『無職転生』のフィリップ・ボレアス・グレイラットは、エリスの父で、城塞都市ロアの町長です。アニメで声を担当しているのは小野大輔さん。
この人、初登場の面接からおかしい。7歳のルーデウスに「君、女の子は好きかい?」と聞き、「父様ほどではありませんが」と返されて、その場で合格を出します。
柔らかい物腰の町長で、娘の教育に手を尽くす父親。それでいて、兄ジェイムズに負けた家督争いをまだ諦めていない政治家でもあります。
しかもその野心は、ルーデウスを雇った日から仕組んでいたものではありません。少年を3年見て、評価を何度も書き換えた末に、ある夜ぽつりと口に出てきます。
合格基準、そこでいいんですか。しかもこの数分後には、ルーデウスが持ち込んだ誘拐の自作自演に「面白いね」と乗っています。
※この記事は、原作Web版のロア編以降の展開(エリスとルーデウスのその後を含む)と、アニメ第1期の内容に触れます。
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『無職転生』フィリップとは?エリスの父で城塞都市ロアの町長
フィリップは、フィットア領主サウロスの息子で、領内の城塞都市ロアを預かる町長です。妻はヒルダ、娘がエリス。パウロとは従兄弟にあたります。
| 項目 | フィリップ・ボレアス・グレイラット |
|---|---|
| 立場 | フィットア領・城塞都市ロアの町長 |
| 父 | サウロス(フィットア領主) |
| 妻・子ども | 妻ヒルダ、娘エリス。兄と弟にあたる息子2人は、兄ジェイムズの養子に |
| 親族 | パウロの従兄弟。ルーデウスから見ると父のいとこ |
| 外見 | さらりとした茶髪で、線の細い軽そうな男性 |
| アニメの声優 | 小野大輔 |
| アニメの登場 | 第1期第5話「お嬢様と暴力」から、ロア編で本格的に登場 |
ロアは、400年前の魔族との戦争で最終防衛線になった城塞都市です。高い城壁に囲まれ、中央には館というより城が建っています。
ただ、由緒が立派なのは昔の話。王都の貴族から見れば、荒っぽい冒険者が多い辺境です。しかもフィリップは、この町を望んで任されたのではありませんでした。
町長の職は、家督争いに勝った兄ジェイムズがフィリップを王都から遠ざけるために与えた仕事です。肩書の裏に、負けた側の事情が入っています。
パウロとは従兄弟。だからルーデウスとエリスも親戚同士
フィリップの父サウロスは、パウロの叔父です。つまりフィリップとパウロは従兄弟で、ルーデウスとエリスもはとこ同士になります。
初対面でルーデウスが「マタイトコですね」と説明すると、エリスは「なによ! ワケわかんない!」。そのすぐ後には平手が飛んできます。親戚づきあいの始まり方としては最悪です。
ヒルダとの夫婦関係や、パウロまでつながる血縁はフィリップの家族関係で、エリスの側から見た祖父・兄弟・いとこはエリスの親族で詳しく追えます。
雇い主の娘で、はとこで、しかも初日に殴ってくる相手。この子とのちに夫婦になると言われても、この日のルーデウスは絶対に信じません。
フィリップの声優は小野大輔|第5話の配信時に公式Xが紹介
アニメ版フィリップの声優は、小野大輔さんです。第1期第5話「お嬢様と暴力」の配信開始に合わせ、アニメ公式Xが配役を紹介しました。
紹介文は「大都市ロアの町長、エリスの父で、パウロのいとこ」。肩書を三つ並べるだけで、ロア編の人間関係がほぼ見えてくるのが面白いところです。
| 項目 | 小野大輔さん |
|---|---|
| 生年月日 | 1978年5月4日 |
| 出身 | 高知県 |
| 特技 | 土佐弁 |
| 主な出演作 | 『ジョジョの奇妙な冒険』空条承太郎、『黒執事』セバスチャン・ミカエリス、『宇宙戦艦ヤマト2199』古代進、『おそ松さん』松野十四松 |
プロフィールと出演作は小野大輔さんの公式サイトにまとまっています。声優アワードでは、主演男優賞を第4回と第9回の2度受賞しています。
承太郎の低い圧と、十四松の底抜けの明るさ。同じ人の役とは思えない振れ幅です。
フィリップに要るのは、その両端なんですよね。昼は女の子の好みを聞いて面接を通し、夜はワインを片手に兄を失脚させる話を始める。同じ人の同じ声でやるから、ぞっとします。
セバスチャンの声で「君、女の子は好きかい?」。字面だけでもう、只者ではない面接官です。
