『薬屋のひとりごと』の羅漢(ラカン)がかっこいいのは、人を見抜く軍師の実力と、大切な人に向ける一途な愛情が、胡散臭い言動の奥から見えてくるからです。
猫猫(マオマオ)の実父である羅漢は、壬氏(ジンシ)には面倒な相手。それでも、娘が危機に陥った時の助けや、鳳仙(フォンシェン)との再会を知ると、最初の印象がぐらつきます。
ただし、愛情が深いことと、相手に好かれることは別。娘を助ける姿には惹かれるのに、猫猫が嫌がるのも分かる。この困ったところまで含めて、羅漢が気になります。
最初は「この人、何を企んでいるんだろう」と身構えたのに、最後は碁を打つ二人に胸をつかまれる。羅漢、印象の変わり方が大きすぎます。
※アニメ第1期の羅漢・鳳仙の過去と、第2期第44話までの展開に触れます。
この記事でわかること
| 人物 | 読み | 羅漢との関係 |
|---|---|---|
| 羅漢 | ラカン | 猫猫の実父。軍部の高官で、軍師として知られる |
| 猫猫 | マオマオ | 羅漢が引き取りたがっている娘 |
| 壬氏 | ジンシ | 猫猫を侍女にしたため、羅漢から絡まれる |
| 鳳仙 | フォンシェン | 猫猫の実母。羅漢と碁や象棋を打った妓女 |
| 羅門 | ルォメン | 羅漢の叔父で、猫猫を育てた養父 |
| 梅梅 | メイメイ | 緑青館の妓女。羅漢と鳳仙の再会を助ける |
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羅漢は悪役?壬氏への嫌がらせと、猫猫を引き取りたい狙い
羅漢が猫猫に執着する大きな理由は、実の娘を手元に迎えたいからです。壬氏を困らせる態度には、先に猫猫を侍女にした相手への私情も絡みます。
とはいえ、初登場時からそんな父親には見えませんよね。遠回しな物言いに、相手を試すような難題。猫猫の嫌そうな反応まで重なると、危ない人物を疑いたくなります。
羅漢は、原作小説2巻でも壬氏に次々と問題を持ち込む人物です。猫猫との過去を知らない壬氏には、猫猫にまとわりつく厄介な男として映ります。
| 場面 | 羅漢がすること | あとで分かる事情 |
|---|---|---|
| 第18話「羅漢」 | 猫猫への関心を壬氏に示す | 壬氏が羅漢と猫猫の親子関係に気づく |
| 第22話「青い薔薇」 | 青い薔薇という難題を仕掛ける | 猫猫は羅漢の関与に気づき、対抗する |
| 第23話「鳳仙花と片喰」 | 猫猫との条件付き象棋勝負を受ける | 猫猫を引き取ることが、賭けの条件に入っている |
猫猫と壬氏にちょっかいを出す姿も、親子関係を知ると意味が変わります。娘を迎えたい父と、その娘を先に侍女にした壬氏。羅漢にとって面白くない相手だったわけです。
第22話では、青い薔薇の難題を羅漢が画策しています。猫猫も負けるものかと対抗しますが、父娘のやり取りが難題の応酬になるのは、なんとも面倒です。
碁盤の上なら相手の手を読めるのに、娘へは素直に近づけない。青い薔薇に挑む猫猫の才能を認めていても、難題で試される側が喜ぶとは限らないんですよね。
猫猫を大切に思っているから、猫猫の負担がなくなるわけではありません。能力を試すことと、相手が心地よく過ごせることは、別の話です。
第19話の暗殺計画で、羅漢は黒幕ではない
第19話の祭事をめぐる暗殺計画の黒幕は、羅漢ではありません。彼は、立ち入りを拒まれた猫猫が中へ進めるよう、武官に働きかける側にいます。
祭具や官吏に起きた異変は、壬氏が狙われた第19話の事件と黒幕につながります。青い薔薇で人を困らせた羅漢が、この場面では猫猫を通す側へ回る。その違いが大きい。
羅漢の企みを疑った場面ほど、親子関係を知ってから漫画で戻ると、猫猫と壬氏の受け止め方の違いが気になります。あの遠回しな会話、今度は父親の顔で読みたくなる。
羅漢がかっこいい理由は軍師の実力|人の力を見抜く一方、弱点もある
羅漢のかっこよさは、肩書だけではありません。人の能力を見抜き、配置や采配に生かせることが、軍師としての強みです。胡散臭くても、仕事の実力まで怪しくはない。
羅漢は、慧眼と采配で地位を築いた軍部の高官です。囲碁と象棋を好む姿は、ただ遊んでいるだけと見るには侮れません。
腕の立つ人物を見つけても、適した役目を任せられなければ力を生かせません。羅漢は、その判断と采配に秀でた軍師。戦場で剣を振るう姿がなくても、頼もしい実力者です。
