アニメ『メダリスト』の制作会社はENGIです。第1期・第2期を手掛け、劇場版も同社の制作履歴に載っています。
リンクへ飛び出したいのりを、ジャンプ一発で済ませない。実際のスケーターの滑りを収録し、3DCGと作画で演技の時間ごと描く。ENGIの仕事は、ここに集まっています。
追ってほしいのはジャンプの高さだけじゃありません。踏み切る刃、伸ばした指、いのりと光で変わる画面の明るさ。同じリンクなのに、選手が替わると空気まで変わるんです。
演技を見て「どうやって動かしたの?」と気になった人へ。ENGIの制作工程を知ると、次は滑りのどこを見るかが変わりますよ。
この記事でわかること
『メダリスト』の制作会社はENGI|3DCGの強みが作品と結びついた
ENGIは『メダリスト』のアニメーション制作を担当。第1期の作品ページには、監督・山本靖貴さん、振付・鈴木明子さんらが並びます。
司がいのりの執念を見つけ、二人でメダリストを目指す。「やりたい」と言うだけなら一瞬です。でも、その願いをリンクに乗せたら、刃の向きも身体の重さもごまかせない。アニメ化の壁は、まさにそこでした。
企画を担った山下愼平プロデューサーへの取材では、複数の制作会社と話した末、3Dを強みとし2Dとの融合を目指すENGIへ企画を提案した経緯が語られています。
踏み切る刃の向きや体重移動が違えば、ジャンプの意味まで変わる。そこで必要だったのは、動けば何でもいいCGではなく、競技の動きとして筋の通る映像です。
しかも山本監督は、最初から滑走をCG一択にしたわけではありません。作画で描く案もあった。それが、上がってきたCGを見て3DCG中心へ変わる。制作現場の答えが、最初の想定をひっくり返したんです。
ENGIが選ばれた理由は、会社名の知名度よりも、3DCGと作画の両方を使ってスケートを描ける制作体制にあります。
会社は2018年4月に設立。社名は「ENtertainment Graphic Innovation」の頭文字です。
KADOKAWA、サミー、ウルトラスーパーピクチャーズの共同設立で、デジタル作画と3DCGを組み合わせる構想を掲げていました。
設立時のKADOKAWAの発表をたどると、この方向性は『メダリスト』のために急に生まれたものではありません。企画の難題と、スタジオが伸ばそうとしていた技術が出会ったわけです。
漫画「メダリスト」の公式Xが第1期初日の放送を勢いよく知らせていたのも、2025年1月4日のこと。原作側のこの高揚と、氷上の動きを形にしようとする制作側の試みが、ようやく画面で重なった日です。
いよいよ本日放送🏅⛸️!!!!! https://t.co/o23JjwRPyw
— 漫画「メダリスト」⛸🏅 (@medalist_AFT) January 4, 2025
スケートの演技はどう作る?実際の滑りを収録してから画面を組む
『メダリスト』の滑走には、実際のスケーターの演技が土台にあります。鈴木明子さんが振付を担当し、鈴木さんや協力選手の滑りをモーションキャプチャーで収録しました。
収録場所は名古屋の「邦和みなと スポーツ&カルチャー」。アニメのために、本当に氷へ立ち、滑り、回った。キャラクターの足元へ届く線が、まず実際のリンクに刻まれていたと思うと、わくわくします。
CGWORLDの制作現場取材によると、広いリンクでの収録には慣性式の機材を使用。位置のずれを補うため、高い場所から撮った映像も解析して動きのデータを整えています。
さらに面白いのは制作順です。原作のコマを先にそのまま絵コンテにして滑らせるのではなく、曲と振付を考え、滑りを収録し、そのデータを使ってカメラや演技の流れを組み立てます。
- 物語と曲に合わせて、鈴木明子さんが演技の振付を考える
- スケーターがリンクで滑り、モーションキャプチャーを収録する
- 収録データをキャラクターへ当て、カメラを付けた映像の設計図を作る
- ポーズ、表情、指先、画面の見せ方をカットごとに調整する
漫画では一部のコマで示される演技を、アニメでは曲に沿った長い流れとして見せなければなりません。こうじさんは、収録した動きを基に一度全体を3Dで組み、技が伝わるように見せ方を調整したと語っています。
漫画の一枚が、助走から着氷までの時間になる。いのりの「できるようになった」が、点数を告げられる前に身体から伝わってくる。この瞬間が見たいから、滑走を途中で切らずに描く意味があるんですよ。