フィリップの人物像は?柔らかい町長が一人だけ冷静でいる家
フィリップは、怒鳴るサウロスと殴るエリスの間で、ほぼ一人だけ会話が成立する人です。ただし、話しやすいことと、計算をしていないことは別でした。
- 採用面接:貴族の挨拶を教え、「パウロの息子だから、とりあえず試してみよう」と雇う
- 誘拐の作戦:エリスを学ぶ気にさせるため、ルーデウスが出した自作自演の誘拐案を採用する
- 事件の後始末:執事トーマスの裏切りで誘拐が本物になるが、町長として処理し「ギレーヌが全て解決した」形にまとめる
- エリスの誕生日:パーティーをダンス形式に変え、取り入ろうと群がる貴族をヒルダと二人で捌く
- ルーデウスの誕生日:興奮して「戦争じゃぁ」と叫ぶサウロスを引きずり出し、取り乱したヒルダも退場させる
中でも人柄が出るのは、誘拐事件の後です。娘がさらわれた直後なのに「随分余裕ですね」と言われ、「今もなお行方不明だったら慌ててるさ」と返します。
そのうえで、ルーデウスの手柄は伏せさせる。ルーデウスの存在を他のグレイラット家に知られるのはまずいという判断で、表向きはすべてギレーヌが片づけたことになりました。
娘が無事なら、次はもう事件を家の宣伝と情報管理に使う。切り替えが速すぎます。
そこへ事情を知ったサウロスが乗り込み、恩人に礼も言わないのかとフィリップの顔面を殴ります。ソファの後ろまで転がされたのに、倒れたまま平然と答えるんです。
「上辺だけの労いや報奨より、家族として温かみを持って接するのが礼と考えました」。殴られた直後に、父親が納得する理屈へ包み直している。たぶん殴られ慣れています。
ちなみに同じ場面で、エリスが「ニャん」と猫のポーズで頼みごとをすると、「もっと腰をつきだしてしなを作らないとダメじゃないか」。指導するところ、そこですか。
耳を見る理由をギレーヌに聞かれれば、顔色一つ変えずに「『ボレアス』は獣族が好きなのだ」。答えながら、まだ耳を見ています。
冷静な町長にも、ボレアスの血はちゃんと流れていました。
アニメ第5話では、ロアの館に着いたルーデウスの面接から誘拐の計画までが一気に動きます。豪快なサウロスの直後に出てくるぶん、フィリップの軽さが目立つ回です。
パウロへの評価は辛い。それでも、困った時は助けている
フィリップの人を見る目は、従兄弟にも容赦がありません。転移事件のあと、執事アルフォンスがパウロに伝えたフィリップの評は、かなり辛口でした。
いざという時に力を発揮するが、先を見通す力がない。だから自分のミスで「いざという時」を作り出す危うい人物――それがフィリップのパウロ評です。
Web版第45話「一年半のパウロ」で評を聞かされたパウロの感想は「余計なお世話だ」。でもパウロの行動を知っていると、残念ながらかなり当たっています。
一方で、結婚を控えたパウロに泣きつかれた時、手を貸したのもフィリップです。金と住む場所と仕事が要る、でも上級貴族には戻りたくない。そんな虫のいい頼みでした。
その結果がフィットア領の下級騎士の職で、パウロ一家のブエナ村暮らしもそこから始まります。
評価は辛い。でも見捨てない。欠点を正確に見たうえで手を貸すのが、フィリップの身内への距離感です。パウロの家系図まで広げると、二人の家がどうつながるかも見えてきます。
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ジェイムズとの家督争い|負けてロアへ回され、息子たちも渡した
フィリップは、ボレアス家の次期当主の座を兄ジェイムズと争い、敗れています。ロアの町長という今の立場は、その敗北の結果です。
サウロスには10人の息子がいて、特に目をかけていたのが3人。サウロスはこの3人を争わせ、次の当主を決めました。
| 人物 | 家督争いの結果 | その後の立場 |
|---|---|---|
| ジェイムズ | 勝利して次期当主に | 王都で大臣職に就く |
| ゴードン | ジェイムズの手引きで恋に落ち、脱落 | エウロス・グレイラット家へ婿入り |
| フィリップ | ジェイムズと互角に争った末に敗北 | 王都から離され、ロアの町長に |
二人は互いに裏で糸を引き合う、互角の争いをしていました。決め手は、半回りほど年上の兄が積み上げた人脈と立場。六年分の差は埋まりませんでした。
