壬氏(ジンシ)の嫉妬がはっきり見えるのは、猫猫(マオマオ)が李白(リハク)の簪を使って里帰りした後です。猫猫を気にかけ始めた時期はもっと早く、アニメ第5話の簪が二人の距離を変える転機になりました。
ただ、この二人の面白さは「壬氏が嫉妬した、猫猫も気づいた、恋が始まった」と一直線には進まないところ。壬氏の不機嫌を見ても、猫猫が受け取る意味は別方向へずれていきます。
簪のすれ違い、李白の体格をめぐる一幕、そして告白に近い言葉まで。何に嫉妬して、猫猫はそれをどう聞いたのかを追うと、甘さと面倒くささが同時に見えてきます。
あれだけ人を思いどおりに動かせる壬氏が、猫猫の前では一言を待つ側に回る。顔に出ているのに伝わらないのが、もうおかしくて切ないんですよ。
※アニメ第1期と原作Web版の場面に触れた後、書籍版小説5・7巻の恋愛面にも触れます。媒体によって場面の経緯は異なります。
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壬氏はいつから猫猫が好き?第5話の簪から距離が変わる
壬氏が猫猫を好きになった瞬間を一話に決めるのは難しい。ただ、「面白い薬師」として見ていた距離が動く節目は、園遊会を控えたアニメ第5話の簪です。
長沼範裕監督は公式インタビューで、壬氏はここで猫猫の生い立ちを初めて聞き、この話数から二人の距離感が変わると語っています。美貌を武器に人との間合いを操る壬氏が、猫猫の側の事情を知る。そこが大きい。
最初から「一目ぼれだった」と片付けるより、この変化を見てほしいです。壬氏にとって猫猫は、思いどおりに笑顔を返さない珍しい相手。そこへ、本人が望まず後宮へ来た背景まで重なります。
第5話は「好きになった日」の確定ではなく、壬氏が猫猫を知り、距離を縮め始める転機です。後の嫉妬は、その積み重ねの上で見ると効いてきます。
簪を渡したのは壬氏だけではありません。猫猫は、それを後宮から出る手段としても考えます。同じ簪に、渡す側の期待と受け取る側の使い道が重なる。すれ違いはもう始まっています。
アニメ第7話では、その簪を使えば後宮の外へ出られると小蘭(シャオラン)に聞いた猫猫が里帰りを思いつきます。第7話「里帰り」の出発点は、色恋よりも猫猫らしい実用的な判断です。
壬氏には一歩踏み込んだつもりの簪が、猫猫の手では外へ出るための切符になる。贈った側の気持ちと受け取った側の行動が、まるで別の物語を進めています。
最初の嫉妬は李白の簪|壬氏が拗ねた理由
猫猫の里帰りを助けたのは、壬氏ではなく武官の李白でした。壬氏も簪を渡していたのに、猫猫から相談を受けなかった。ここで普段の余裕が崩れます。
Web版の「誤解」では、壬氏は李白がどんな男か尋ね、自分も簪を渡したのに話が来なかったと不満をこぼします。嫉妬の相手は単に李白本人というより、「猫猫に頼られた李白」という立場なのでしょう。
- 園遊会:壬氏と李白がそれぞれ猫猫へ簪を渡す
- 里帰り:猫猫は外へ出るため、李白を身元引受人として頼る
- 帰還後:壬氏は李白のことと、自分の簪が使われなかったことを気にする
- 会話の決裂:猫猫の言う「対価」を壬氏が別の意味に受け取り、不安を深める
会話がさらにこじれるのは「対価」です。猫猫は李白を緑青館の白鈴(パイリン)へ紹介したつもりで話すのに、壬氏には猫猫自身が何かを差し出したように聞こえる。茶碗を落とすほど動揺しても、猫猫には通じません。
よりによって猫猫は、壬氏の顔色が悪い理由を寒さだと受け取って火鉢に炭を足します。気遣いはあるのに、見ている原因が違う。優しい行動まで空回りになるのが、この場面の可笑しさであり痛さです。
原作Web版「誤解」では、壬氏の拗ねた姿を玉葉妃(ギョクヨウヒ)が笑い、高順(ガオシュン)は疲れ切っています。周囲には見えているのに、肝心の猫猫だけが別の計算をしている。この温度差がたまりません。
「俺にも頼ってほしかった」を素直に言えれば早いのに、それができない。壬氏の簪、猫猫には便利な道具でも、壬氏には返事を待つような贈り物だったんでしょうね。
長沼監督も第7~12話を振り返るインタビューで、李白は猫猫へ正面から向き合い、思うことを率直に言える人物だと話しています。壬氏と李白を比べると、猫猫をめぐる会話の難しさまで見えてきます。
李白は猫猫の恋敵という単純な役ではありません。猫猫にとっては用件を頼みやすい相手で、壬氏にとってはその気安さがまぶしい相手。壬氏が欲しがっているのは簪の勝敗より、猫猫からの信頼なのかもしれません。
あの里帰りの前後を漫画で読み返すと、簪に込めた期待と、猫猫の合理的な使い方のずれがよく見えます。壬氏が黙り込むほど、猫猫はますます首をかしげるんですよね。
李白の体格を褒めた猫猫へ、壬氏は何を競った?
