『ホタルの嫁入り』6話「見守るネズミ」は、新渡戸栄進の求婚に「断る理由がない」と傾いた紗都子が、「助けてくれた人を欺いたままでいいの?」と立ち止まる回です。
その頭上の梁には、刀を抜いて見守る進平。殺し屋をネズミと言い張る紗都子に笑っていると、最後のページで空気が変わります。新渡戸の湯呑みの水が、酒にすり替えられていました。
新渡戸は「私の手で君を守りたいんだ」と紗都子の手を取る。その手を進平が拭いてから「紗都子を守る役は新渡戸じゃない 俺だから」。同じ「守る」を、殺し屋が取り返しに来ます。
警視総監の息子が求婚している真上で、殺し屋がにこにこ手を振っている。この客間、天井まで入れると定員オーバーです。
※この記事は原作漫画第6話までのネタバレを含みます。7話以降の展開には触れません。
この記事でわかること
『ホタルの嫁入り』6話のネタバレ|新渡戸の「正式な妻に」から、水と酒のすり替えまで
6話は、いせ吉の客間で紗都子が新渡戸にお茶を注ぐところから始まります。舞台はほぼこの一部屋。ただし天井の梁つきです。
- 緊張している新渡戸を見て、紗都子は「これなら私にも可能性があるのでは」と思う。ところが会話が続かない
- 新渡戸は自分のほうが緊張していると認め、遊女にも楽しく過ごしてほしいと話す。出禁は、酒で変な振る舞いをしたせいだろうと自分で推し量る
- 警察の仕事をしていると聞き、紗都子は島へ連れてこられた事情を打ち明ける。けれど島の件には警察組織も手出しできない
- 新渡戸は「私が身請けしよう」、さらに「私の正式な妻になってもらいたい」。余命を気にする紗都子の手を取り、守りたいと告げる
- 父も喜ぶ相手で、断る理由がない。それでも紗都子は、進平を欺いたままでいいのかと迷う
- 物音で見上げると、天井の梁に進平。紗都子は新渡戸の目をふさぎ、ネズミがいたとごまかす
- 屏風の裏のネズミを口実に新渡戸を離し、梁から下りた進平を小声で追い出す。進平は紗都子の手を拭いてから出ていく
- 戻った新渡戸が結婚の返事を求め、湯呑みを一口飲んで倒れる
- 店の遊女たちが、水と酒をすり替えていた。最後のページには、眼鏡の外れた新渡戸の顔
第6話「見守るネズミ」は、マンガワンのアプリでは2023年2月26日の深夜からコメントが付き、3月13日に通常公開。2026年11月3日時点で、読むにはアイテムが必要です。
3月13日になったばかりの0時、マンガワン公式Xが更新を告知しています。
告知の言葉は「何もかもが嘘の婚約なのに…」。その「嘘」をこのまま通すかどうかで、6話の紗都子は迷います。
アニメでは第3話が同じ「見守るネズミ」の題で、5話のいせ吉から6話の客間へ続きます。見られる配信先はアニメの配信をまとめた記事にあります。
出禁の客・新渡戸栄進はどんな人だったか|緊張する警視総監の息子の「私が身請けしよう」
6話の新渡戸は、出禁という前評判が嘘に思えるほど誠実に見えます。緊張し、自分の失敗を恥じ、紗都子の事情を聞いては謝る人でした。
先に勝機を見たのは紗都子のほう。新渡戸の緊張を見て「これなら私にも可能性があるのでは」と踏んだのに、「ここに入ってどのくらいになる?」の一問で会話が止まります。
その時の心の声が「何が"可能性あり"よ」。異性とまともに話したこともないくせに、と自分で自分にツッコむ令嬢です。
新渡戸のほうは「緊張しているのは私の方か」。制約の多い仕事をしているせいか、この場所が唯一の癒やしだと打ち明けます。
| 比べる点 | 5話で進平が話した新渡戸 | 6話で本人が見せた新渡戸 |
|---|---|---|
| 立場 | 警視総監の息子 | 警察の仕事をしていると自分から明かす |
| 出禁 | 島のほとんどの遊女屋に出禁 | 酒で変な振る舞いをしたのだろうと自分で推し量り、「恥ずかしい話だ」 |
| 人柄 | 酒癖が「ちょっと」悪いくらい | 遊女にも自分といる時間を楽しんでほしいと話す |
紗都子の感想も「誠実な方…」。この方が出禁だなんて想像がつかない、と首をかしげます。この食い違いの答えは、最後のページに置いてあります。
警察の仕事をしていると聞いて、紗都子は事情を打ち明けます。返ってきたのは「この島で起きたことには警察組織も手出しすることができないんだ」。
力になれないと謝った直後に、新渡戸は「私が身請けしよう」。身請け代は返すと言う紗都子を止めて、正式な妻になってほしい、一目惚れしたようだ、と続けます。
警察として連れ出せないなら、夫として連れ出す。職権の届かない島へ、求婚で回り込んできました。
