒲は匡の手を取ります。いつも告白される側だった菖蒲が、初めて自分から言おうとした瞬間です。
ところが匡はそれを途中で止め、その勇気は自分が出す、と言います。イルミネーションの前で、匡は自分の考える「優しい人」を語りました。
匡にとっての優しい人は、何でも受け入れてくれる人ではなく、誰かのために動ける人。そのうえで「好きです。付き合ってください」と告白し、菖蒲も「好き」と返しました。
「何でも受け入れる」って、修学旅行の菖蒲そのものじゃないですか。高砂の願いを全部飲み込もうとして、苦しくなっていた菖蒲です。
匡が第166話で惹かれたのも、菖蒲の素直さでした。合わせてくれる菖蒲ではなく、素のままの菖蒲。この告白は、高砂との別れと一本の線でつながっています。
26巻の表紙は、楽しそうな大喜と匡を雛と菖蒲が見つめる4人の絵です。大喜と匡の親友対決の決着も同じ巻に入っています。
集英社の26巻紹介にも、4人で行く遊園地と、まだ曖昧な二人の関係が書かれています。第203話で止まった菖蒲の恋が、ここでようやく動き出します。
23巻で「歪なピース」とつぶやいた菖蒲を読んでから26巻の遊園地に進むと、手を取る一歩の重さがまるで違って見えます。第168話で身を引いた子が、今度は自分から言いに行くんですから。
アニメで菖蒲と高砂の交際・別れは描かれる?
2026年9月25日時点で、菖蒲と高砂の交際と別れはアニメになっていません。アニメSeason1は全25話で、原作第80話までを描いて終わっています。
菖蒲の初登場はアニメ第21話「花が咲くまで」。千夏が泊まりに来た守屋家で、花恋の妹として顔を出します。千夏とは対照的に恋に奔放な子、という登場の仕方です。
Season2は2026年10月4日に始まり、原作では10巻の第81話から続く流れです。二人の告白から別れまでは18巻から23巻にあたるので、アニメで見られるのはかなり先になるでしょう。
アニメの到達点はアニメ1期は原作のどこまでか、2期の放送情報はアニメはいつから・どこで見れるかで確認できます。
第21話のころの菖蒲は、恋に軽やかな子として出てきます。その子が後に「私のまま」いたいと悩むと知ってから見返すと、声の軽さまで違って聞こえてきます。
TMSアニメ公式チャンネルが第21話から切り出したショートで、千夏・菖蒲・大喜の場面です。菖蒲の声は市ノ瀬加那さんが担当しています。
守屋菖蒲と高砂の別れについてよくある質問
話数と巻数、高砂の名前など、本文を読んだ後に残りやすい疑問に答えます。
菖蒲と高砂が別れたのは何巻・何話?
原作第203話「ジグソーパズル」で、単行本は23巻です。京都の修学旅行2日目の夜、高砂から別れを切り出しました。
二人が付き合っていた期間は?
2年生の文化祭(第168話)から、2年生の修学旅行(第203話)までです。高砂自身も「短い間だった」と振り返っています。
高砂の下の名前は?
下の名前は「翔太」と紹介されることが多いものの、作中の表記には揺れも指摘されています。この記事では名字の「高砂」で呼んでいます。
菖蒲は別れてすぐ匡と付き合った?
すぐではありません。匡と付き合うのは第231話で、別れから28話後です。
まとめ|菖蒲と高砂は「素の自分」を見せられずに別れた
菖蒲と高砂は第168話で付き合い始め、第203話で別れました。相手に合わせすぎて、最後まで素の自分を見せられなかったことが理由です。
高砂との恋は失敗でしたが、無駄ではありません。「全部大事にしたい」と踏ん張った修学旅行があったから、菖蒲は「私のまま」でいたい自分に気づけました。
そして第231話、匡が好きになったのは、何でも受け入れる菖蒲ではなく、誰かのために動く菖蒲。高砂とのパズルでは見えなかった絵が、そこでやっとはまります。
『アオのハコ』は第250話で完結しています。最終回までの流れは完結はいつか・最終回と最終巻で追えます。
保健室で帰っちゃった子が、遊園地では自分から手を取りに行く。この距離を知ってから第203話を読み返すと、あのパズルの場面が少しだけ明るく見えてくるんですよ。
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