負けた側には、もう一つ代償がありました。ボレアス家では、男児は次期当主の家で育てる伝統があり、フィリップの息子2人もジェイムズの養子になります。
それを「横暴じゃないですか?」と言うルーデウスに、フィリップは「いいよ、それは別に。伝統だし」。さらに「私が勝っていれば、立場は逆だったしね」と続けます。
この淡々とした受け止め方が、逆に怖い。自分が勝っていたら、兄の息子を同じように取り上げていた。そこまで含めて納得している人です。
ただ、妻のヒルダは納得していませんでした。生まれたばかりの子を取り上げられ、エリスが生まれるまでずっと不安定だったといいます。
息子を兄に渡して「伝統だし」で済ませる夫と、済ませられない妻。エリスが育った屋敷には、ずっとこの温度差がありました。
王都では黒幕扱い。でも作中は「完全なる邪推」と切る
家督争いの因縁は、本人が行方不明になった後まで尾を引きます。転移事件のあと、王都の貴族たちはフィリップを黒幕候補に挙げて、勝手な筋書きを作りました。
| 項目 | 王都の貴族の推測 | 作中の事実 |
|---|---|---|
| 狙い | ジェイムズを陥れ、次期当主の座を奪う | 本人は転移事件に巻き込まれ、王都で動ける状態ではなかった |
| 手段 | 第二王女側へ回り、後ろ盾にする | そうした工作は描かれていない |
| 作中の判定 | 黒幕はサウロスかフィリップ | 「完全なる邪推」とはっきり否定 |
Web版第82話「守護術師フィッツ登場」で、この推測はばっさり切られます。いない人間の思惑まで勝手に盤上へ戻すのが、アスラの宮廷らしいところです。
ただし、疑われたこと自体には理由があります。フィリップならやりかねないと周りに思わせるだけの政治の腕と、家督への未練は、実際に持っていた人でした。
オルステッドの知る「本来の歴史」では、第二王女派に付くはずだった
皮肉なのは、噂とは別の形で、フィリップが第二王女アリエルの側へ付く未来も存在したことです。オルステッドが語る本来の歴史では、エリスがアリエルに付きます。
その縁で、フィリップとサウロスも第二王女派に加わるはずでした。聞いたルーデウスの頭に「また死人か」とよぎるのは、二人ともすでに亡くなっているからです。
Web版第168話「初任務へ」で語られるのは、失われた将来の一つです。王都の邪推が当たっていた証拠ではありません。
その未練が言葉になるのが、ルーデウスと二人きりになった夜です。原作でロア編を読み返すなら、事件より先にフィリップの会話を拾うと、館の空気が違って見えます。
フィリップとルーデウスの関係|「とりあえず試してみよう」から「乗っ取らないかい?」へ
雇った日のフィリップは、ルーデウスにほとんど期待していません。跡目争いの駒どころか、試しに置いてみた家庭教師です。そこから3年で、評価が何度も書き換わります。
| 時期 | フィリップの見方 | きっかけ |
|---|---|---|
| 採用時 | 「あまり期待していない」。パウロの息子だから試すだけ | エリスがすでに5人以上の教師を追い出していた |
| 初日 | 大掛かりな策を持ち込んだ教師は君だけ | 誘拐の自作自演という提案 |
| 家庭教師期間 | 読み書きと算術も教えろ、むしろそちらが重要 | 魔術だけ聞くエリスへの授業 |
| 10歳の誕生日 | 君を見て「まだちょっと希望が出てきた」 | エリスの成長と、ルーデウスの立ち回り |
採用の時点では、所詮は少し出来のいい悪ガキ、という認識でした。うちの悪ガキとぶつければ何か起きるかもしれない、くらいの温度です。
ところがエリスは、読み書きも算術も身につけ、ダンスまで踊れるようになる。フィリップ自身が「想定外」と言うほど、娘が変わったのです。
誕生日の夜、ワインを片手に「一緒にボレアス家を乗っ取らないかい?」
ルーデウスの10歳の誕生日。宴が終わって二人だけになると、フィリップは家督争いの話を始め、こう本音をこぼします。
「どうだい。エリスと結婚して、一緒にボレアス家を乗っ取らないかい?」乗っ取りは自分がやるから、ルーデウスは座っていればいい、とまで言います。
その少し前には、娘を使ってジェイムズを失脚させるのも難しいと思っていた、とも話していました。ルーデウスが心の中で思わず「この人、まだ諦めてないのか」とつぶやく場面です。
