有馬かなと黒川あかねは、仲直りして喧嘩をやめる二人ではありません。憧れから始まった関係はライバル関係へ変わり、物語の先でも口論しながら同じ舞台に立ちます。
あれだけ言い合って、どうしてまた一緒に舞台へ立てるのか。アクアをめぐる恋愛だけを見ていると、この問いは解けません。二人の出発点にはあかねの憧れがあり、決着の場にはいつも演技があります。
アニメ第2期の『東京ブレイド』から、原作漫画の結末、小説『二人のエチュード』へ。とくに小説の稽古場までたどると、あの口喧嘩の聞こえ方が変わります。
※原作漫画最終巻と小説『二人のエチュード』の展開に触れます。アニメ第2期より先の結末を知りたくない場合はご注意ください。
この二人、言葉だけ拾うと険悪なのに、芝居を一緒に作るとなると目が離せない。そこがたまらないんですよ。
有馬かなと黒川あかねは不仲?喧嘩の奥には憧れと対抗心がある
二人は実際に口が悪い。衝突もします。「本当は仲良し」で片づけたら、かなの苛立ちも、あかねの負けたくなさも消えてしまう。腹は立つのに、相手の演技を無視できない。厄介で、だから目が離せません。
あかねにとってかなは、幼い頃に目標にした天才子役。ところが成長後は、追いつき、演技で勝負したい相手になります。好きだったからこそ、舞台の上でかなが自分の光を抑えるのを見過ごせない。
かなから見れば、かつて自分を追っていた少女が、いまや劇団ララライの実力派女優として向かってくる。昔の憧れ話で優位に立ったつもりでも、目の前の芝居では油断できない。そりゃ、平静ではいられません。
「嫌い」と「実力を認めていない」は別です。二人とも相手の演技から目を離せないから、軽口で終わるはずのやり取りが毎回、勝負になる。
アクアとの関係も火種の一つですが、それだけで二人のすべてを説明できません。アクアが中心にいない『東京ブレイド』の演技勝負でも、小説で描かれる後の共演でも、二人は真正面からぶつかります。
かなの辛辣な言葉をもっと掘り下げたいなら、有馬かなが「嫌い」と言われる理由も参考になります。ただ、この二人の喧嘩を一人の性格だけに帰すのは惜しい。あかねも遠慮なく応戦するんです。
あかねが一方的にかなを追っていた頃と違い、いまはかなも振り向かずにいられない。喧嘩の声量が、その変化を教えてくれます。
幼少期の出会い|あかねの憧れはなぜライバル心に変わった?
始まりは、あかねの純粋な憧れでした。集英社の小説『二人のエチュード』試し読みでは、子役時代のかなを目標にし、髪型やベレー帽まで寄せた姿が見えます。
帽子だけを似せて満足した子ではありません。かなと共演したい、友達にもなりたい。児童劇団で稽古を重ねながら、相手の気持ちを想像して演じることにも夢中になる。憧れが、そのまま役者の芯になっていきます。
ところが、やっと会えたオーディションで、かなはあかねを突き放します。その仕事が自分を選ぶための出来レースだと告げ、演技まで否定するような言葉を口にした。
かなの言葉に傷ついたことと、かなを嫌いになりきれなかったことは両立します。あかねはその場のショックで、続く審査でも力を出せませんでした。
この順番が痛い。憧れの人に拒まれ、「演技が好きなかな」まで否定されたように聞こえたわけです。あかねが引っかかったのは暴言だけではありません。どうして、あの人が演技をどうでもいいと言えるのか。
傷を抱えたあかねは、それでも演技を続けます。アニメ第18話「太陽」では、かなへの憧れ、厳しい現実、積み重ねた努力が舞台上の真っ向勝負につながります。
あかねの観察力を語るなら別の場面も必要です。ここでは、拒絶されても役者をやめず、かなと同じ舞台へ来たことを見たい。嫌いになって終わる方が簡単だったのに、彼女は追うのをやめなかった。
かなにも、子役として売れてきた事情がある。それでも幼いあかねを傷つけた言葉は消えません。最初から傷と憧れが同居していたから、後の口喧嘩が重く響きます。
ベレー帽まで真似していた子が、同じ舞台でかなを挑発する側になる。あの初対面を知ってから見ると、強くなったな……と、ちょっと胸が詰まります。