ただし収録データをそのまま貼れば完成、ではありません。速く動く指先は別の撮影資料を見ながら付け、スカートの揺れも手で動かす。現実の滑りを借りて、最後はキャラクターの演技にし直しています。
「本物を撮ったからリアル」で終わらないのが好きです。いのりの滑りとして見せるために、人の手が何度も入っているんですね。
声優の春瀬なつみさんと大塚剛央さんが収録現場を訪れた公式動画では、滑りをデータにする現場を見られます。数字や用語より先に、リンクの広さとスケーターの動きを確かめてみてください。
この映像を見てから本編の演技へ戻ると、「どこまで実際に滑り、どこから画面のために形を選んだのか」が気になってきます。リンクの上とアニメの画面、その距離を埋める仕事が次の見どころです。
漫画へ戻るなら、演技のコマでいったん止まってみてください。アニメでは、その一枚の前後をどう滑らせたのか。曲が流れる画面を知ると、止まった線から助走まで想像したくなります。
CGと作画はどうなじむ?顔・髪・スケート靴まで動かせる仕組み
日常の作画からリンク上の3DCGへ切り替わっても、いのりは同じいのりに見えてほしい。ENGIが苦心したのは、滑らかな身体の動きだけでなく、作画の表情をCGの顔にも通すことでした。
山本監督は、表情だけは作画にする案も考えたそうです。それほど顔は難しい。リンクを一周する迫力があっても、アップになったいのりが別人に見えたら、そこで気持ちがほどけてしまう。
山本監督のインタビューでは、完成したCGの豊かな表情を見て判断が変わった経緯も語られています。滑走を3DCG中心にする決断は、実際の仕上がりを見て生まれました。
制作現場では、3Dモデルを動かす仕組み「リグ」を細かく作り、角度ごとに顔の輪郭や目・口を直せるようにしています。笑顔の型を選んで終わりではなく、アニメーターがそのカットの表情を作る。
ENGIスタッフによるリグ解説には、作画監督がCGの顔へ修正を描き込み、リグで形を直す工程が示されています。直しきれない部分は、手描きで補います。
ここが「CGと作画の融合」の具体的な姿です。二つを隣に置くだけではありません。作画チームの赤入れがCGのモデルへ戻り、CGの素材が作画の手助けにもなる。行き来しているんです。
いのりの特徴的な髪の束も、見る角度に合わせて形や位置を動かせます。立体としての正しさだけで固めず、漫画の線にあるあの愛嬌を残す。正面でも横顔でも「いのりだ」と思える、その小さな安心が大きい。
スケート靴には、足首を曲げたときの隙間を出す仕組みまであります。原作で描かれた靴の形を、動く画面でも捨てなかった。ジャンプの派手さに目を奪われたあとで足元を見ると、ここまで作ったのか、と驚きます。
CGWORLDのリギング篇では、スケート靴の線をCGから作画のガイドへ活用したことも紹介されています。CGは完成映像だけでなく、手描きの工程も支えています。
「滑走はCG、顔は作画」と単純に分けられないのが本作です。CGの顔を作画へ寄せ、作画はCGの形も借りる。この往復こそ、ENGIの仕事の面白さです。
次に演技を見るなら、ジャンプの着氷後に顔へ寄る瞬間を見てほしい。身体の速度が変わっても、表情だけ別の作品へ飛んでいかない。そのつながりに、人の手が詰まっています。
画面の迫力はどこから?足元を見せるカメラと選手ごとの光
動きが正しくても、観客に技が見えなければ競技の面白さは届きません。『メダリスト』の滑走シーンでは、足元が見える角度やリンクの広さを生かしたカメラが、演技の読みやすさを支えます。
こうじさんは、技が分かるよう足元の見える角度を選んだと話しています。顔のアップで「すごい」と押し切る前に、刃が氷へ入るところを見せる。観客にも一緒に競技を追わせてくれるカメラです。
CGWORLDのアニメーション篇では、光の滑走で指の形やスパイラル中の脚・エッジまで調整した工程が見られます。収録した滑りにも、一コマごとの「見せる形」が必要でした。
特に光は、言葉で強さを説明する前に演技で圧倒しなければならない存在。山本監督も、ほかの選手との差を映像だけで伝える難しさを挙げています。きれいに滑るだけでは足りないんですよね。
いのりはまだ技術を伸ばす途中。そこへ光の演技が来ると、同じリンクが急に遠く見える。二人とも「きれいに滑る」で揃えてしまったら、この距離は生まれません。
光の演技が気になった人は、狼嵜光の人物像といのりとの関係を重ねてみてください。リンクで見せる圧倒的な存在感が、ただの強敵紹介で終わらなくなります。
画面の光も一律ではありません。ENGIの撮影工程では、CGと背景を組み合わせた後、明暗や色を監督と調整します。
