アニメ『ダンダダン』でオカルン(高倉健)を演じているのは、花江夏樹さんです。ターボババアの力で変身した後の、低くて気だるい声も同じ花江さん。
変身後の声は、オーディションの時点で決めていたそうです。ふだんのオカルンとは「別人になったような感覚」で演じている、と本人が語っています。
しかも、ふだんのオカルンにも仕掛けがあります。声が裏返るか裏返らないか、そのギリギリの高さで喋らせているんです。
裏返る手前の線を自分の中に持っていて、その線の上で喋る。オカルンの声、毎週綱渡りだったんですね。
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オカルン役は花江夏樹|2023年12月の発表から第2期まで
花江さんのオカルン役は、2023年12月16日に発表されました。モモ役の若山詩音さん、ターボババア役の田中真弓さん、セルポ星人役の中井和哉さんと同じ日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役名 | オカルン(本名・高倉健) |
| 声優 | 花江夏樹(1991年6月26日生まれ、神奈川県出身。アクロスエンタテインメント所属) |
| 発表 | 2023年12月16日 |
| 第1期 | 2024年10月3日から放送。第1話〜第12話 |
| 第2期 | 2025年7月3日から放送。第13話〜第24話 |
| 第3期 | 2027年放送予定 |
キャスト発表の時に寄せたコメントは、「とにかく彼には色んな表情があるんですよ」。まだ1話も放送されていない段階で、もう一番の難所を言い当てています。
実際、オカルンは一人で何役ぶんも働きます。いじめられて口ごもる高校生、宇宙人の話で止まらなくなるオタク、ターボババアの力で戦う変身後。全部、花江さんの声です。
掛け合う相手も濃い。ジジ役の石川界人さん、星子役の水樹奈々さんまで、オカルンを囲むキャストはアニメ声優一覧にそろっています。
ふだんのオカルンの声|「裏返るか裏返らないか」を狙う
ふだんのオカルンの土台は、人と話し慣れていないおどおどした態度。花江さんはそこへ、好きなもの、ギャグ、モモへのドキドキで振れ幅をつけていきます。
| 場面 | 花江さんの演じ方 | 本人の言葉 |
|---|---|---|
| ふだん | 人とのやり取りに慣れていない態度を土台にする | 「おどおどした態度がベース」 |
| 好きなものを語る | 自分とも重ねて力説する。監督からの注文は「もっとテンション高く」 | 「言葉が止まらなくなってしまう場面」 |
| ギャグ | キャラの範囲から出て、急にキレることも。顔が映らない場面ではさらに自由に | 「けっこうやりたい放題出来る」 |
| モモにドキドキする | 声が裏返るか裏返らないかの高さで喋る | 「ギリギリのところを意識」 |
なかでも効いているのが、ドキドキする時の高さ。アニメイトタイムズのインタビューでは、「このトーンだとひっくり返るな」という所で喋るよう心がけていると話しています。
裏返ってしまえばギャグに、踏みとどまれば真剣に聞こえる。その境目に声を置いているから、オカルンの緊張は笑えて、少しだけ切ない。
英語圏の取材でも、ふだんのオカルンは少し高めにして、変身したら下げると話しています。高さの差そのものが、変身の合図になっています。
第1話の「ジブン不器用なんで」と、第9話の言い切り
声の高さとは別に、言葉にも仕掛けがあります。オカルンの一人称は「ジブン」。第1話の最後には「ジブン不器用なんで」と口にして、モモをドキッとさせました。
本名が高倉健で、俳優の高倉健さんを思わせるこの台詞。それを、同じ名前のおどおどした高校生が言う。モモの胸が鳴るのも無理はありません。
第9話では、ふだんのオカルンのまま、モモに引かずに言い切る場面があります。公式ショートの題は「綾瀬さんに誤解されるのは嫌だ!!…キュンとくるじゃんよ」。
ふだんのオカルンは、モモを「綾瀬さん」と呼ぶ丁寧な子です。その言葉づかいのまま一歩も引かないから、題のとおりキュンとくる。
掛け合いの細かさも相当で、モモがちょっと小声になったら、オカルンはもっと小声で返す。小声を受ける側の声の作り方はモモ役・若山詩音さんへ。
宇宙人を信じるオカルンを演じる花江さん、本人は幽霊も宇宙人も「正直どちらも信じてはいない」そうです。ただ今は「いたら良いな」まで来ているので、半歩だけオカルン寄り。
「ジブン不器用なんで」は、原作では1巻の1話の終わり。服を着てくださいと頼んだ直後の一言なので、声のない紙の上でもかなりずるい。
変身後のオカルンも花江夏樹|オーディションで決めていた「別人」の声
変身後のオカルンも、声は花江夏樹さんです。声のトーンを下げ、しゃべり方を気だるげにする作りは、オーディションの時から決めていました。
理由は、まんたんウェブの取材によると、変身後のほうが大人びて見えたから。ギャップが大きいほど格好よく見えるはず、という読みです。
ABEMA TIMESのインタビューでは、気持ちは同じでも「ほぼ別人のような感覚」とまで言っています。声の高さだけでなく、モモの呼び方まで変わります。
