『薬屋のひとりごと』第12話「宦官と妓女」で、猫猫(マオマオ)は後宮を解雇されます。風明(フォンミン)の事件で関係者まで処分され、猫猫を人さらいから買った商家も対象になったためです。
猫猫は残りたかったのに、壬氏(ジンシ)には「命じられなければ残らない」と伝わる。同じ別れを惜しんでいる二人が、言葉の足りなさで別れてしまうのが、この回の苦いところです。
でも、花街に帰って終わりではありません。緑青館の宴席で再会し、壬氏は猫猫を身請けする形で再び宮廷へ迎えます。第1クールの締めにふさわしく、出会い直した二人の距離がぐっと動く一話です。
毒や薬のことならあんなに言葉が出る猫猫が、「ここにいたい」だけは言えない。壬氏も聞きたい一言を聞けない。この不器用さ、もどかしい!
※この記事はアニメ第12話「宦官と妓女」の結末まで触れます。第13話以降の大きな展開には踏み込みません。
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猫猫は第12話でなぜ解雇された?風明の事件が人さらいの商家につながった
猫猫が解雇されたのは、風明の事件で処分対象になった商家と、書類上のつながりがあったからです。猫猫が風明に加担したわけではありません。
第1話の人さらいが、ここで思いがけない形で戻ってきます。猫猫本人の行動を責める処分ではないからこそ、逃げ場がない。つながりを順に追うと、名簿に載った理由が見えてきます。
- 第1話・人さらい:薬草を採りに出た猫猫がさらわれ、商家を経て後宮へ売られる
- 第11話・風明の事件:猫猫が風明の秘密にたどり着き、事件の処分が始まる
- 関係先の調査:風明の親族に加え、実家と取引のあった商家にも処分が及ぶ
- 第12話・解雇:その商家に売られた猫猫の名前も名簿に入り、後宮を去ることになる
事件を解いた猫猫自身が、後始末に巻き込まれる。解決したら自由になるどころか、仕事を失うなんて、なんとも嫌な皮肉です。
解雇の線は「猫猫が何をしたか」ではなく、「猫猫が誰に売られて後宮に入ったか」で引かれました。猫猫には選びようのない過去です。
名簿から猫猫を隠せた壬氏が、すぐにそうしなかった理由
壬氏の手元には名簿があり、その中に見慣れた名前を見つけます。彼は後宮の秩序を守る立場でも、猫猫をよく知る人でもある。名簿から一人だけ外せば済む話に見えて、その一人が猫猫だから簡単には決められません。
高順(ガオシュン)は名簿から隠す道も示します。けれど壬氏はすぐに飛びつかない。自分の望みで処分を曲げる前に、猫猫がどうしたいかを聞く道を選びます。
ここがつらい。風明の秘密をほどいた猫猫の観察眼は、この名簿の前では役に立ちません。どれだけ有能な毒見役でも、後宮に入った経路まで変えることはできないんですよね。
第1話で猫猫を買った商家とのつながりが、第12話で解雇の理由になる。あの不本意な売られ方が、今度は猫猫の進路を縛るのです。
園遊会の毒見を振り返りたいなら、第6話「園遊会」の解説からつながりを追えます。あの膳から始まった出来事が、猫猫の解雇にまで届くとは思いませんでした。
壬氏の前には名簿、猫猫の前には解雇の現実。事件の謎は解けたのに、誰を後宮に残すかは別の厳しさで決まります。猫猫の推理が冴えた直後だけに、余計に痛い。
日向夏さんのWeb版「解雇」では、猫猫が残りたいと思いながら媚びた目を避け、壬氏は彼女の顔を怖がって判断を迷います。互いの大事な気持ちほど、口には出せない。
壬氏は猫猫を引き留めたい。でも彼女を命令一つで残す道具にはしたくない。この配慮が、次のすれ違いを生みます。
猫猫の薬師としての腕を知っているほど、この解雇は惜しい。猫猫が得意なことを並べると、後宮にとっても彼女を失うのは軽い損失ではないと実感します。
猫猫が後宮へ入った始まりから、名簿に名前が載るところまで漫画で追うと、この因果がはっきり見えてきます。第12話の突然の解雇が、ずっと前の人さらいと一本につながるんです。
残りたい猫猫と、無理に残したくない壬氏|なぜ話が食い違った?
