壬氏(ジンシ)が猫猫(マオマオ)に渡したのは、園遊会の前に自分の髪から外した銀の簪です。猫猫を特別に見ていることが周囲にも伝わる贈り物でした。
けれど猫猫はその意味を知らず、侍女仲間に分けようとします。後宮の外へ出るために使うのも、壬氏ではなく李白の簪でした。最初から二人の温度差がひどい。
銀の簪は第2期にも登場し、猫猫が大切な友人へ託す品になります。贈った人の気持ちだけで意味が決まらず、持つ人の選択で役割が変わっていくのが、この一本の面白さです。
壬氏には大事件なのに、猫猫には最初「三人にどう分けよう」。あのすれ違いから、ずいぶん遠くまで来ました。
この記事でわかること
| 人物 | 読み | 簪をめぐる立場 |
|---|---|---|
| 玉葉妃 | ギョクヨウ | 猫猫の主。侍女へ装飾品を贈る |
| 李白 | リハク | 園遊会で猫猫に簪を渡した武官 |
| 梨花妃 | リファ | 猫猫の髪へ簪を挿した上級妃 |
| 小蘭 | シャオラン | 簪の使い道を猫猫に教えた友人 |
| 子翠 | シスイ | 第2期で猫猫の簪を欲しがる友人 |
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壬氏が猫猫に簪を贈ったのはアニメ第5話「暗躍」
壬氏が簪を渡したのは、園遊会当日ではなく、その準備が進むアニメ第5話です。猫猫の化粧の理由を聞いた直後、彼は自分の銀の簪を猫猫の髪へ挿します。
華やかな宴の場より前に、二人だけの会話から始まった贈り物でした。
猫猫は目立たないようにそばかすを描いていました。その事情を聞いて壬氏が謝った直後、言葉少なに簪を渡す。猫猫の過去へ踏み込んだあとで、自分の持ち物を残していく順番が、どうにも気になります。
- 園遊会に向けた支度の中で、猫猫のそばかす化粧が話題になる
- 猫猫が化粧をしてきた事情を壬氏へ話す
- 壬氏が自分の銀の簪を猫猫の髪へ挿す
- 猫猫は贈り物の意味を知らず、侍女仲間の反応を気にする
原作者・日向夏さんのWeb版「18 化粧」では、簪を挿された猫猫の第一声は「痛いのですが」。壬氏の気恥ずかしさと、痛みを先に訴える猫猫。甘い場面になる一歩手前で、いつもの二人に戻ってしまうのがいい。
渡した簪は男物の銀の簪。のちに李白が猫猫へ渡す桃色珊瑚の簪や、壬氏自身が皇族として着ける赤い簪とは別です。
Web版では、壬氏が去ったあと玉葉妃が猫猫の髪へ簪をきれいに挿し直します。壬氏からもらった事実を隠すのではなく、主である妃がそのまま受け止めた。贈り物の波紋が周囲にも広がった瞬間です。
翡翠宮の侍女たちはうらやましがりますが、猫猫は三人にどう分けるかを考えてしまう。玉葉妃も「私だけの侍女じゃなくなった」とすねます。
周りには十分伝わっているのに、肝心の猫猫だけが受信していない。このずれが、簪の話をただの贈答品で終わらせません。
園遊会の猫猫は着飾っても、心はいつも通り薬と仕事の方へ向いています。そばかす化粧の理由を知ると、簪を受け取る直前に壬氏が聞いた話の重さも変わって見えます。
園遊会の簪は何の印?求愛だけに決められない理由
園遊会で贈る装飾品には、相手を気に入ったことを周囲へ示す意味があります。ただし、すべての簪が同じ強さの求愛ではありません。
作中では人材の勧誘にも、社交上の贈り物にも使われます。壬氏の一本を読むには、この違いが大事です。
Web版の園遊会の場面では、桜花(インファ)が装飾品を渡す慣習を猫猫へ説明します。人材の勧誘という意味を聞いても、その先の「違う意味」を掘り下げない。薬の話なら食いつくのに、こういう話は驚くほど流してしまう。
| 贈り主 | 猫猫が受け取ったもの | 場面から見える意味 |
|---|---|---|
| 玉葉妃 | 翡翠の首飾り | 自分の侍女である印 |
| 壬氏 | 男物の銀の簪 | 猫猫を特別に気にかける意思 |
| 李白 | 桃色珊瑚の簪 | 複数の侍女へ配る義理の贈り物 |
| 梨花妃 | 紅水晶の簪 | 猫猫への感謝や好意が伝わる一本 |
まず間違えやすいのは、玉葉妃からの品です。猫猫が受け取ったのは簪ではなく首飾り。だから「簪を四本もらった」ではありません。壬氏・李白・梨花妃から簪を三本、玉葉妃から首飾りを一つが正確です。
