『歴史に残る悪女になるぞ』のアリシアが片目になったのは、目の見えない恩師ウィルへ、自分の左目を魔法で譲ったからです。アニメでは第8話で描かれます。
アリシアは悪女に憧れ、勉強も鍛錬も積み重ねる令嬢。その力を大切な人のために使う一方、周囲から向けられる心配には戸惑ってしまいます。
大きな決断はできても、周囲がどう受け止めるかまでは思いどおりにいかない。片目の出来事には、そんなアリシアの格好よさと危うさが一緒に表れています。
この記事はアニメ第9話までの人物描写を中心に、原作Web小説の関連場面も扱います。アニメの先の展開は、該当箇所の直前に示します。
アリシアはどんな人?「悪女」のために知識も力も磨く努力家
ウィリアムズ・アリシアは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生した主人公です。憧れの悪女に近づこうと、頭のよさと強さを自分で身につけていきます。
アニメ第1話では7歳の朝に前世の記憶を自覚します。ここで始まるのが、悪女になるための本気の努力です。
悪女になる準備といっても、まずは筋トレ。人を出し抜く前に、自分の体を鍛えるところから始めるのが、なんともアリシアらしい。
憧れの姿を思い浮かべるだけなら、楽なはずです。けれどアリシアは、「なりたい自分」に必要なものを、毎日の行動へ落とし込む。その積み重ねが、後の大きな決断を可能にします。
| 場面 | アリシアが選んだこと | 性格が見える点 |
|---|---|---|
| 第1話 | 憧れていた悪役令嬢として生きようと決める | 他人の評価より、自分の理想が先にある |
| 第2話 | 本の知識だけでなく、ロアナ村へ足を運ぶ | 知らない現実を見に行く |
| 第4話 | リズの監視役を引き受け、魔法学園へ入る | 聖女のライバルという立場にもひるまない |
| 第7~8話 | 父の条件を受け入れて修行し、15歳で戻る | 高い目標を掲げたまま終わらせない |
特に好きなのは、知ったつもりのままで終わらないところです。ロアナ村のような場所へ出向けば、机の上で考えたことが通じないかもしれない。それでも行く。
第2話のロアナ村訪問は、知識を実地の経験へつなぐ一歩でした。後に目を譲るウィルとの関係も、この場所で育っていきます。
レベル90を目指す修行と、Web版で明かされる到達点
アニメ第7話で父が出したのは、リズの監視役を続けるなら魔法レベル90まで上げるという条件です。アリシアは小屋に籠もり、修行を始めます。
父との約束は、アリシアがやりたい役目を続けるためのもの。強いから自由なのではなく、自由に動くために力を求める順番です。
原作Web版で明かされる到達レベルは91。父との約束は90だったのに、一つ上まで。悪女を目指している子の成績表が、妙に優秀です。
ただ、才能だけで苦労なく進んだわけではありません。原作Web版第112話でアリシアが振り返る2年間には、修行をやめたくなる時も、独りで過ごすつらさもありました。
アリシアの自信は、できるまで続けた時間の上にある。大きなことを言う姿が頼もしく見えるのは、その裏の地道さがあるからでしょう。
中村カンナさんも公式キャストコメントで、アリシアの有言実行ぶりと努力家な面を挙げています。まっすぐさは、演じ手も捉えている持ち味です。
幼い頃から悪女を真剣に目指す姿は、公式のアリシアPVにもまとまっています。大きな目標を口にする、その勢いから入りたい人にぴったりの一本です。
アリシアが片目を譲った理由|ウィルに向けた信頼と決断の重さ
片目を譲った相手は、ロアナ村でアリシアに知恵を授けてきたウィルです。慕う人に再び景色を見てほしいという願いを、自分の魔法でかなえました。
アニメでは第8話「悪女と大復活」の出来事。修行を終えた15歳のアリシアは、ロアナ村へ向かいます。
ウィルは、アリシアが知らない世界を教えてくれる人です。彼に向かうときのアリシアを、「誰にでも強気な令嬢」の一言では片づけられません。
原作Web版第110話では、再会を見ていたジルが、ウィルの前のアリシアに少女らしさを感じています。悪女らしく見せる顔を、ずっと作り続けているわけではないんですね。
| 確かめたいこと | 片目を譲った場面の答え |
|---|---|
| 誰の目を、誰へ? | アリシアの左目を、目の見えないウィルへ譲る |
| アニメではいつ? | 第8話。2年間の修行を終えて村へ戻った後 |
| 使った力は? | 魔法による譲渡。原作Web版では古語を用いる魔法として描かれる |