ルーデウスの返事は「酒の席での話ということにしておきましょう」。フィリップも「そうだね。それがいい」と静かに笑い、話はそこで終わります。
10歳の誕生日プレゼントが、杖と、お家乗っ取りへの勧誘。重さの釣り合いがまったく取れていません。
ところが、話は本当に終わっていませんでした。転移事件のあとミリスで再会したパウロが、ルーデウスを「入り婿」と呼んで、何も知らない息子を驚かせます。
フィリップは転移の1年ほど前に、ルーデウスを婿に迎えたいという手紙をパウロへ送っていたのです。パウロは「好きにしろ」と返していました。
Web版第48話「方針の再確認」で、ルーデウスはようやく気づきます。あの夜にはもう、父親への根回しが終わっていた。心の中で「何が酒の席での話だ」と毒づくのも当然です。
「それがいい」と笑った時点で、外堀はとっくに埋まっていたわけです。酒の席どころか、契約書の手前まで来ていました。
アニメでは第8話「ターニングポイント1」に、この夜の会話があります。ボレアス家に来て3年、穏やかな日々の締めくくりに出てくる話としては、だいぶ生々しい。
フィリップの野心ははっきり描かれています。ただし雇った日から乗っ取りを計画していたわけではなく、ルーデウスの働きぶりを見るうちに固まった構想です。
エリスを見放さなかった父|ギレーヌに剣を教えさせた理由
では娘を出世の道具としてしか見ていなかったかというと、そうでもない。むしろフィリップは、エリスの将来に一度ほぼ絶望していました。
貴族としては無理だろうと考え、将来は冒険者として生きられるようにギレーヌに剣術を教えさせた。剣術指南役は、父なりの保険でした。
ルーデウスには、魔術だけでなく読み書きと算術も同じくらい教えろ、むしろそちらが重要だと繰り返し言います。授業を受けさせるのも家庭教師の仕事だよ、と逃げ道もふさぐ。
貴族の娘として生きる道と、剣で食べていく道。その両方を残そうとしていた父親です。
エリスとルーデウスの関係を追うと、父が描いた縁組とは別の形で、二人の絆が育っていきます。
フィリップがルーデウスをどう見直していったかは、ロア編を原作で読み返すとよく分かります。面接の軽口と、誕生日の夜の本音。その間の3年を知ると、同じ笑顔の意味が変わります。
フィリップは死亡する?転移事件後の結末
フィリップは、フィットア領転移事件を生き残れません。妻ヒルダと同じ紛争地帯へ飛ばされ、二人とも亡くなりました。
同じ紛争地帯へ転移したギレーヌが、徒歩で抜ける途中に二人の遺体を見つけています。帰郷したエリスがその報せを受けるのは、アニメでは第1期第22話「現実(ユメ)」です。
Web版第62話「災害の現実」で、ギレーヌは遺体の状態を語りません。言葉を止めた様子だけで、ただ事ではなかったと伝わってきます。
死因や最期の描かれ方、のちの弔いまではフィリップの死亡と最期で詳しく扱っています。父母と祖父を一度に失ったエリスの側からは、エリスの両親で追えます。
ギレーヌが明かした、一度だけの誘い
後年、ギレーヌはエリナリーゼとの会話で、フィリップから一度だけ「妾にならないか」と誘われたことがあると話します。そして、受けておくんだった、と。
続けて語るのが、「死体は埋葬し、殺した奴も殺した」。生前の誘いと、その後の始末が同じ流れで出てきます。
返事を変えたくても、もう本人はいない。だから代わりに、弔いと仇討ちだけは済ませた。ギレーヌの人物像を知っていると、この短い一言の重さがよく分かります。
先の手ばかり読んでいた人が、次の一手を考える間もなく盤面ごと消された。
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まとめ|フィリップは、ルーデウスに貴族の現実を最初に見せた大人
フィリップは、エリスの父でロアの町長。声優は小野大輔さんです。家督争いに敗れても野心を捨てず、それでいて娘の将来にも本気だった人物でした。
子どもたちが剣や魔術を覚えていく横で、大人たちは血筋と家督と縁組を見ていた。その世界を、ワイン一杯ぶんの会話でルーデウスに見せたのがフィリップです。
「酒の席での話」で流されたあの誘い。エリスが本当にルーデウスの妻になったと知ったら、フィリップはどんな顔をしたんでしょうね。たぶん、静かに笑う気がします。
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