| 得意なこと | 苦手なこと・弱点 | 場面での現れ方 |
|---|---|---|
| 人の力を見抜き、使うこと | 人の顔を判別すること | 人を象棋の駒などに当てはめて認識する |
| 囲碁・象棋の対局 | 酒を飲むこと | 猫猫は棋力だけでなく、酒への弱さを狙う |
| 相手を揺さぶる会話 | 猫猫と素直に距離を縮めること | 壬氏へ絡み、娘には嫌がられる |
顔が分かりにくいという弱点と、人の能力を見抜く力が並んでいるのが興味深い。顔を覚えられないから人物を理解できない、と一直線にはならないんですね。
叔父の羅門は、人を象棋の駒に当てはめて覚える方法を羅漢に教えました。顔を覚えにくい羅漢に、自分の得意なものを使って人を見分ける方法ができたのです。
羅漢の人の顔を判別できない悩みと軍師としての才能は、同じ人物の中にあります。人を駒として認識する描写を、ただ冷酷な性格の印と取るのは早いです。
盤上に強い人なら、現実でも全部うまく運べそうに思ってしまう。でも羅漢は、家族との関係や酒の場面になると、急にその見通しが崩れます。
第23話では、猫猫が棋力ではなく酒の弱さを突く
第23話の象棋勝負では、羅漢は勝利を重ねます。それでも最後に猫猫の作戦に負ける。棋力で押し切れない条件を用意したところが、いかにも猫猫らしい。
- 猫猫が条件を付ける:羅漢が負けたら、緑青館の妓女を一人身請けする
- 盤上では羅漢が強い:象棋の勝負で、羅漢が勝利を重ねる
- 酒への弱さが決め手になる:猫猫は、羅漢が酒に弱いことを利用する
猫猫は、条件付きの象棋勝負へ酒を絡めます。強い相手に同じ得意分野だけで勝とうとしない。この親子、勝負の組み立て方まで一筋縄ではいきません。
象棋の強さと、賭け全体に勝てるかは別。猫猫に負けたから軍師として弱い、という話にはならず、むしろ二人がどこで勝負していたかが見えてきます。
娘に誘われてうれしい羅漢と、その父親の弱点まで使う猫猫。父娘が向かい合ったからといって、穏やかな家族団らんにはならないところが可笑しい。
酒に弱い羅漢が、娘に誘われた勝負でその弱点を突かれる。人を見抜く名軍師なのに、猫猫の前では思い通りに運ばない。この落差があるから、実力者のまま親しみも湧いてきます。
第19話・第44話の羅漢がかっこいい|猫猫を助けるために立場を使う
羅漢が頼もしく見えるのは、猫猫が危機に陥った時、自分の立場と判断力を助けに変える場面です。とくに第19話の祭事と、第44話の救出への進言で、その役割がはっきりします。
普段は近くにいるだけで困らせる人物なのに、武官の前で話が通じない時には立場がものをいう。困った相手の肩書が、ここでは突破口になるのが痛快です。
- 猫猫が祭事の危険に気づく:祭事の場へ向かうが、警備の武官に止められる
- 武官との押し問答で負傷する:それでも猫猫は、中へ通すよう訴える
- 羅漢が責任を引き受ける:武官に働きかけ、猫猫が堂内へ進めるようにする
- 猫猫が壬氏を救う:大怪我を負い、壬氏に抱えられて運び出される
第19話では、羅漢が責任を取るとして武官を説得します。猫猫が危険を見抜く力と、羅漢が通行を可能にする立場が、そこでつながりました。
責任を引き受けると言える大人がいることは大きい。身分の低い猫猫の正しい警告が通らない場面で、羅漢の一言が閉ざされた道を開きます。
ただ、これで「頼れる父が全部解決した」とはなりません。堂内へ飛び込んで壬氏を救い、体を傷つけたのは猫猫です。助けを受けても、娘の危険は残っていました。
運び出された血だらけの猫猫を見た羅漢の表情には、普段の余裕がありません。壬氏をからかう時の顔と、娘の傷を前にした顔。あの変化に、父親としての思いがにじみます。
第44話では、壬氏に禁軍を動かすよう進言する
第44話「砦」では、猫猫が囚われた状況で、羅漢は壬氏に軍を動かすよう求めます。娘への思いだけでは禁軍は動かない。だから、討伐を命じられる立場の壬氏へ進言します。
- 壬氏が砦の存在を知る:猫猫救出へ向けた手掛かりがつながる
- 羅漢が壬氏を揺さぶる:曖昧な立場のままでいることを厳しく問う
- 羅門が羅漢を諫める:感情のまま押し続けず、羅漢は態度を切り替える
- 羅漢が正式に進言する:反乱を起こした一族の討伐へ、禁軍を動かすよう求める
- 壬氏が覚悟を決める:救出へ向けて、自らの立場で動き出す