体が弱く余命を告げられている、と打ち明ける紗都子に、新渡戸は両親を「説得し必ず納得させる」。病気も国中の医者に診てもらおうと言い、手を取って「私の手で君を守りたいんだ」。
1話の父も、医者の言う余命など信じないと言っていました。余命を聞いても引かない男が、父のほかにもう一人現れたわけです。
5話の最後で湯呑みを倒して謝っていた、あの客です。新渡戸が初めて出てきた場面は『ホタルの嫁入り』5話の感想・考察で追いました。
「断る理由がない」の後の「だけど」|紗都子が欺けなかった相手
立派な家柄からの求婚に、紗都子は一度は傾きます。それでも最後に残ったのは、助けてくれた人を欺いたままでいいのか、という一点でした。
| 話数 | 結婚についての紗都子の言葉・考え | その時の状況 |
|---|---|---|
| 1話 | 「私はお父様が望む相手と結婚することが目標だから」 | 家にいた頃。父の持ってきた縁談で、体のことを相手に伏せるのは嫌だと話す |
| 5話 | 「私は必ず生きてこの島を出る」「そして結婚するの」 | 身請け作戦の前、口を出す進平を一喝して |
| 6話 | 相手がこれほど立派な家柄なら、父もきっと喜ぶ。断る理由がない | 新渡戸に手を取られ、求婚された直後 |
1話の夢が、ほぼそのままの形で客間に届いた。島を出ることも、父が喜ぶ結婚も、この求婚一つでかなう。
ここで紗都子の頭に、進平の「好きだよ」がよぎります。4話のホタルの下で聞いた言葉です。
そこから先の心の声は、ずいぶん冷静です。島を出たら駆け落ちするつもりの進平が、新渡戸の命を狙いに来るかもしれない。今伝えておけば警察が守ってくれる。
結婚を持ちかけたのも生き延びるための方便、相手は大悪党だから気にする必要ない。そこまで理屈を積み上げてから、心の声は「だけど」で止まります。
続くのは、大きな文字の「助けてくれた人を欺いたままでいいの?」でした。
1話で、縁談の相手に体のことを伏せるのを嫌がった紗都子です。6話でも、新渡戸には余命のことを先に打ち明けていました。欺くことへの引っかかりは、相手が殺し屋でも消えない。
「大悪党だもの」まで自分を説得しておいて、最後の「だけど」で全部ひっくり返す。紗都子の中で、理屈より先に良心が手を挙げています。
天井のネズミ・進平|「ここで見守ってるよ」から「俺だから」まで
迷った紗都子が見上げた天井の梁に、進平がいました。6話の題の「見守るネズミ」は、この殺し屋のことです。
物音に気づいて上を見ると、梁の上の進平がにっこり手を振っている。少し前、新渡戸が紗都子の手を取ったコマには、刀の柄に手をかける進平の手が描かれていました。
とっさに新渡戸の目をふさぐ紗都子。「虫でもいたかい?」と笑う新渡戸の頭上で、進平は刀を抜く。「天井に何がある?」への答えは「ネズミ…ネズミがいました!!」。
表に出ていて、と心の中で頼む紗都子に、梁の上の進平は「ここで見守ってるよ」。18ページのこの一コマを可愛いと挙げる書き込みは、コメント欄にいくつも並びます。
刀を抜いた直後に「見守ってる」。その言葉、せめて刀をしまってから言ってほしい。
屏風の裏へネズミが逃げたことにして新渡戸を遠ざけると、進平が梁から下りてきます。小声で抗議されても、男と二人きりなんて心配だ、指一本触れさせたくない、と引きません。
頼み方もおかしい。「絶対に見つからないようにするから」が断られると、次の頼みは「絶対に殺さないようにするからさぁ」。譲歩のつもりで、条件のほうが物騒になっています。
「気が散るんです! 外に出ていて!」と一喝されて、進平は「二人の将来のためだもんね」と引き下がる。ただし出ていく前に、「手を出して」。
進平は袖で紗都子の手を拭き、「紗都子を守る役は新渡戸じゃない」「俺だから」。新渡戸に握られたばかりの手でした。
「私の手で君を守りたい」の手を、進平はまず汚れとして扱う。求婚した側が聞いたら卒倒します。
| 話数 | 進平の言葉 | 言った場面 |
|---|---|---|
| 4話 | 「紗都子は俺じゃないとダメだよ」 | 「あなたじゃなくてもいい」と紗都子に突き放された直後 |
| 5話 | 危険にさらされ続ければ、紗都子にとって必要不可欠な存在になれるかもしれない | 身請け作戦は今日一回きり、と話した後 |
| 6話 | 「紗都子を守る役は新渡戸じゃない 俺だから」 | 新渡戸に握られた紗都子の手を拭いて |
5話の進平は、紗都子が危ない目に遭うほど自分が必要になれる、と言っていました。そこへ自分の手で守りたいと言う別の男が現れた。「俺だから」は、その席を譲らない宣言に聞こえます。