| 項目 | ふだんのオカルン | 変身後のオカルン |
|---|---|---|
| 声の高さ | 少し高め。裏返る手前まで上がる | 低め |
| しゃべり方 | おどおど。好きな話では止まらなくなる | 気だるげで、語尾が荒くなる |
| モモの呼び方 | 綾瀬さん | モモちゃん |
| 一人称 | ジブン | 荒れた口調でも、ジブンは残る |
第2話で体だけ呪いを解いたオカルンは、意識ははっきりしているのに気分が落ち込む、とぼやきます。
そして巨大な宇宙人の指を飛ばしながら「萎えるぜ」。強くなった直後の感想が、それ。
- 第2話「それって宇宙人じゃね」:頭の呪いはモモに抑えてもらい、体だけ解いてフラットウッズモンスターと戦う
- 第6話「ヤベー女がきた」:モモの下品な噂に怒って、教室で変身してしまう
- 第15話「ゆるさねえぜ」:邪視に体を乗っ取られたジジと、地下で戦う
- 第21話「家を建て直したい」:修行を経て邪視と本気でぶつかるが、途中で変身が解ける
第6話は、ふだんと変身後が一つの場面でつながる回です。噂に怒って変身し、我に返ると元のオカルンに戻って謝る。原作の12話にあたる場面で、切り替えの速さがそのまま聞けます。
変わり方が大きすぎて、見ている側の反応も割れました。知恵袋では、変身後の声優を尋ねた人が同じ花江さんだと知り、「全然違う声なのに、すごいですね…!」。
反対に、第2話で声のトーンが変わった瞬間に共感性羞恥がきて、見るのを止めたという相談まであります。
別人に聞こえて驚かれ、見ている側が照れるほど変わる。演じ分けとしては大成功です。
第15話の「1から20」は「11以降がとにかく言いづらくて」
第15話の見せ場は、オカルンが1から20まで高速で数えながら、邪視へパンチを連打する場面です。相手は友達のジジの体なので、怒りの温度が違います。
公式ショートには「本気出すぜ 123454568910…」という題が付いています。題の時点で、もう数字が順番に並んでいません。
ABEMAの特番で、花江さんはこの収録を「大変でしたね。11以降がとにかく言いづらくて…」と振り返っています。
続けて「人生ってうまくいかない…って気持ちで演じていました(笑)」。数を数えているだけなのに、人生まで背負っています。
10までですら題がこの調子なのに、本番は20まで。「じゅういち、じゅうに…」から先は音が一つずつ増えるので、確かに舌が足りません。
同じ特番では、オカルン、アイラ、ジジの変身シーンは“ノーカット”の一発録りだとも明かしています。人の声から怪異の乗り移った声へ、録りながらその場で切り替えている。
そもそも変身の力は、ターボババアから借りたもの。貸し主の声はターボババア役の田中真弓さん、変身の仕組みや決め台詞はオカルンの変身と覚醒へ。
第15話の地下の戦いは、原作6巻の43話。閉じ込められた家の中で数える20回のスクワットは、声が付く前から数字がうるさい。
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「炭治郎みたい」「合わない」と言われる理由|本人も受かると思っていなかった
炭治郎っぽく聞こえるのは当然で、『鬼滅の刃』の竈門炭治郎も花江さんです。第1期の放送中、知恵袋には炭治郎に聞こえるという質問が何度も立ちました。
「炭治郎すぎて納得できません」「炭治郎みたいな感じじゃなくて」。原作を読んで期待していた、という人の声が目立ちます。
| 作品 | 役 | アニメの放送開始 |
|---|---|---|
| 東京喰種トーキョーグール | 金木研 | 2014年 |
| 四月は君の嘘 | 有馬公生 | 2014年 |
| 鬼滅の刃 | 竈門炭治郎 | 2019年 |
| ダンダダン | オカルン(高倉健) | 2024年 |
花江さんは金木研と有馬公生の2014年にブレイクし、炭治郎の年には声優アワードの主演男優賞も受けています。主人公の声として耳に残っていても、不思議はありません。
ただ、不満の向きをよく見ると、ばらばらです。発表直後には「思ってたより声が高い」。放送中には「もうちょっと可愛げのある低い声」を期待していた人も。
かと思えば、Xには女性声優か、もっと地声の高い男性がよかったという投稿もありました。
高すぎる、低いほうがいい、もっと高く。原作を読んできた人の数だけ、頭の中に別々のオカルンがいました。
演じた本人も、この配役は意外だったようです。ABEMA TIMESの取材で、オカルン役に「受かるとは思っていなかった」と明かしています。
理由は「ジャンプ作品の主人公を1つやっていたら受からないよなってイメージが勝手にありました」。炭治郎を演じている自分は外れるだろう、と思っていたんです。
視聴者が炭治郎みたいと言い出すより先に、本人が炭治郎がいるから無理だろうと思っていた。心配の先回りが早すぎます。
見ているうちに考えが変わった人もいます。Xには、発表の時は「また花江さんかよ」と思ったのに、第6話の声の変化を聞いて異議がなくなった、という投稿がありました。