Web版の「身請作戦中編」では、もう一度、李白をめぐって壬氏の機嫌が揺れます。白鈴の相手として李白を見定めた猫猫が、その鍛えられた体を詳しく褒めるからです。
猫猫にとっては薬師としての観察です。体格から普段の鍛錬や生活を読む。しかも判断したいのは、姉のように慕う白鈴との相性。李白を自分の恋人候補として眺めているわけではありません。
ところが壬氏は、猫猫が別の男の身体をそこまで見て褒めたことに反応します。そして自分の身体を見ても同じように分かるか、と問う。この一言、完璧な笑顔で周囲を動かす壬氏から出るには、妙に子どもっぽい。
| 場面 | 壬氏が気にしたこと | 猫猫が考えていたこと |
|---|---|---|
| 李白の体格を褒める | 猫猫がほかの男を細かく見ている | 白鈴の相手にふさわしいか |
| 自分の身体も見てほしい | 猫猫の評価を自分にも向けてほしい | 壬氏が李白と容姿を競っているらしい |
| 猫猫の返答 | 猫猫との距離がさらに気になる | 白鈴の相手として壬氏は適さない |
猫猫は「李白への嫉妬かも」と考えるところまでは届きます。ただし、壬氏は自分の美貌を誇示したいのだと解釈する。嫉妬という言葉を思い浮かべても、恋愛の話には接続しないんです。
そのため猫猫の返答は、壬氏の望む方向から大きく外れます。白鈴との相性を考えるなら壬氏を見ても意味がない、と答えてしまう。壬氏が自分を見てほしい相手は白鈴ではなく猫猫なのに。
Web版「身請作戦中編」は、壬氏の不機嫌から猫猫の勘違い、周囲が凍る返答までを一続きで描きます。李白を褒めた一言から、どうしてここまで話がこじれるのか。読んでいて笑いながら額を押さえたくなる場面です。
さらに後編で壬氏は、李白が猫猫に頼られたことや、白鈴の伴侶候補として見られていることを口にします。李白の能力を確かめる会話の中でも、猫猫との距離を量ってしまうんですね。
李白が猫猫を「懐いた猫」に近い意味で捉えた時、壬氏の反応が揺れる。Web版「身請作戦後編」まで読むと、壬氏は李白の人格を嫌っているというより、猫猫が彼に向ける警戒心の薄さを気にしているように見えます。
猫猫の観察眼は鋭いのに、壬氏が自分へ向ける気持ちだけは見事に外す。この得意不得意の偏りが、二人のやり取りをずっと面白くしています。
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嫉妬しても進まないのはなぜ?壬氏と猫猫の距離感
壬氏の嫉妬は分かりやすい。見ているこちらは「もう気づいて!」と言いたくなる。でも猫猫が一歩引くのは、鈍さだけで説明できません。二人は初めから同じ立場に立っていないのです。
壬氏は後宮で強い権力を持ち、猫猫はそこで働く薬師です。仕事を頼まれ、助けられることもある一方で、猫猫には自分の身の置き方を慎重に決める必要がある。笑顔一つで距離を詰められるような関係ではありません。
壬氏の「自分を選んでほしい」と、猫猫の「問題なく生きて働きたい」は、出発点が違います。嫉妬が伝わっても、そのまま返事にはならないのが二人です。
第12話で猫猫は後宮に残りたかったのに解雇され、第13話では壬氏に身請けされて宮廷へ戻ります。胸が高鳴る再会でも、猫猫には職場も待遇も変わる生活の転機です。
第12話「宦官と妓女」から第13話「外廷勤務」へ続くと、壬氏は猫猫をそばへ戻せても、猫猫の暮らしを左右する側にいると分かります。そこが甘いだけでは済まない。
第13話では、着飾った猫猫に壬氏自身が見とれる一方、猫猫を見る兵士には面白くない顔をします。自分も見ているのに、ほかの人の視線は気に入らない。また顔に出てる、と笑ってしまいます。
第13話の恋愛描写を振り返る記事でも、兵士の視線を気にする壬氏と、猫猫にいつものそばかすへ戻すよう言う場面を取り上げています。嫉妬が一度きりの冗談ではないと伝わる一幕です。
長沼監督によれば、第12話で猫猫が初めて反応したのは、壬氏が素直な感情から動いた時。作った笑顔より、こぼれた本音。猫猫がそちらに反応するのを見て、やっと通じた、と声が出そうになります。
アニメ公式Xが選んだ第12話の場面も、壬氏の変化を思い出すきっかけになります。嫉妬で拗ねた時と、猫猫が思わず反応した時。二つの顔を並べると、気持ちの伝わり方の違いが見えます。
壬氏が言えない本音と、猫猫が抱える立場の重さ。拗ねた顔だけで「もう両思い」と喜べないのは、そこに本物の壁があるからです。