梁の上で手を振る顔から、刀を抜く顔、手を拭く真顔まで。進平の表情の幅は進平の目と表情の魅力をまとめた記事でも追っています。
ラストの水と酒|「ネズミくらい慣れないとな」の直後に起きたこと
進平を追い出し、いよいよ結婚の返事へ。ところが新渡戸は湯呑みを一口飲んで倒れます。店の遊女たちが、水と酒をすり替えていました。
戻ってきた新渡戸は、ネズミは外に逃げたのかもしれないと言い、「ここで働くのならネズミくらい慣れないとな」。
新渡戸、そのネズミ、あなたの結婚に大反対です。
新渡戸は「結婚の話 どうだろうか」と切り出し、急すぎたと謝って、もう少し自己紹介をと湯呑みに口をつける。次のコマでは、もう床に倒れていました。
5話の最後では湯呑みを倒して謝っていた人が、6話では湯呑みの一口で倒れる。湯呑みが、5話では緊張の小道具、6話では罠でした。
仕掛けたのは店の遊女たち。この程度なら料理番のしくじりで通る、酒で「あっちの人格」が出たらあの新人は朝まで部屋から出てこられない、と笑い合います。
| 比べる点 | 5話で進平が話していたこと | 6話で起きたこと |
|---|---|---|
| 酒 | 昼間に酒は出さない | 湯呑みの水が酒にすり替えられる |
| 新渡戸の酒癖 | 「ちょっと酒癖が悪いくらい」 | 遊女たちは「あっちの人格」と呼ぶ |
| 作戦 | 今日一回きりで、失敗したら終わり | 求婚の返事を待つところで、店の内側から崩される |
進平の言う「ちょっと」と、遊女たちの言う「あっちの人格」。同じ酒癖の話なのに、言葉の重さがまるで違います。
最後のページは、床に押し倒された紗都子と、眼鏡の外れた新渡戸の顔。そこに「今回 腎張りの餌食になるのはあの娘さ」という言葉が重なります。
「腎張り」は、好色なこと、多淫なこと、またその人を指す言葉です(デジタル大辞泉「腎張り」)。
ふだん聞かない言葉なので、コメント欄にも意味を調べて書き込む読者が何人もいました。数ページ前に「恥ずかしい話だ」とうつむいていた人と、同じ一話の中の新渡戸です。
誠実な求婚の返事待ちが、湯呑み一口で修羅場の入り口に。紗都子の初仕事、難易度の設定がおかしい。
6話の読者の反応|いいねが集まったのは新渡戸への「可哀想」
マンガワンの6話には650件を超えるコメントが付いています。いいねの多い順に並べると、上位は進平より先に新渡戸の話でした。
| 書き込み | いいね |
|---|---|
| 「元の人はいいのに酒癖で出禁なんて、本当に体質が可哀想」 | 14,994 |
| 「ひぇ、全然顔違う、画力すげぇ・・・」 | 10,131 |
| 「酒乱とは言え、自分からは酒飲もうとしてないなら今回騙されてるんだし可哀想な人だな」 | 8,612 |
| 「やはり酒か」 | 7,080 |
| 「ここで見守ってるよのところは可愛いのに紗都子を守る役は新渡戸じゃない俺だからのところはカッコいいのなんなんだ(感謝)」 | 1,806 |
上の3件のうち2件が「可哀想」。求婚までの誠実さを見てきたぶん、すり替えで倒れた新渡戸に同情が集まっています。
紗都子の迷いは受け止めが割れました。進平を裏切ろうとしたのはずるい、と感じた人もいれば、「助けてくれた人を欺いていいの?って踏みとどまってるやん…」と書いた人も。
進平を部屋から追い出したのは、本当に気が散るからなのか。結婚話を進めるためだったのでは、と読んだ人もいました。
ブックライブの単話6のレビューにも「意地悪3人組がいらんことした」。アニメ第3話を見た人のXには、進平をネズミのせいにする紗都子を面白がる投稿が並びます。
6話は原作2巻の最初の話です。新渡戸の求婚から天井のネズミ、湯呑みの一口まで、2巻を開いてすぐに読めます。「ここで見守ってるよ」の18ページは、ぜひ絵で見てほしいところ。
まとめ|6話は、求婚に傾いた紗都子が「だけど」で踏みとどまり、天井のネズミに手を拭かれる回
『ホタルの嫁入り』6話「見守るネズミ」は、新渡戸の求婚に傾いた紗都子が、進平を欺くことに引っかかって踏みとどまる回。最後は、水と酒のすり替えが客間をひっくり返します。
1話から目標にしてきた、父が喜ぶ結婚に天女島の客間で手が届きかけた。返事を待つ間に、天井にはネズミ、湯呑みには酒。紗都子の縁談、どうしてこう静かに進まないのか。
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