炭治郎と同じ声を、気の弱いオタクの高さまで少し上げ、変身で一気に落とす。炭治郎とオカルンより、オカルン同士のほうが声の距離は遠いかもしれません。
オカルン役のその後|海外の賞、芸術選奨、舞台版の観劇まで
第1期が終わると、オカルン役には賞の話が続きました。海外のアワードで名前が挙がり、2026年3月には芸術選奨の新人賞へ。その夏には、舞台版の客席にも座っています。
- 2025年3月:海外のアニメ情報サイトAniTrendzの「Anime Trending Awards 2025」で、ベスト男性声優にオカルン役の花江さん
- 2025年4〜5月:「クランチロール・アニメアワード2025」の最優秀声優賞(日本語)に、オカルン役でノミネート。受賞は悠木碧さん
- 2026年3月:芸術選奨メディア芸術部門の文部科学大臣新人賞。同じ部門で、原作者の龍幸伸さんも新人賞
- 2026年8月:舞台版『ダンダダン』を観劇し、舞台の二人のオカルンと並ぶ
クランチロールの同じ部門には、モモ役の若山詩音さんの名前もありました。候補6人のうち2人が『ダンダダン』。オカルンとモモが、今度は賞の枠で隣に並んでいます。
芸術選奨は龍幸伸さんと同じ年、同じ部門で
芸術選奨で授賞対象に名前が挙がったのは、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の竈門炭治郎役ほかの成果です。
そのうえで、受賞を伝えたオリコンニュースは、炭治郎に続けて『ダンダダン』のオカルンを出演作の筆頭に挙げています。
そして同じメディア芸術部門の新人賞に、『ダンダダン』の成果で龍幸伸さんも選ばれました。オカルンを描いた人と、喋らせている人が、同じ年に同じ賞に並んだことになります。
受賞が発表された週、花江さんはXに、龍先生と並んで受賞できたこと「も」嬉しい、と書いています。
それが2週間ほど後の贈呈式では、「何よりうれしかった」になっていました。『ダンダダン』は自分も「一ファンでもある」作品だから、と。
「も」から「何より」へ。自分の受賞より、原作者と並んだことのほうが大きくなっています。オカルンからすれば、描いた親と声の親が、そろって表彰されたようなものです。
舞台版は、変身前と変身後を2人で演じた
2026年8月から9月の舞台版では、オカルンを二宮礼夢さん、変身後のオカルンを百名ヒロキさんが演じました。舞台では、変身前後に別々の役者が立ったんです。
しかも舞台のターボババアは、アニメと同じ田中真弓さんが声で出演しています。オカルンは二人がかりで、ババアだけはアニメのまま。
その舞台を、花江さんが観に行っています。公式Xには「Wオカルンと一緒に」の言葉が添えられました。
舞台で二人に分けた役を、アニメでは一人で、しかも変身シーンは一発録りで演じている。並んだ三人は、全員オカルンです。
次にオカルンの声が聞けるのは|ジャンプフェスタ2027と第3期
近いところでは、2026年12月20日のジャンプフェスタ2027があります。ジャンプスーパーステージの『ダンダダン』は13時10分から13時40分まで。
出演予定は、若山詩音さん(モモ)、花江夏樹さん(オカルン)、水樹奈々さん(星子)、田中真弓さん(ターボババア)。シークレットゲストの登壇も予告されています。
同じ日の14時40分からは鬼滅の刃のステージがあり、こちらも花江さんが炭治郎役で出演予定です。オカルンから炭治郎まで、間はSPY×FAMILYのステージ一つぶん。
オカルンを終えて1時間後には、炭治郎。本当に炭治郎みたいなのか、同じ日に聞き比べられます。変身ならぬ、役の切り替えつきで。
アニメは2027年放送の第3期へ続きます。ティザービジュアルには、宇宙怪獣の中から顔を出す謎の美少女と、目を見開くオカルンとターボババアが描かれました。
第3期のキャストは、2026年11月1日時点では改めて発表されていません。ジャンプフェスタのステージには、オカルン役として花江さんの名前があります。
謎の美少女を前に目を丸くしたオカルンが、裏返りそうな高い声で慌てるのか、低い声で構えるのか。どっちの声から始まるかで、第3期の最初の空気が決まりそうです。
第3期を待たずに先を読むなら、第2期の続きは原作9巻の72話から。キスの直後の話に付いたサブタイトルが「だれか翻訳してくれ」なのは、さすがにずるいです。
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まとめ|オカルンの声は、裏返る手前と低い本気を一人で往復している
アニメ『ダンダダン』のオカルン役は花江夏樹さんです。変身後の低く気だるい声も同じ花江さんで、オーディションの時から「別人」として作り分けていました。
高い声は、モモの前で崩れそうになるオカルンのため。低い声は、ターボババアの力で本気を出すオカルンのため。どちらも同じ人が、その場で切り替えています。
第15話を見返す時は、11から先をオカルンと一緒に数えてみてください。舌がもつれたら、花江さんの「人生ってうまくいかない」が分かります。
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