| 人物像として何が見える? | 相手への深い信頼と、自分の体に負担を引き受ける決断 |
魔法が成功した後、ウィルが初めてアリシアの顔を見る。その反応があるから、目を譲る行為は能力の披露で終わりません。相手に何を届けたかったのかが伝わってきます。
原作Web版第111話では、ウィルが涙を見せる一方、ジルはアリシアが見返りを求めていないと受け止めています。
ウィルが頬へ伸ばす手は震えています。初めて見えたアリシアの顔を、手でも確かめる。大きな魔法の後に、こんなに静かな喜びが来るんですね。
格好いい決断でも、アリシアの負担は消えない
だからといって、片目を譲ったことを無条件に美談にはしたくありません。助けられた人が喜ぶことと、アリシア自身の負担がなくなることは別です。
原作Web版第112話のアリシアは、左側が見えず、距離感をつかみにくいと感じています。森では何度もつまずき、足元の感覚の違いも思い知ります。
眼帯姿を悪女らしいと気に入る前向きさは、確かに彼女の持ち味です。でも、本人が笑って受け止められるからといって、周りまで簡単に安心できるわけではない。
「できる」と「大丈夫」は同じではない。アリシアの決断力が強いほど、心配する人は追いつけなくなる場面でもあります。
それでも、この場面で目を譲ったこと自体を悔やむ様子はありません。困ったことを数えているのに、恩返しを取り消す話にはならない。そこは揺らがないんだ、と驚かされます。
目は戻る? 原作Web版では条件とその後が描かれる
※ここからの2段落は、アニメ第13話より先に当たる原作Web小説第424話までの重大な展開に触れます。
Web版第111話では、譲った相手が亡くなると目が戻る条件が示されます。第424話では実際に左目の視界が戻り、アリシアはウィルとの別れを悟ります。
戻ったからよかった、とは言えない場面です。見える範囲が広がった瞬間に、大切な人を失ったと知る。アリシアの涙に、目を譲った日のウィルの涙が重なります。
以上は原作Web版の展開です。アニメ第8話の決断を読む際は、この先の出来事と区別しておくと、当時のアリシアと周囲の気持ちを追いやすくなります。
デュークの前では不器用|決める強さと、好意を受け止める難しさ
アリシアは自分の目標には迷いが少ない一方、デュークから向けられる強い想いには戸惑います。片目の件は、二人が何を大切にしているかの違いも浮かび上がらせます。
第8話でデュークの想いをはねのけた後、第9話のアリシアは、彼が自分にとってどんな存在なのか考え始めます。相手を遠ざけたまま終わらないところが大事です。
悪女らしく振る舞う方法なら、いくらでも考えられる。ところが、好きだと言われた側の自分をどう扱えばいいのかとなると、急に難しくなる。
目標に向かって一直線だったアリシアの中に、自分でもすぐに言葉にできない気持ちが入ってきます。ここでは魔法のレベルを上げても、答えは出ません。
| 場面・媒体 | 気持ちが動く出来事 | 注目したい変化 |
|---|---|---|
| アニメ第8話 | デュークの強い想いを、アリシアがとっさにはねのける | 決断力のある彼女も、好意には戸惑う |
| アニメ第9話 | アリシアが、自分にとってのデュークの存在を考え始める | 拒んだときの自分の気持ちへ向き直る |
| 原作Web版第126話 | 兄ヘンリは、目の譲渡を聞いてアリシアの判断を尊重する | 同じ決断でも、近しい人の受け止め方は違う |
アリシアの体について決めるのは、アリシア自身。そのうえで、大切な人が自分の体を犠牲にしたと知った側が、平静でいられないのも分かります。
どちらかが全部折れれば丸く収まる、という話でもないんですよね。守りたい気持ちが、相手の望む守られ方とは限らないので。
「強いから放っておく」とも違う距離感
原作Web版第126話では、兄ヘンリがようやく目のことを尋ねます。遅さに驚くのは、アリシアより先にジル。重い話の入り口なのに、そこは突っ込まずにいられないらしい。
ヘンリは、言いたくなければ答えなくていいと先に伝えます。アリシアは、彼なら話しても大丈夫だと考え、目を譲ったことを自分から明かします。
兄は驚きながら頭をなで、彼女自身の体だからと判断を尊重します。ただ、デュークなら怒ると予想すると、すでに怒られたとの返事。同じアリシアを大切に思っても、こうも違う。
デュークとの恋愛では、突っぱねた後の迷いまで追うと、アリシアの違う顔が見えてきます。王子の側は、デュークの人物像とアリシアとの関係でも掘り下げています。
ジルやリズとの関係から見る魅力|肩書きより行動に目を向ける