子役だったかな自身の変化は、「重曹ちゃん」と呼ばれるまでの歩みともつながります。あかねが追い続けたのは、昔の肩書だけではなく、その奥の演技でした。
小説の試し読みであかねの服装やオーディションの前後を追うと、二人の再会がただの「昔からの犬猿の仲」では済まなくなります。かなの一言を抱えたまま稽古を続けた年月が、舞台上の対決へつながるからです。
小説であかねの憧れの出発点を知ってから漫画の舞台編へ進むと、あの真っ向勝負が一段と熱い。かなと同じ舞台へ立つ夢を、あかねは演技でつかみにいきます。
『東京ブレイド』で激突|演技の喧嘩が二人を対等にした
二人の関係がいちばん鮮やかに見えるのは、2.5次元舞台『東京ブレイド』です。ツルギ役のかなと鞘姫役のあかねが、同じ客席へ向かって芝居をぶつける。口で勝つだけでは終わらない場所へ、ついに来ました。
原作7巻で、二人は幼少期の因縁を抱えたまま舞台上で演技をぶつけ合います。昔あかねが見上げた子役に、いまは役者として向かい合う。この距離の縮まり方が熱い。
かなは、共演者が輝くように自分を合わせる演技を身につけています。現場で役割を果たす力としては見事。でも、かつてのかなを見て役者になったあかねには、その器用さだけで勝負を済ませてほしくない。
あかねはかなの才能を知っている。相手が本気で前に出ないまま勝っても満足できない。いま目の前にいる役者の全力と競り合いたい。あの挑発には、そんな切実さがにじみます。
| 見たいところ | 有馬かな | 黒川あかね |
|---|---|---|
| 出発点 | 子役として注目され、現場に合わせる芝居も覚えた | かなに憧れて演劇を始め、稽古を重ねた |
| 舞台での立場 | ツルギ役として、抑えてきた存在感を問われる | 鞘姫役として、かなへ真っ向から挑む |
| ぶつかる理由 | 今の芝居を相手に試される | 憧れの相手の全力を見たい |
かなが前に出れば、あかねも受けて立つ。もう客席から憧れの人を見上げるだけの少女じゃない。相手がいなければ出なかった芝居を、同じ舞台の上で生み出しているんです。
アニメ第2期では、第18話の題がずばり「太陽」。あかねがかなに憧れた過去と、待ちわびた真っ向勝負が同じ回に置かれます。かつて拒まれた少女が、今度は舞台の上でかなに光を返すんです。これは興奮する。
公式の舞台終演記念動画は、ツルギ役のかなと鞘姫役のあかねが並ぶ特別対談。芝居でぶつかった二人を、終演後に同じ画面へ座らせる企画そのものがうれしい。
アニメ公式Xも、この二人の特別対談を舞台終演の記念として知らせています。映像の入口まで含めて、かなとあかねを一組の役者として見せてくれるのがいい。
子供の頃は一緒に舞台へ立つことさえ夢だった。それが同じ作品で互いの演技を引き出すんですから、あかねの執念には拍手したくなります。
アクアをめぐる恋愛は決着した?二人の勝敗にはならない
アクアへの思いも二人の間にあります。ただ、かな対あかねの「ヒロインレース」に明確な勝者は決まりません。原作ではアクアが神木ヒカルとの対決の末に命を落とし、二人は別れと向き合います。
ここから先は原作漫画16巻、第165話の葬儀に触れます。舞台で張り合う話と違い、誰かの演技を見て笑える場面ではありません。二人の反応を「勝った・負けた」で比べるほど、つらい場面を小さくしてしまいます。
かなは棺のアクアに手を上げ、感情を爆発させます。アクアが死んだら平手打ちしてやるという以前の約束と、本人がもう言い返せない現実が重なる。怒りの行き場のなさが苦しい。
あかねもアクアと時間を重ねてきました。復讐の事情をかなより多く知っていたからといって、喪失が軽くなるはずはない。二人とも痛いんです。
原作第165話の葬儀は、二人の恋愛の採点表ではありません。かなの激しさも、あかねが抱える喪失も、アクアとのそれぞれの時間から生まれたものです。
かなとアクアの関係そのものを追いたいなら、二人の恋愛と結末へ。この記事では、アクアを失った後にもかなとあかねの関係が続く点を見ます。恋愛の決着だけでは二人の物語は終わりません。
