『ホタルの嫁入り』31話「正しい道」は、紗都子を担いで遊女屋を離れた康太郎が、足を折って休む洞窟で三年前を思い出す回。結びは「大事なところで道を間違える」です。
思い出すのは、あやとりで指が触れて真っ赤になった夜と、紗都子の縁談を流した噂。康太郎は二年間家を出され、帰ってきた日、駆け寄る紗都子の前で膝をつきます。
進平は一度も出てこない回です。それでも紗都子が走り出したきっかけは、康太郎の「手紙の一つでも書けばいいでしょう」でした。
心の中では「あなたの笑顔が見たい」。やっていることは、肩に担いでの連れ出しです。
※この記事は原作漫画第31話までのネタバレを含みます。32話以降の展開には触れません。
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『ホタルの嫁入り』31話のネタバレ|「放してってば」から「大事なところで道を間違える」まで
31話は、康太郎が紗都子を連れて遊女屋を離れる場面から始まり、洞窟で三年前を思い返した康太郎の独白で終わります。
- 康太郎が紗都子を肩に担いで林を走る。「放してってば」と暴れる紗都子に、康太郎は「暴れないでください」
- 下ろした紗都子が、進平との約束を理由に戻ろうとする。康太郎の返事は「手紙の一つでも書けばいいでしょう」
- 「いせ吉に戻るわ…」と走り出した紗都子が足を滑らせ、つかんだ康太郎ごと崖を転げ落ちる。康太郎は「足が折れている」
- 冷えを避けて洞窟へ。「平気」と言う紗都子の顔色と呼吸から、康太郎は嘘を見抜く
- 回想。三年前、あやとりで指が触れた康太郎が真っ赤になる。翌日、紗都子はお見合いのような食事会へ
- 「下働きの男に手を出す女」という噂で縁談が流れ、康太郎は二年間、警察の見習いとして家を出される。美和子は紗都子に「ふしだらね」
- 訓練の日々の中で、康太郎は「くだらない感情なんて捨ててやる」と決める
- 出向から帰った日、笑顔で駆け寄る紗都子の前で、康太郎は膝をついて頭を下げる
- 洞窟の康太郎の独白は「あなたの笑顔が見たい ただそれだけなのに」「俺はいつも」「大事なところで道を間違える」
第31話「正しい道」は、2024年2月11日の深夜にマンガワンのアプリで先読みが始まり、通常公開は2月26日。単行本では5巻の5話目に入っています。
30話は、殺しを止められた康太郎が紗都子の腕をつかみ、「今後二度とあの男とは会わせません」と言い切って終わりました。その一話は30話のネタバレ感想・考察で書いています。
回想も独白も、ずっと康太郎の側から語られる一話。進平の出番は、「あの人」と呼ばれる約束の中だけです。
「手紙の一つでも」と崖|約束へ戻ろうとした紗都子と、足を折った康太郎
紗都子が走り出したのは、進平との約束を「手紙」で片付けられた直後でした。その転落で、足を折ったのは康太郎のほうです。
「何も言わずに目の前から消えないって約束したの」
林で紗都子を下ろした康太郎は、「少ないですが銭も持ってきています」。近くに宿を探して今後の予定を立てましょう、と続けます。
紗都子の答えは「あの人と… 何も言わずに目の前から消えないって約束したの」。康太郎の返しが、「桐ヶ谷家に戻ってから手紙の一つでも書けばいいでしょう」でした。
| 話 | 紗都子と進平のあいだにあったこと |
|---|---|
| 24話 | 櫓の上で紗都子が「私はあなたの前から急にいなくなったりなんて絶対にしない……!」 |
| 29話 | 紗都子は5枚の手紙を書き、進平も葵に字を手伝ってもらって1枚を書く。進平は「手紙ってこんなに嬉しいものなんだって初めて気づいて」 |
| 31話 | 康太郎「桐ヶ谷家に戻ってから手紙の一つでも書けばいいでしょう」 |
24話で約束したのは、黙って消えないこと。29話で進平が初めて気づいたのは、手紙がどれだけ嬉しいか。康太郎の一言は、その二つを一度に踏んでいます。
5枚も書いた人に、「手紙の一つでも」。数え方からして、いちばん言ってはいけない一言でした。
紗都子は康太郎を押しのけ、「こんな形で別れることなんてできない」「いせ吉に戻るわ…」。コメント欄にも、手紙のやりとりが大事だったからこそ、あの一言は地雷だったと読む声がありました。