アリシアの周りに信頼が生まれる理由は、悪女という肩書きだけでは説明できません。相手の知恵を認め、現実に動く姿を見せてきたことが、人とのつながりになっています。
ウィルは貧しい村の人だからと軽く扱われず、アリシアが教えを求める相手になります。助ける側と助けられる側が、いつも固定されているわけではありません。
ウィルが知恵を授ける一方、ジルは魔法を使えなくても、頭のよさでアリシアを支える少年です。彼女のそばには、違う強みを持つ人がいます。
| 人物 | アリシアとの関係で注目したいこと | 見方が変わる点 |
|---|---|---|
| ウィル | アリシアが知恵を学び、片目を譲る相手 | 恩返しの前に、教わってきた時間がある |
| ジル | 彼女を支え、その変化を近くで見ている | 強いアリシアにも、気づかいを受け取る側の顔がある |
| レベッカ | ウィルとともに村を良くしようと動く | 村の変化はアリシア一人の仕事ではない |
| リズ | 監視役として向き合う聖女 | 肩書きの良さだけで、言動の結果は決まらない |
ジルの眼帯は、小さくても確かな気づかい
原作Web版第112話で、目を譲ったアリシアに眼帯を作って渡すのはジルです。大きな魔法の出来事のすぐ後に、手で作ったものが届く。ここがいい。
アリシアは、その短時間で作った器用さに驚きます。ジルは少し照れながら渡すだけ。相手の役に立つことをしても、大仕事だったと見せないところは、どこか二人で似ています。
眼帯を着け、鏡をのぞくアリシア。大切な人のために目を譲った彼女が、今度は自分を思ってくれる人の手仕事を受け取る番になります。
本人は眼帯の悪女らしさを気に入るけれど、その眼帯はジルの手作り。装いにまで、仲間の優しさがついてくる。
村を変えた人たちの働きも見逃せない
原作Web版第111話では、アリシアの不在中にウィルとレベッカが村の改善へ動いていたと分かります。アリシアが戻ってきて初めて、全員が動き出すわけではありません。
レベッカは、治安が良くなったのは主にウィルのおかげだと話します。ただ、悪いことをする人々は村の奥へ移り、良い地域と悪い地域に分かれている。理想郷への道は、まだ遠い。
しかも、この改善は目を譲るより前のこと。ウィルは目が見えない間から人を導いてきたんですね。恩返しの相手が成し遂げてきたことを知ると、アリシアの決断も違って見えます。
リズとの対比は「善人と悪人」だけでは割り切れない
アニメ第4話で、アリシアは聖女リズの監視役を引き受けます。本人にとっては、憧れの悪役令嬢にふさわしい立場でもありました。
ただ、聖女だから言うことがすべて正しく、悪女だから間違っているとは決まりません。アリシアを見る面白さは、言葉の響きと、その後に起こることの差にもあります。
原作Web版第119話でメルが評価するのは、アリシアが実際に村へ行き、行動していること。リズの理想と比べ、現実を変えようとする姿を買っています。
ただし、メルはリズを好いておらず、デュークの従者でもあります。味方からの評価には、味方なりの立場がある。その言葉だけで、リズのすべてを決めつけたくはありません。
この会話で、もう一つ好きなのがメルの謝り方です。彼女はアリシアへひどい言葉を向けたことを謝り、アリシアは、自分の間違いを認めて謝れるのはすごいと感心します。
嫌な言葉を向けてきた相手でも、謝る姿勢にはきちんと感心する。悪女を目指しているわりに、こういうときの人の見方はずいぶん素直です。
アリシア自身も、デュークをはねのけた後で自分の気持ちへ向き直ります。他人の謝罪に感心する彼女が、自分の戸惑いとはどう折り合うのか。強くなった後にも、難しいことは残るんですね。
まとめ|片目の理由に表れる、アリシアの強さと不器用さ
アリシアが片目になったのは、慕うウィルへ左目を譲ったためです。その決断には、努力で身につけた力と相手への信頼、周囲の心配まで抱えきれない不器用さが表れています。
強くなれば、一人で何でも決められる。アリシアはそんな勢いで進んでいくけれど、彼女を大切に思う人の気持ちは、本人の予定どおりにはいきません。
だから、片目の出来事を読み返すなら、決断するアリシアと、その決断を受け取った人の顔を一緒に追いたい。悪女を目指す物語の中で、関係が深くなる瞬間です。
勉強も鍛錬も、悪女になるため。なのに積み上がっていくのは人との縁。アリシア、努力は実っているんです。本人がつけた名前とは、少し違う形で。
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