猫猫は後宮に残りたい。壬氏も猫猫に残ってほしい。それなのに解雇が決まるのは、猫猫の遠回しな願いを、壬氏が別の意味に受け取ったからです。
「花街へ帰れてよかった」とは言えません。猫猫には、後宮に残りたい理由がいくつもありました。
- 仕事:玉葉妃(ギョクヨウヒ)の毒見役は、薬師の猫猫にも得がたい役目
- 暮らし:面倒事は多くても、今の後宮生活を猫猫は気に入っていた
- 花街の現実:戻れば、やり手婆との金銭の問題が待っている
普段なら壬氏を避ける猫猫が、息を切らして彼を探しに行く。残りたい気持ちは行動にはっきり出ているのに、いざ本人を前にすると、直接の願いだけが言えません。
ところが、向き合うと「残してください」とは言えません。身分の低い女官として、命じられるなら何でもする。猫猫には、それが働く意思を示す精いっぱいの言葉でした。
猫猫の「命じられれば働く」は、壬氏には「自分の意思では残りたくない」と聞こえた。同じ言葉の中に正反対の答えが入ってしまいます。
| 視点 | 本当は望んだこと | 相手に伝わったこと |
|---|---|---|
| 猫猫 | 後宮で毒見役を続けたい | 命じられれば働く、とだけ伝えた |
| 壬氏 | 猫猫が望むなら残ってほしい | 残留は猫猫の意思ではないと受け取った |
壬氏は権力で猫猫を縛りたくない。彼女が望まないなら去らせようとします。でも猫猫の願いは、その逆。いや、そこはもう少し聞いてくれ!
猫猫の側にも責められない事情があります。壬氏に「ここにいたい」と個人的な願いをぶつけるには、二人の立場が違いすぎる。いつもの素っ気ない態度で隠していた距離が、こういう時にだけ壁になるのが苦しい。
壬氏の気遣いも猫猫の慎重さも分かる。でも、分かるから余計に「二人とも、もう一言!」となる回です。
解雇後の壬氏は、猫猫がいなくなったことを引きずります。きれいな顔と甘い声で相手を動かしてきた人が、たった一人の本音を聞き損ねて沈んでいる。第12話は、この落差が妙に可笑しく、同時に切ない。
高順が間に入るのも大きいところ。壬氏のそばで後悔を見ている彼は、猫猫の帰った先につながる武官を思い出します。二人の言葉が足りないなら、会う機会を作るしかない。苦労人らしい一手です。
壬氏と猫猫の距離をもっと長い流れで追いたいなら、猫猫の気持ちの変化も読み合わせてみてください。ただし第12話だけで、猫猫の思いを恋愛の結論へ急がせるのは早いと思います。
猫猫が壬氏を探してまで残りたかったのに、口から出たのは「命じられれば」。原作小説で前後を読むと、二人とも大事な一言を言い損ねたのが余計に悔しいんですよ。
花街へ戻った猫猫は妓女になった?緑青館の宴席で壬氏と再会
解雇された猫猫は花街の緑青館へ帰り、宴席では三姫の供として働きます。第12話では妓女として客を取っていません。
退職金があったため、猫猫はすぐに身売りせず、短期の仕事で済みました。ただし、やり手婆は彼女を妓女にしたがっています。帰ってきた家で、先の安心までは約束されません。
同じ宴に来ても、三姫と猫猫では役割が違います。どこに立って、何をしていたかを並べると、「猫猫が妓女になった」という読み違いも解けます。
| 人物 | 宴での役割 | 猫猫との違い |
|---|---|---|
| 梅梅(メイメイ)・白鈴(パイリン)・女華(ジョカ) | 緑青館の三姫として招かれ、芸で客をもてなす | 宴の中心に立つ妓女たち |
| 猫猫 | 三姫の供。客の杯に気を配る短期の仕事 | 第12話で客を取ってはいない |
| 壬氏 | 宴の客の一人として座る | 賑わいの中で一人沈んでいる |
猫猫は詩歌や踊りより、薬の知識を生かす方がずっと得意です。三姫と揃いの衣装で笑顔を作っていても、客の杯を見ながら働く姿には、どこか窮屈さが残るんですよね。
賑やかな宴の中で、一人だけ沈んでいる客がいました。猫猫が仕事として近づき、顔を見て気づく。壬氏です。互いにいつもと違う姿で、一瞬見分けがつかない。その間がいい。
壬氏はいつもの輝く笑顔を失い、猫猫はいつもの薬師の姿ではない。互いに「らしくない」格好での再会です。
この宴は、原作Web版では李白(リハク)の紹介というつながりも見えます。高順が壬氏の落ち込みを見て動き、猫猫へ届く道を探した流れと合わせると、再会がただの都合のよい偶然には見えなくなります。
後宮では命じる側と従う側だった二人が、宴では客と働き手として話し直す。猫猫は後宮を嫌って辞めたわけではないと、壬氏へようやく届きます。
壬氏が猫猫を見てまず驚くのは化粧です。猫猫のそばかす化粧と素顔を知っていると、緑青館で整えた姿に気づくまでの間まで楽しい。外見が変わっても、返事の素っ気なさは猫猫のままです。
三姫を一度に呼んだ豪華な宴なのに、壬氏が一番会いたかったのは杯を注ぎに来た猫猫。やっと顔を見られて、こちらまでほっとします。
原作Web版「宦官と妓女」を読むと、三姫で華やぐ宴の中、壬氏だけが沈んでいる。猫猫が「仕事をしなくては」と近づくところが、恋愛の場面より先に働く彼女らしい。
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壬氏は猫猫を身請けした?紅のやり取りと冬虫夏草まで
宴席で壬氏は猫猫が後宮に残りたかったと知り、数日後に緑青館で身請けする形で迎えます。猫猫は再び宮廷へ戻りました。
再会したら即座に元通り、とはいかないのが二人です。気持ちが通じた後も、距離の詰め方がずれていて面白い。
- 宴席で再会:猫猫は短期の仕事中で、後宮を嫌って辞めたわけではないと壬氏に伝わる
- 触れる・かわす:壬氏は近づき、猫猫は仕事中の規則を理由に距離を取る
- 紅を移す:壬氏は猫猫の唇の紅を指に取り、自分の唇へ移す
- 数日後の身請け:壬氏は金と虫から生えた草を持ち、猫猫を迎えに来る
紅の場面は直接のキスではない|壬氏の笑顔に猫猫が揺れる
壬氏はほっとした途端、猫猫との距離を詰め始めます。猫猫は仕事中だから触れられない、と線を引く。さっきまでしょげていた人が、もう指先の駆け引きを始めるのか!