玉葉妃の首飾りは、猫猫が翡翠宮の侍女である印。そこへ壬氏の簪が加わったから、玉葉妃は「私だけの侍女じゃなくなった」と拗ねたのです。
李白の帯には、まだ十数本の簪がありました。彼の一本まで壬氏と同じ告白として数えると、園遊会の場面が急におかしくなる。
梨花妃の贈り物も、かつて猫猫に助けられた関係を見れば、恋愛の意味に押し込む必要はありません。
簪を渡したら必ず求婚成立、という決まりではありません。誰が、どんな場面で、どの一本を渡したかで重みが変わります。
だからこそ壬氏は際立ちます。余分に用意した一本を配ったのではなく、自分が身につけていたものを猫猫に渡した。しかも猫猫の事情を聞いた直後です。
はっきりした恋愛の宣言とまでは言い切れなくても、気にかける相手として周囲へ見せたことは、玉葉妃の反応からも読み取れます。
贈り主ごとの違いを漫画で追うなら、まず園遊会の前後を読み返したくなります。壬氏の一本がどれだけ目立つか、李白の帯に残った簪の数まで見るとよく分かる。
なぜ猫猫は壬氏の簪を使わず、李白を頼ったのか
簪には、後宮の外にいる贈り主へ連絡し、許可を得て女官を呼び出す使い道もありました。猫猫はその仕組みを知ると、里帰りのために李白を頼ります。
壬氏からも簪をもらっていたのに、です。壬氏が後で拗ねるのも無理はない。
小蘭から使い道を聞いた猫猫は、桃色珊瑚の簪で李白を呼び出します。Web版の「25 李白」では、後宮の女官を呼ぶ手段の一つが簪です。ただ持っていれば自由に外へ出られる札ではなく、贈り主と許可が必要でした。
- 小蘭が猫猫へ、簪で贈り主を頼れることを教える
- 猫猫が李白の簪を使い、後宮の外で会う手続きを進める
- 李白が身元引受人となり、猫猫は花街へ里帰りする
- 壬氏は自分へ話が来なかったと知り、理由を問い詰める
李白は初め、自分を里帰りのために使うのかと警戒します。猫猫が銀と紅水晶の別の簪を取り出し、「他を当たる」と示すと、慌てて引き留める。ほかに頼れる相手がいることまで、猫猫は交渉に使いました。
猫猫にとって李白の簪は、気軽に頼みを持ちかけやすい義理の一本でした。しかも猫猫には、李白へ紹介できる花街の伝手がある。
一方の壬氏は立場が高く、何を返せば釣り合うのか思いつかない。猫猫の選び方は、恋愛の相手を選ぶ行動とは別の計算です。
それでも壬氏には、義理で配った李白の簪に自分が負けたように映る。Web版の「27 誤解」で、その不満を隠さず口にします。猫猫は対価を、壬氏は二人の距離を気にしている。同じ会話なのに、話題が少しも噛み合いません。
猫猫の「頼みやすい人を選んだ」が、壬氏にはいちばん刺さる答えになってしまう。理屈は分かるけれど、気持ちは全然追いつかないですよね。
監督・長沼範裕さんは公式インタビューで、第7話では李白が活躍すると語ります。壬氏と猫猫の距離が簪で近づいたように見えて、里帰りではむしろ認識のずれが露わになる。このひっくり返り方が好きです。
同じインタビューで長沼監督は、後に二人の間にできる壁を、命や身分の捉え方の違いと結びつけています。
銀の簪一本で急に距離が縮まるほど、二人の暮らしてきた世界は近くない。それでも壬氏が渡し、猫猫が持ち続けるから、この品が効いてくるんですよね。
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第2期では猫猫が身につけ、子翠へ託す一本になる
園遊会で終わった小道具なら、ここまで簪の印象は残らなかったはずです。第2期の第39・43・46話で、同じ一本への二人の態度が変わっていきます。
第39話で壬氏は、猫猫に簪を着けてほしがります。園遊会から時間がたっても、そこが気になるのが可愛い。猫猫はなくしておらず、手元に持っています。
そして第43話「祭り」。子翠(シスイ)は簪を欲しがりますが、猫猫は譲りません。第5話では侍女仲間に分けようとした品です。あの時と同じ猫猫なら、どう答えたでしょう。
猫猫の中でこの一本の扱いが変わったことが、説明より先に行動で伝わります。
- 第5話:壬氏から受け取るが、猫猫は意味を知らず人に譲ることも考える
- 第39話:壬氏が猫猫に、渡した簪を着けてほしがる
- 第43話:子翠に欲しいと言われても、猫猫は譲らない
- 第46話:猫猫が願掛けのため、子翠へ簪を託す