崖を落ちて「足が折れている」。それでも先に見るのは紗都子の顔色
- 「紗都子様 いけません」と追う康太郎の前で、紗都子が岩場で足を滑らせる
- つかんだ康太郎ごと斜面を転げ落ち、あとには片方の草履が残る
- 紗都子をかばって倒れた康太郎が「ぐ…」「足が折れている」
- 紗都子は自分のせいだと謝り、康太郎はしっかり抱えていればと謝る。身体が冷えないよう、二人は洞窟へ移る
洞窟で「ご体調は?」と聞かれた紗都子は「平気」。康太郎の心の声は「嘘だ」「顔色と呼吸ですぐわかる」でした。
続く語りは「紗都子様は体調が悪くても周りに迷惑をかけまいと我慢する癖がある」。
その癖は、20話の子どもの頃の回想にも出てきます。咳き込みながら「これくらい一人で平気」「みんなやっと休めたんだから」と言った紗都子の枕元にいたのも、康太郎でした。
折れた足で歩いて、風の当たらない場所を選んで、相手の呼吸まで聞いている。康太郎、自分の足の心配はいつするんですか。
読者も同じところが気になったようで、足が折れているのに普通に歩いている、と心配する書き込みが並びました。語りの最後は「…全て俺のせいだ」。そこから回想が始まります。
三年前のあやとり|「康ちゃん」と呼ばれていた康太郎の「真っ赤」
康太郎が思い出したのは、三年前のあやとりの夜でした。紗都子はまだ康太郎を「康ちゃん」と呼び、康太郎も敬語を使っていません。
「できた 金魚!」に「やっと成功したな」
崩れては「もう一度やらせて!」。やり直しの末の「できた 金魚!」に、康太郎は「おめでとう やっと成功したな」。紗都子の返しは「…一言多い!」です。
今の「紗都子様」「わかってください」からは想像しにくい、遠慮のない言い合いです。
もっと教えてとせがむ紗都子に、康太郎は薬の時間だから明日の昼間にやろう、と返します。けれど明日は食事会。お父様の幼なじみのおじ様と、そのご子息との四人です。
紗都子いわく、「お見合いみたいなものだと思う」。続けて「私はこんな風にずっと康ちゃんと遊んでいたいんだけど しょうがないよね」。
流れ星を一瞬で作って、指が触れたら「真っ赤」
そう言った紗都子の前で、康太郎は流れ星を作ってみせます。「え! すごい! 流れ星!?」「私もやってみたい そのまま貸して…」と紗都子が手を伸ばし、指が触れました。
次のコマ、康太郎の背中に大きな書き文字で「真っ赤」。紗都子のほうは「?」です。
流れ星はさらっと作れるのに、指が触れたら固まる。器用さが、手元にしか回っていません。
女中が「紗都子様 お薬の時間です」と戸を開けると、康太郎は「も もう行く」。紗都子は「うん また明日ね」。
廊下に出た康太郎の頭に残るのは「康ちゃんと遊んでいた方が楽しいのになぁ」。そこで小さく「っし」とこぶしを握っているのに気付いた読者もいました。
紗都子の「?」の読み方は、コメント欄で割れています。照れが移っただけという声もあれば、紗都子の初恋は康太郎だったのでは、という声もありました。
「康ちゃん」から「紗都子様」へ。呼び方で見る二人の距離
| 時期 | 呼び方と話し方 | 二人の距離 |
|---|---|---|
| 20話の回想(子どもの頃) | 紗都子は「康ちゃん」。康太郎は「その康ちゃんってのやめろよ」 | 寝込んだ紗都子の枕元で話す |
| 31話の回想(三年前) | 紗都子は「康ちゃん」。康太郎は「いいよ」「やっと成功したな」 | 夜遅くまで二人であやとり |
| 31話の回想(出向からの帰還) | 言葉はなく、膝をついて頭を下げる | 駆け寄った紗都子の前で地面に手をつく |
| 30〜31話(天女島) | 紗都子は「康太郎」。康太郎は「紗都子様」「わかってください」 | 肩に担いで連れ出す |
20話では「やめろよ」と言っていた康太郎が、三年前にはもう「康ちゃん」を止めていません。その呼び名もやがて消えて、今は「康太郎」と「紗都子様」です。
寝込んだ紗都子の枕元で二人が話す20話の回想は、4巻に入っています。あやとりの夜と続けて読むと、呼び名ひとつで二人の近さが伝わってきます。
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「身の程を知れ」と「ふしだらね」|噂で流れた縁談と、二年間の出向