第44話の羅漢の進言と壬氏の決断は、いつもの嫌がらせとは重みが違います。壬氏を困らせる男が、この時は壬氏の決断を必要としている。
壬氏への怒りをむき出しにする姿には、普段の厄介さも残っています。それを羅門に止められると、羅漢は軍師として進言し直す。この切り替えができるところに、ほっとします。
人を動かす力が、娘の救出へ向く。戦う本人の勇姿だけでなく、その行動を可能にする軍師の仕事に注目すると、羅漢のかっこよさがよく見えます。
救出の実行と猫猫の再会まで追うなら、猫猫の連れ去りから救出までの経緯がつながります。羅漢の助言と、壬氏たちが現場で行うことは、それぞれの役目です。
反乱の予兆への態度には、冷淡な一面もある
原作者・日向夏さんは小説4巻までの補足で、羅漢は反乱の予兆に気づいていた可能性がありながら、担当外として無視していた人物だと説明しています。
予兆に気づいていたかどうかは、作者も推量を交えて述べています。一方、担当外のことには関わらないという冷淡さもある。娘を助ける姿だけでは、羅漢の全ては語れません。
そういう男が、大切な相手の危機には動く。世間全体への優しさとは違うけれど、守りたい相手へ力を使う姿には惹かれます。欠点を知っても好きになる理由が、そこにあります。
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鳳仙との再会がかっこいい|病で姿が変わっても、同じ相手を愛する
第24話で羅漢は、病で姿が変わった鳳仙と再会し、身請けします。昔の美しさを条件にせず、鳳仙その人を選ぶことが、羅漢の愛情を最も強く伝える場面です。
華やかな妓女たちの中から選ぶはずが、羅漢の心は病に苦しむ鳳仙へ向かう。周りにどんな美女がいても、会いたかったのはこの人。その迷いのなさに胸を打たれます。
- 碁と象棋で親しくなる:羅漢は緑青館の鳳仙のもとへ通い、対局を重ねる
- 羅漢が地方へ赴く:鳳仙の妊娠を知らないまま、二人の連絡が途絶える
- 三年後に戻る:羅漢は緑青館で拒まれ、二人は再会できないまま年月が過ぎる
- 猫猫との賭けに負ける:羅漢は緑青館の妓女を一人身請けすることになる
- 歌声から鳳仙へたどり着く:梅梅が開けた扉の先から歌が聞こえ、再会につながる
羅漢は、鳳仙がすでに亡くなったと思っていました。だから第24話の出会いは、昔の恋人を選び直すだけではありません。もう会えないはずの人が、そこにいた。
羅漢と鳳仙の離別から第24話での身請けまでには、長い年月が流れています。事情を知らずにいた羅漢の後悔と、鳳仙が負った傷。会えた喜びのそばに、どちらも残っています。
羅漢を可哀想と思う時、鳳仙の時間も一緒に考えたいです。戻れなかった側の後悔と、待ち続けた側が失ったものは同じではない。再会はうれしいのに、手放しでは喜べない。
鳳仙へつないだのは、梅梅が開けた扉と歌声
身請け相手を選ぶ場で、羅漢は梅梅の手を取ろうとします。その時、梅梅が扉を開き、歌声が届く。ずっと会えなかった相手へ、梅梅がそっと導いてくれるんですね。
第24話「壬氏と猫猫」では、梅梅の開けた扉から聞こえる歌声が転機になります。梅梅が別の相手へ導いてくれたから、羅漢は鳳仙に会えたのです。
軍師なら全てを知っているように見えるのに、いちばん大切な人が近くにいることには気づけなかった。人を読む才能があるからこそ、この取りこぼしが痛いです。
鳳仙は、羅漢と碁を打ってきた相手です。病で容姿が変わっても、その時間まで失われたわけではない。羅漢がまた碁を打とうと誘う姿に、かつての二人が重なります。
病を治せるわけでも、失った年月を巻き戻せるわけでもない。それでも、会えた相手ともう一度向き合う。その小さな行動が、羅漢の大きな肩書より胸に残ります。
羅漢の過去に焦点を当てた公式Web特別PV「羅漢編」も公開されています。最初に警戒した相手の過去を知ると、壬氏への絡み方まで、もう一度見たくなります。
二人の過去は、猫猫の家族の話でもあります。猫猫の小指と鳳仙の指切りまでつなぐと、身請けのうれしさだけで終われない理由が、さらに見えてきます。
第24話の放送開始時、アニメ公式Xも羅漢の物語に注目するよう呼びかけていました。猫猫と壬氏のやり取りを楽しみにしていた人まで、この父親の過去に引き込まれる終盤です。