壬氏が猫猫の紅を指に移すと、猫猫は身構えます。ところが壬氏はその指を自分の唇へ。三姫たちの視線まで集めてしまい、やっと誤解が解けた猫猫を今度は別の意味で困らせるのです。
第12話の紅の場面は、唇同士のキスではありません。壬氏が猫猫の紅を指で取り、自分の唇へ移すやり取りです。
しかも、猫猫は壬氏の無邪気な表情に強く言い返せず、目をそらす。いつもなら露骨に嫌な顔をしそうなのに、この一瞬だけ反応が違う。その小さな揺れを見逃せない回です。
とはいえ、猫猫が最も勢いよく反応する相手は、やっぱり薬草。数日後、壬氏は金とともに、虫から生えた奇妙な草を持って緑青館へ現れます。これは冬虫夏草です。
ロマンチックな紅の余韻のあとに、猫猫の目を輝かせる切り札が冬虫夏草。壬氏がようやく彼女の関心の真ん中をつかんだ感じがして、笑ってしまいます。猫猫を迎える話が、猫猫らしさで締まるのがいい。
身請けは第12話で決まりますが、第13話「外廷勤務」で働く場所は以前の後宮ではなく、外廷にある壬氏の家。猫猫は自分の意思で宮廷へ向かいます。
最初は人さらいに売られて来た猫猫が、今度は戻る方を選ぶ。同じ宮廷でも、第1話とは猫猫の立ち位置が違います。
壬氏との関係を先へ追うなら、猫猫と壬氏のキスが描かれる巻・話数は別記事で整理しています。第12話の紅の場面と、その後の展開は分けて読みたいところです。
第12話のアニメ演出と公式映像|猫猫の反応が変わった瞬間を見直す
第12話は、壬氏の後悔を見せる前半から、猫猫の反応を追う後半へ視点が移ります。冬虫夏草のミニアニメや挿入歌「雪中花」まで合わせると、二人の再出発を違う角度から楽しめます。
長沼範裕監督は、前半を壬氏視点、後半を猫猫視点に寄せてカメラを置いたと語っています。紅の場面は、壬氏の行動だけでなく猫猫の反応を見る場面でもあります。
長沼監督の公式インタビューでは、宴席の猫猫が壬氏へ初めて反応したと語っています。いつもなら彼の振る舞いをかわす猫猫が、素直な笑顔を前に返事を失う。この違いを見てほしい。
公式のミニアニメ「猫猫のひとりごと」第12話も、冬虫夏草を題材にしています。本編の最後に出た贈り物がどれほど猫猫向きだったか、短い動画でも楽しめます。
第12話には、きしかな子さんの挿入歌「雪中花」も使われています。言葉の届かなかった二人の節目を、曲が包む。公式の本編映像付きムービーでも、その空気を味わえます。
「雪中花」ムービーの公式告知には、歌唱・作詞・作曲の情報もあります。二人の会話だけでは言い切れない、第12話の寂しさと安堵が曲にも残ります。
公式Xは、第12話の場面を選んだピックアップ映像も案内しています。宴席での再会から紅のやり取りを短く振り返ると、壬氏の笑顔だけでなく、猫猫の反応の変化にも目が行きます。
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まとめ|第12話の猫猫は解雇されても、自分の意思で宮廷へ戻る
第12話「宦官と妓女」で猫猫は風明の関係者として解雇されますが、緑青館で壬氏と再会し、身請けの形で宮廷へ戻ります。二人の願いは最初から近かったのに、言葉だけが届かなかったのです。
猫猫が名簿に載った理由は理不尽で、二人の話し合いは驚くほど不器用。でも、花街で再び向き合えたからこそ、猫猫は「命じられたから」ではなく、自分で戻る道を選べました。
せっかく気持ちが通じたのに、最後の決め手は虫から生えた草。そこまで含めて猫猫と壬氏らしい再出発です。
※当サイトで使用しているイラストは、記事内容を補足するイメージです。特定の著作物・キャラクター・場面の再現を目的としたものではありません。本記事は作品公式および関係各社とは関係のない非公式記事であり、感想・考察には当サイトの見解を含みます。
※本記事の情報は2026年9月28日時点で確認しています。放送・配信状況、料金、特典、キャンペーン、商品情報などは変更される場合があるため、最新情報は各公式サイト・販売ページをご確認ください。