葬儀の場面だけで、どちらが「上」だったかなんて言いたくない。あの二人には、もっと長い役者としての時間があるんです。
結末のその先|小説『二人のエチュード』ではW主演舞台へ
二人の「その後」には、小説『二人のエチュード』が答えをくれます。映画『15年の嘘』から時が経ち、二人は実力派若手女優としてW主演舞台の稽古へ向かうんです。
その舞台は『茨の姉妹』。小説の公開試し読みでは、同じ男性に恋する姉妹を演じるため、二人が自主稽古へ集まります。かなが声をかけ、あかねが劇団の稽古場を用意する。仕事の準備は、ちゃんと二人で進めている。
ところが即興劇を始めると、役の設定を忘れて文句が止まらない。かなはあかねのSNS投稿を持ち出し、あかねは「ピーマン体操」で反撃。二人とも相手の痛いところをよく覚えすぎでしょう。稽古はどこへ行った。
この応酬が約二時間。長い! それでも二人とも稽古へ戻ろうとします。言い合いを止めるタイミングまで妙に合うのが悔しいほど二人らしい。共演を投げ出す気はないんです。
「相変わらず仲は悪い」。それでも、かなはあかねを稽古に誘い、あかねは応じる。この並びが結末です。
映画『15年の嘘』から数年後。二人は実力派の若手女優になっても、同じ稽古場で意地を張り合う。時間は流れたのに、相手に負けたくない気持ちはまるで鈍っていません。
子役時代、あかねはかなとの共演を夢見ました。けれど憧れのまま隣に立ったわけではありません。拒まれ、衝突し、自分の芝居を磨いてW主演へ。夢の叶い方が、まっすぐではないからこそいい。
かなが自主稽古に誘い、あかねが稽古場を押さえる。口では水と油のように言い合うのに、舞台を作る手は止めません。
原作漫画の最終巻にも「最終巻おまけ」があります。二人がW主演に向けて口論する光景は小説の公開部分に描かれたもの。漫画の結末から小説の稽古場へ進むと、二人の歩みが鮮明になります。
二時間も言い合って、結局は一緒に芝居をする。あの幼いあかねが欲しかった未来、ずいぶん騒がしい形で叶いましたね。
『東京ブレイド』で相手の本気を引き出した二人が、その先でも同じ舞台へ向かう。原作7巻の勝負を読み返すと、後のW主演が急に生まれた関係ではないと分かります。
有馬かなと黒川あかねの関係でよくある疑問
あれだけ激しく言い合って、二人は友達なのか。アクアとの恋愛で勝敗はついたのか。稽古場の二人を見たあとでも残る疑問に、短く答えます。
Q. 二人は仲直りした?
喧嘩をやめて穏やかな友人になったわけではありません。小説の後の時点でも口論しますが、W主演舞台のためにかなが稽古を誘い、あかねも応じます。言葉の鋭さと共演する意志が両方残っています。
Q. あかねは本当にかなのファンだった?
はい。小説の公開試し読みでは、かなに憧れて演劇を始め、髪型や服装まで真似た幼少期が描かれます。拒絶された後も、その記憶を抱えたまま役者として進みました。
Q. アクアはどちらを選んだ?
原作の結末を二人のどちらかの勝利としては語れません。アクアの死後も、かなとあかねはそれぞれ女優の道を進みます。恋愛だけに絞ると、二人自身が築いた役者同士の関係を見落としてしまいます。
まとめ|喧嘩は続く。それでも二人は同じ舞台に立つ
有馬かなと黒川あかねは、憧れた側と憧れられた側から、互いの芝居を試すライバルになりました。喧嘩がなくなる結末ではなく、喧嘩しながら共演を選ぶ結末です。
小説でかなが自主稽古を提案し、あかねが場所を用意した。ここが好きです。「好き」なんて言い合わなくても、相手と舞台を作りたい気持ちが行動に出ている。
子供の頃のあかねが夢見た共演には、かなへの反発も、芝居への誇りも詰まっていました。だから二人の口喧嘩を見るたび、次はどんな演技を見せてくれるのかと期待してしまう。騒がしいのに、いい関係です。
「また喧嘩してる」と笑いながら、その次の舞台を待ちたい。二人なら、口より先に芝居で答えてくれそうです。
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