あんなに胡散臭かった羅漢が、鳳仙の前では一途な男になる。かっこいい、と言いたくなるけれど、その一言だけでは残った痛みまで抱えきれません。
鳳仙との再会へ至る過去は、原作小説2巻でも描かれます。アニメで身請けに心を動かされたあとなら、離れ離れになった二人の事情を、文章でもたどりたくなります。
羅漢はいいやつ?猫猫がうざいと感じる理由と、父娘の距離感
羅漢は、愛情深い面を持つ一方で、猫猫には厄介な父親です。羅漢を好きになった読者と、羅漢に近づきたくない猫猫が、同じ気持ちになる必要はありません。
鳳仙との再会に胸を打たれると、猫猫も少し優しくしてあげて、と思いたくなりますよね。でも、娘が見てきた家族の事情は、恋人を思う羅漢の物語と完全には重なりません。
| 相手・立場 | 羅漢との間で起こること | すれ違う点 |
|---|---|---|
| 猫猫 | 引き取りたい父と、距離を置く娘が向き合う | 父の愛情だけでは、娘が親しくなる理由にならない |
| 壬氏 | 羅漢に猫猫をめぐって絡まれる | 仕事の会話に、父親の私情が入り込む |
| 鳳仙 | 長い別離のあとで再会し、身請けされる | 愛情が続いていても、失った年月や病は消えない |
誰にとっての「いいやつ」なのかで、答えは変わります。助けられた場面だけを見る人と、日々絡まれる人では、同じ人物でも見え方が違う。
とくに猫猫にとって父親と呼べる存在は、育ててくれた羅門です。血のつながりを知ったからといって、それまでの暮らしや、養父への信頼が上書きされるわけではありません。
実父と養父の関係をたどると、猫猫の出生と家族の事情が、羅漢への態度につながります。羅漢を認めることが、羅門に育てられた日々を置き換えることにはなりません。
猫猫は羅漢を恨んでいない。それでも苦手な理由は?
人の顔を見分けにくく、鳳仙には会えず、娘にも拒まれる。羅漢を可哀想と思う場面はあります。それでも猫猫の反応を聞くと、父娘の隔たりを過去への恨みで片づけられないと分かります。
第24話で壬氏は、猫猫が羅漢を恨んでいると思っていたと話します。ところが猫猫は、恨みが理由ではないと説明する。ここを知ると、二人の仲を単純な憎しみでは捉えられません。
猫猫は、羅門の娘になれたことには羅漢への感謝もあると明かします。嫌っているから恨んでいる、とは限らない。猫猫の気持ちは、その二つを分けています。
羅漢の鋭い勘に、猫猫自身が及ばない悔しさもあります。面倒事を人に押し付けつつ、問題を解いてしまう。実力を認めているからこそ、なおさら鼻につく。親バカだけが嫌がられる理由ではありません。
桐本拓哉さんは公式対談で、後の印象の反転を見据え、怪しさとそれ以外の面を意識して演じたと語っています。最初の警戒心も、その後の見え方へつながっていたんですね。
事情を知ってから見直すと、壬氏への嫌がらせには親バカぶりが透けて見えます。一方で、猫猫の冷たい返事にも納得してしまう。父親の気持ちが分かったあとまで、娘とのすれ違いが可笑しい。
羅漢の年齢や地位まで知りたくなったら、羅漢のプロフィールと「変人軍師」の素顔へ。立派な肩書を持つ人物が、家族の前でどれだけ不器用なのか、その落差も見えてきます。
かっこいい場面があっても、困った言動まで正しくなるわけではありません。欠点を残したまま、助ける姿と一途さを好きになる。それくらいの距離が、羅漢には似合います。
父親に惚れ直すことと、娘へ「許してあげて」と迫ることは別。羅漢も猫猫も、どちらか一人だけの事情で片づけたくない親子です。
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まとめ|羅漢のかっこよさは、軍師の実力と一途な愛情にある
羅漢がかっこいいのは、人を見抜く才能を大切な相手のために使い、姿が変わった鳳仙にも向き合うからです。不器用で面倒な人物のまま、頼もしく見える瞬間があります。
羅漢の魅力は、才能があるのに、人生で大切なことを取りこぼしてしまうところにもあります。だから鳳仙との再会は、成功した軍師の話ではなく、一人の人がもう一度向き合う話として響く。
最初は、猫猫へ近づくのをやめてほしかった男。最後には、鳳仙と過ごす時間が続いてほしくなる。こんなふうに見方を揺さぶる父親、なかなか忘れられません。
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