食事会の縁談は、その後、二人の噂で流れました。康太郎は「明日から二年間」の出向を言い渡され、家の中でも外でも、二人の仲が責められていきます。
老人、美和子、女中たち。噂は三方向から
| 言った人 | 言葉 | 向けた相手 |
|---|---|---|
| 書斎の白いひげの老人 | 「お前には明日から二年間 警察の見習いとして働きに出てもらう」「身の程を知れ」 | 康太郎 |
| 美和子 | 「私の評判まで落ちちゃって」「お姉様ったら ふしだらね」 | 紗都子 |
| 女中たち | 「あのお医者様との縁談が!?」「うまくいけば紗都子様の病状も改善するかもしれなかったのに」 | 仲間同士のうわさ話。すぐそばに康太郎がいる |
老人によれば、縁談の相手は旦那様のご友人のご子息。
紗都子が「下働きの男に手を出す女」と噂され、それを聞いた先方が見合いを辞退した、というのです。
遠くへやる本当の理由は「紗都子様から距離を取らせるため」。噂が広まれば小川家も桐ヶ谷家も危ないと脅し、最後は「主人と従者の関係 それ以上でも以下でもない!」。
出発は明日、期間は二年、帰ってくるのは禁止。若い用心棒への言い渡しにしては、逃げ道が一つもありません。
紗都子のほうは、美和子に詰め寄られていました。「…私たち ただ一緒にいるだけよ」と答えても、あれだけ二人で部屋や物陰にいて疑わない方がおかしい、と返されます。
女中たちの話で、流れたのが医者との縁談だったことも分かります。康太郎の語りは「俺の行動が全てくるわせている…」、そして大きく「俺のせいで紗都子が不幸になる」。
30話の紗都子は、病を知ったうえで結婚してくれる相手を探してきたと語っていました。昔から病気を知る家の、しかも医者との縁談。これ以上条件に合う話は、そうそうありません。
「ちゃんと食べているだろうか」から「捨ててやる」まで
桜、入道雲、雪。季節が巡るあいだの訓練でも、康太郎の語りは紗都子のことばかりです。
- 「ちゃんと食べているだろうか」「眠れているだろうか」「寂しそうにしていないだろうか」
- 「主人と従者の関係 そんなことはわかっていた」。いつか相応しい相手が現れることも
- 「自分だけが特別だと勘違いしていた」「俺は彼女の特別になりたかった」
- 制帽の康太郎が刀を振るう大きなコマに、「でも 俺のせいで彼女が辛い思いをするのは許せない」
- 倒れた男たちの中に立って、「くだらない感情なんて捨ててやる」「本当の意味で彼女を守れる男になるために」
心配を三つ並べて、「特別になりたかった」と認める。その直後に、同じ気持ちを「くだらない」と呼んで捨てると決めています。
22話の康太郎は「私の方が守ってきました」「私はあなたの夢を叶えるために生きています!」と言っていました。あの「守る」は、二年間で決めた守り方だったように読めます。
作者の橘オレコさんは連載前に、Xで短編「お嬢様と用心棒」を載せていました。紗都子さまに仕える用心棒の話です。
その②では、用心棒が真っ赤になって「もっと好きになってしまうかもしれない……!!」と慌てています。
短編の用心棒は好きを隠しきれずに慌て、31話の康太郎はその気持ちを捨てると決める。
31話のコメント欄でも、短編から読んでほしい、康太郎を否定できなくなる、という書き込みに支持が集まりました。
膝をついた帰還と「正しい道」|「あなたの笑顔が見たい」が行き着いた先
出向から帰ってきた康太郎は、笑顔で駆け寄る紗都子の前で膝をつきました。洞窟の康太郎はその日を思い出し、「大事なところで道を間違える」と自分を責めます。
駆け寄る紗都子と、地面に手をついた康太郎
三つ編みの紗都子が、荷物を背負った康太郎に気付いて笑顔で駆け寄る。康太郎は荷物を下ろし、膝と手を地面について頭を下げます。
久しぶりに駆け寄ってきた幼なじみに、返したのが膝をついての一礼。「康ちゃん」と呼ぶ隙を、自分から消しています。
洞窟の康太郎の語りは「あなたの笑顔が見たい ただそれだけなのに」「俺はいつも」。最終ページの紗都子はもう笑っておらず、そこへ「大事なところで道を間違える」が重なります。