アニメの第17話「街歩き」では、変装した壬氏と猫猫が後宮の外を歩きます。職場を離れると、二人の会話も違って聞こえる。近づきたい壬氏と、目の前の仕事をこなす猫猫。並んで歩いても歩幅はまだ違います。
二人を一緒に追える公式のWeb特別PV「猫猫&壬氏編」もあります。嫉妬の一場面だけでは見落とす、相手を見る視線と、なかなか噛み合わない距離を思い出せます。
壬氏が近づくほど、猫猫には一歩引いて考える理由も増える。だからこそ、たまに彼女が見せる小さな反応が効くんです。猫猫の気持ちの変化は、壬氏の嫉妬だけでは読み切れません。
猫猫の反応を急いで恋愛の答えに変えないと、壬氏の焦りまで違って見えます。欲しいのは周囲の羨望ではなく、たった一人からの理解。それが一番手に入りにくい相手なんですよね。
後宮での距離を知ってから小説の先へ進むと、壬氏が言葉を選び損ねるたびに重みが増します。あの簪から、二人はどこまで歩み寄れるのか。
壬氏は猫猫に告白する?嫉妬と求婚は別の段階
李白の前では拗ねていた壬氏も、やがて顔色だけに気持ちを預けられなくなります。書籍版小説5巻では猫猫へ強引に口づけ、7巻では妻にしたい意思を言葉にする。言えなかった頃からの変化です。
5巻の口づけは、妻選びの場で猫猫が別の相手と踊り、壬氏に別の女性を勧めた先にあります。彼の焦りは分かる。でも猫猫の意思を置いて迫る姿を、甘い「イチャイチャ」だけでは受け取れません。
5巻以降は皇弟としての立場も表に出ます。書籍版5巻の段階で、壬氏は宦官ではなく皇弟として政に携わる。猫猫を選ぶという言葉には、以前とは違う重さが乗ります。
李白をめぐる嫉妬では、壬氏の気持ちは猫猫に届きませんでした。5巻では行動が先走り、7巻でようやく将来への意思が言葉になる。気持ちの強さだけでなく、伝え方そのものが問われているように思います。
| 段階 | 壬氏に見える変化 | 読みどころ |
|---|---|---|
| 簪と里帰り | 猫猫に頼られず拗ねる | 気持ちが先に顔へ出る |
| 李白をめぐる会話 | 猫猫の視線を求める | 猫猫の解釈が別方向へ進む |
| 書籍版5巻 | 関係をさらに近づけようとする | 身分と感情の距離が変わる |
| 書籍版7巻 | 妻にしたい意思を言葉にする | 嫉妬より明確な意思表示になる |
ただ、壬氏が強く望むほど猫猫は簡単に頷けなくなる。皇弟の言葉には、猫猫の生活も周囲の立場も動かす力があります。あの簪では贈る意味がすれ違い、今度は未来の重さがすれ違う。もどかしい。
7巻の求婚と結婚の壁は別記事で詳しく追えます。この記事では、その言葉に至る前の壬氏が、李白の前でどれほど分かりやすく、同時に不器用だったかを覚えておきたいです。
また、キスの場面と媒体差も、嫉妬だけで一括りにできません。書籍版とWeb版では同じ経緯をたどらないため、アニメ・漫画・小説の場面を混ぜて「何話」と断言しない方が、二人の変化をまっすぐ追えます。
簪を使ってほしかった人が、やがて言葉で未来を望むようになる。拗ねた顔を知っていると、その変化が大きく見えて、少し胸に来ます。
小説で二人の先を追うなら、最初の嫉妬を思い出してから5巻以降へ進むのがおすすめです。言えなかったことが、いつ言葉になるのか。その変化を拾うと、関係の進み方がぐっと面白くなります。
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まとめ|壬氏の嫉妬は、猫猫に届かない気持ちから始まる
壬氏は猫猫を早くから特別視しますが、嫉妬がはっきり見えるのは李白の簪で里帰りした後です。李白の体格を褒めた猫猫への反応も、壬氏が猫猫の視線を欲しがっていることを映します。
李白と猫猫は白鈴の話をしているのに、壬氏は二人の気安さが気になる。猫猫は不機嫌に気づいても、美貌の張り合いだと思ってしまう。同じ場にいて、違う会話をしているような二人です。
それでも壬氏は、拗ねたままで終わりません。猫猫へ向ける気持ちを、やがて言葉にしていく。嫉妬の場面が愛おしく見えるのは、先に進んだ二人を知るほど、あの頃の伝わらなさが鮮明になるからでしょう。
猫猫には届かない顔を、玉葉妃も高順も見ている。壬氏、もう少し言葉にして……と思う一方で、このすれ違いが続くから目を離せないんですよね。
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