初期には幻想的な案もありましたが、日常パートとつながる現実感を選びました。派手さを抑えたぶん、選手の動きが前へ出ます。
CGWORLDの画づくり篇では、白い衣装のいのりが白いリンクへ埋もれないよう光を足し、光のカットでは色の数まで絞った例が紹介されています。
白い衣装のいのりが、白い氷に消えたら困る。そこで周囲の光と影を変え、身体の輪郭を浮かべる。一見「きれいな照明」でも、いのりを見失わせないための地道な調整が潜んでいます。
いのりと光の演技を続けて見ると、同じ氷の白さなのに印象が違うんです。身体の動きだけでなく、カメラと光まで選手を語っている。
漫画の見開きが一瞬で伝える強さを、アニメは動きと時間で受け渡します。原作のコマへ戻ってから第1期の滑走を見返すと、視点の動かし方まで味わえます。
ENGIの代表作は?作品ごとに違う2Dと3Dの使い方
ENGIは『メダリスト』だけを作ってきた会社ではありません。『宇崎ちゃんは遊びたい!』『探偵はもう、死んでいる。』なども制作しています。
『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』『Unnamed Memory』も担当。ラブコメ、ミステリー、異世界、ファンタジーを並べると、ENGIの名前だけで画面の作り方を見比べたくなります。
ただし、過去作を全部「スケートと同じCG技術の実例」と並べるのは乱暴です。ENGI自身の作品履歴でも、2D制作と3D制作の区分は作品ごとに違います。
| 作品 | 放送開始 | ENGI公式の制作区分 |
|---|---|---|
| 宇崎ちゃんは遊びたい! | 2020年 | 2D制作・3D制作 |
| 探偵はもう、死んでいる。 | 2021年 | 2D制作 |
| 乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です | 2022年 | 2D制作 |
| Unnamed Memory | 2024年 | 2D制作・3D制作 |
| メダリスト | 2025年 | 2D制作・3D制作 |
『宇崎ちゃん』の掛け合い、『探偵はもう、死んでいる。』の物語、『Unnamed Memory』のファンタジー。作品ごとに必要な画面は違います。
制作区分の表は技術の使い方を見る入口です。映像の出来を順位づける表ではありません。
ENGI公式の制作履歴では、『メダリスト』第2期も2D・3Dの両区分に掲載されています。第1期の試みが一作限りで終わらず、続く物語でも同じスタジオが映像を担いました。
第2期でいのりの競技の段階が上がれば、対するライバルの滑りも目に入ります。誰が滑っているかを技名だけでなく身体で感じられるか。第1期で築いた仕組みの真価は、そこで問われます。
2027年公開予定の劇場版もENGIの作品ページに掲載されています。公開日や物語の範囲は『メダリスト』の放送・劇場版情報で確認できます。ここでは制作会社の役割に絞って追いましょう。
ENGIを見るなら「どの作品もCGがすごい」より、作品ごとに2Dと3Dをどう使い分けたかが面白い。『メダリスト』では、その選択がスケートの演技と真正面から結びつきました。
本編をこれから追うなら、『メダリスト』の配信先も確認できます。滑走の仕組みを知ったあとに見る演技は、最初とは少し違って見えるはずです。
まとめ|ENGIは実際の滑りとアニメの表現をつないだ
アニメ『メダリスト』の制作会社はENGIです。実際のスケーターの滑りを収録し、CGと作画のチームが手を入れて、選手ごとに違う演技として画面へ届けています。
収録した動きを、いのりの顔、光の指先、靴の隙間まで直していく。ほんの数秒の滑りに、どれだけの人が目を凝らしたのか。そこを知ると、次の演技はもう流し見できません。
ジャンプの高さに声が出たら、次は着氷後の足元や顔も追ってみてください。ENGIの仕事は、そこにもちゃんと残っています。
※当サイトで使用しているイラストは、記事内容を補足するイメージです。特定の著作物・キャラクター・場面の再現を目的としたものではありません。本記事は作品公式および関係各社とは関係のない非公式記事であり、感想・考察には当サイトの見解を含みます。
※本記事の情報は2026年9月27日時点で確認しています。放送・配信状況、料金、特典、キャンペーン、商品情報などは変更される場合があるため、最新情報は各公式サイト・販売ページをご確認ください。