膝をつく康太郎は、天女島で再会した20話にもいました。あの時は紗都子の手を額に押し当てて「よくぞ御無事で…!」。帰還の日は、手も取らずに頭を下げています。
「俺は間違っているのか…?」で始まり、「道を間違える」で終わる
回想に入る直前の語りは「俺は間違っているのか…?」。その大きな文字に添えられていたのも、荷物を背負った康太郎と三つ編みの紗都子が向き合う場面でした。
問いで始まった回想は、「俺はいつも」「大事なところで道を間違える」で閉じる。答えを出したのは、康太郎自身です。
| 時期 | 康太郎が選んだこと | 紗都子 |
|---|---|---|
| 出向から帰った日 | 駆け寄る紗都子の前で膝をつき、頭を下げる | 最終ページでは笑っていない |
| 30話 | 殺しを止められて「強制的にあの男と引き離す」 | 「一生許さない!」 |
| 31話 | 肩に担いで遊女屋から連れ出す | 「放してってば」。約束へ戻ろうと走り出す |
連れ出した先にあったのが、崖と折れた足でした。題は「正しい道」ですが、31話の中でその言葉を口にする人物はいません。間違えたと分かっている康太郎の上に、題だけが置かれています。
5巻の小学館の内容紹介には、康太郎は「従者として、そして一人の男として」二人を引き離そうとする、とあります。
31話を読むと、その二つが三年前から康太郎の中でぶつかっていたのが見えてきます。「主人と従者の関係」を受け入れ、「特別になりたかった」気持ちは捨てたはずでした。
31話の読者の反応|いいね1位は「私は妹を許さん」
31話のコメントは2,600件を超えます。いいねの上位に並んだのは、噂の出どころを疑う声と、康太郎をかばう声でした。
| 書き込み(長いものは要旨) | いいね |
|---|---|
| 「私は妹を許さん」 | 15,852 |
| 「噂流したの絶対継母やろ…」 | 12,970 |
| 「康太郎にも康太郎の正義がある」 | 10,122 |
| こんなに悲しく切ない過去があった、康太郎なりの純愛が描かれている、康太郎を悪く言わないで | 8,182 |
| 進平が出ないと文句を言うのは失礼、物語を読もう | 6,705 |
| 作者の短編「お嬢様と用心棒」を読んでほしい、康太郎を否定できなくなる | 1,772 |
| 手紙のやりとりが大事だったからこそ、「手紙の一つでも」は地雷だった | 1,740 |
上位3件は、先読みが始まって数分のうちの書き込み。1位と2位は、噂を流したのが美和子か義母か、という読みです。31話の中では、噂の出どころは描かれていません。
上位には「2週間進平を見るために生きてたのに…」という嘆きもあります。ただ、いいねの数では、それをたしなめる側が大きく上回りました。
老人については、康太郎の父では、と見る書き込みもあります。31話の中では名前も続柄も出てきません。
細かい場面では、流れ星を一瞬で作った康太郎への驚きや、進平と康太郎の担ぎ方の違いを比べる書き込みも並びました。
ブックライブの単話31のレビューにも、「つらい つらいよ」と書いた人がいました。
「今回も道を間違えた」という書き込みは一つではなく、「物理的に。」まで付けた人もいました。崖から落ちた回なので、言い返せません。
あやとりの夜の「真っ赤」は、康太郎の背中いっぱいの書き文字です。31話は5巻の5話目で、手紙の29話、離れの告白の30話から続けて読めます。
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まとめ|31話は、康太郎が「道を間違える」と自分で認める回
『ホタルの嫁入り』31話「正しい道」は、紗都子を連れ出した康太郎が足を折り、洞窟で三年前を思い出して「大事なところで道を間違える」と認める回でした。
正しい道を探すにしても、出発点は崖の下の洞窟。おまけに足も折れています。
※当サイトで使用しているイラストは、記事内容を補足するイメージです。特定の著作物・キャラクター・場面の再現を目的としたものではありません。本記事は作品公式および関係各社とは関係のない非公式記事であり、感想・考察には当サイトの見解を含みます。
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