第46話「禁軍」では、楼蘭(ロウラン)が危険な場所へ向かう前に、猫猫が簪を渡します。今度は「いらないからあげる」ではなく、返してもらう約束を含んだ願掛けです。
第43話で断った相手へ、自分から差し出す。「返して」と約束させるなら、楼蘭は生きて猫猫の前へ戻らなければならない。猫猫が求めたのは友人との次の約束です。
贈り物を受け取る側だった猫猫が、誰かを送り出す側になる。その入れ替わりも切ない。
第43話では断った品を、第46話で猫猫が自分から預ける。壬氏にもらった大事な一本を、友人に帰ってきてほしいという願いのために使ったのです。
贈り主の壬氏から、持ち主の猫猫へ、簪の意味を決める人が移るところが胸に残ります。
猫猫役の悠木碧さんは瀬戸麻沙美さんとの対談で、猫猫が願掛けとして渡した簪が楼蘭の命をつなぎ止める「計算違い」にもなったと振り返っています。猫猫が託した願いが、文字どおり命に触れるのです。
簪をめぐる二人の行動を見ると、猫猫の壬氏への気持ちを一つの台詞で決めたくなくなります。最初は意味も知らなかった品を、手放したくないと思い、最後には友人のために手渡す。言葉よりずっと複雑です。
アニメ公式のミニアニメ「猫猫のひとりごと」第46話は、題名も「簪」。本編で大きな役目を果たした直後に、その品へもう一度目を向けられます。
子翠と楼蘭の行く末まで追いたいなら、簪と玉藻、その後の話へ。壬氏から始まった一本が、もう一人の物語へ渡っていきます。
小説でこの流れを追うと、壬氏から渡された時の猫猫の鈍さと、楼蘭へ自分から手渡す時の切実さがいっそう対照的です。同じ品を二度見るだけで、猫猫が変わったことが分かる。
壬氏の赤い簪は別物|皇族として立つ印
第2期終盤、壬氏の髪に見える赤い簪を、園遊会で猫猫へ渡した銀の一本と混同しやすいかもしれません。こちらは壬氏自身が身につける、皇族の証です。
同じ「簪」でも、語っているのは恋の距離ではなく、背負う立場の方。
第46話に向けたアニメ公式のファイナルビジュアルでは、壬氏が紫紺の甲冑と赤い簪を身につけます。園遊会で猫猫へ銀の一本を渡した時とは、背負う役割が違います。
| 簪 | 持ち主・使う場面 | 物語で見せるもの |
|---|---|---|
| 銀の簪 | 壬氏が猫猫へ贈る | 相手との距離、猫猫自身の選択 |
| 赤い簪 | 壬氏が皇族として身につける | 隠してきた身分と公の責任 |
一方では、猫猫が壬氏から受け取った銀の簪を、楼蘭との再会を願って託す。もう一方では、壬氏が赤い簪を着け、皇族として軍を率いる。
同じ局面で二本を並べると、二人とも「誰かのために何を引き受けるか」を迫られているように見えます。
壬氏の公の立場は、壬氏の正体を知っているとさらに重い。銀の一本では猫猫に近づきたい人に見えた彼が、赤い一本では逃げられない責任を見せます。簪を色だけで見分けると、この対照まで見えてくる。
アニメ公式Xにも、第2期ファイナルビジュアルを使った特別映像の告知が残っています。赤い簪を着けた壬氏の姿は、園遊会の贈り物とは違う文脈で見るのがいちばんです。
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まとめ|壬氏の簪は、猫猫が選び直した大切な一本
壬氏の銀の簪は、園遊会の前に猫猫へ渡した特別な贈り物です。猫猫には初めその意味が届きませんでしたが、物語が進むほど、手放すか、身につけるか、誰に託すかを自分で決める品になりました。
最初の猫猫なら、侍女仲間へ分けようとした一本です。それを子翠には譲らず、最後は自分の意思で託した。壬氏が渡した簪なのに、忘れられないのは猫猫がどう持ち続けたかなんですよね。
「痛いです」から始まった簪が、誰かの帰りを願う品になる。壬氏が最初に渡した時、ここまでの役目を想像できたでしょうか。
※当サイトで使用しているイラストは、記事内容を補足するイメージです。特定の著作物・キャラクター・場面の再現を目的としたものではありません。本記事は作品公式および関係各社とは関係のない非公式記事であり、感想・考察には当サイトの見解を含みます。
※本記事の情報は2026年9月30日時点で確認しています。放送・配信状況、料金、特典、キャンペーン、商品情報などは変更される場合があるため、最新情報は各公式サイト・販売ページをご確認ください。
