『メダリスト』の結束いのり(ゆいつか いのり)は、天才です。ただし、生まれつき何でもできるタイプの天才ではありません。
小学5年生でようやくクラブに入った少女が、約1年後の全日本ノービスで4回転サルコウを2本着氷させる。この成長速度そのものが、いのりの才能です。
それなのに、結果は4位。表彰台まで0.52点足りませんでした。原因は、最後に自分で選んだ3回転アクセルです。
4回転を2本降りて、表彰台を逃す。しかも逃した理由が「もっと上を狙ったから」。天才かどうかを語るなら、この負け方まで見ないと始まりません。
※この記事は原作コミックス9巻(全日本ノービスA)までの結果を含みます。アニメでは2027年2月19日公開の劇場版で描かれる範囲です。
この記事でわかること
結束いのりは天才か?答えは「才能の出方が異常」
いのりは天才です。ただしその中身は、恵まれた環境ではなく、遅れて始めた不利を1年で覆した成長速度にあります。
そもそも出発点がひどい。いのりはクラブにも入れず、リンクで独学で滑っていた小学5年生でした。周りからは「できない子」として扱われていました。
フィギュアで世界を目指すなら5歳から、と言われる競技です。11歳の本格スタートは、どう見ても遅い。その子が1年後、全国の頂点争いのど真ん中にいるんですよ。
しかも第1話のタイトルが「氷上の天才」。まだ1回転もまともに跳べない子の物語を、作品はいきなりこの言葉で始めています。
1話の時点では、正直ちょっと大げさに聞こえます。でも全日本ノービスまで追うと、あれは看板じゃなくて予告だったと気づかされるんです。
公式の自己紹介動画で、春瀬なつみさんの声のいのりが名乗る姿を見てから本編へ戻ると、この子が4回転を跳ぶ未来がますます信じられなくなります。
「化け物」と言われる理由は、得意を伸ばす速さ
いのりが「化け物」とまで言われるのは、苦手を全部つぶしてから前へ進むタイプではないからです。得意なものを、周りの想像より速く上の段階へ押し上げます。
- サルコウが得意で、3回転サルコウの着氷がかなり安定していた
- その得意ジャンプを、4回転の土台に選べた
- 本番で勝つためなら、演技中に構成を上げる判断までする
逆に、3回転ルッツは長く苦しんだジャンプです。怪我への怖さから踏み切りで体が緩み、うまく跳べませんでした。弱点がないから強いわけではないんです。
弱点を抱えたまま、得意で天井を突き破る。
この形が、後の全日本ノービスでそのまま天国と地獄になります。4回転サルコウは決まり、ルッツで転ぶ。いのりの才能と危うさが、一つの演技に全部出るんです。
小さい頃から自信がなく、家族にも心配されてきたいのりの素顔や姉・実叶との関係を知っていると、この大胆さの落差にもっと驚かされます。
結束いのりの戦績一覧|名港杯初級から全日本ノービス4位まで
ノービス時代のいのりは、出るたびに一段上の舞台へ上がっていきます。得点を並べてみると、笑ってしまうくらい線が急です。
| 時期 | 大会・クラス | 順位・得点 |
|---|---|---|
| 小5・11歳 | 名港杯 初級 | 1位・12.64点 |
| 小5・11歳 | 西日本小中学生大会 1級 | 2位・24.32点 |
| 小6・12歳 | 名港杯 5級 | 1位・58.19点 |
| 小6・12歳 | 中部ブロック大会 ノービスA | 1位・81.20点 |
| 小6・12歳 | 全日本ノービス ノービスA | 4位・109.88点 |
初試合の12.64点から、全日本の109.88点まで。点数は8倍以上。クラスも初級からノービスAの全国大会まで一気に上がっています。
初めての名港杯では、1回転のジャンプでも転んでいました。そこから1年ほどで、全国の舞台で4回転を跳ぶ。書き出すと冗談みたいな経歴です。
西日本小中学生大会の2位も大事です。自分では完璧に滑ったのに、さらに上の演技をされて負けました。初めてのメダルが、悔しさと一緒に来たんです。そのとき滑ったのが、この「木星」でした。
中部ブロック大会1位の81.20点が、全国への切符になった
全日本ノービスへ行くには、まずブロック大会を勝ち抜かないといけません。いのりは中部ブロックのノービスAを、81.20点の1位で抜けました。
アニメ2期の第17話「下剋上」の演技です。体力が落ちる後半に、2回転アクセルからオイラー、3回転サルコウへつなぐ連続ジャンプを入れてくる。ノービスAの女子がですよ。
そして全日本では、この81.20点から約29点も上積みします。ブロック大会から全国までの短い期間で、構成そのものが別物になりました。
同じ中部ブロックでは、八木夕凪の演技も会場を揺らしました。アニメ16話の八木夕凪の80点超えを見た後だと、いのりの1位がどれだけ際どい勝負だったか分かります。
ブロック大会で「勝てる子」になった直後、いのりは4回転という武器を取りに行きます。中部ブロックの逆転劇から新潟での4回転初着氷までを漫画で追うと、1話ごとに別人になっていくのが分かります。
4回転サルコウはいつ成功した?初着氷は新潟、本番は全日本ノービス
いのりが初めて4回転サルコウを降りたのは、原作score26です。アニメでは2期第21話「熱血」、新潟での練習中でした。本番で決めたのは全日本ノービスのscore34です。
- ルッツで行き詰まる:怪我への怖さから、3回転ルッツの踏み切りで体が緩んでしまう
- 魚淵の提案:苦手なルッツより、得意なサルコウを4回転へ伸ばす道を示される
- 初めての着氷:原作score26、アニメ第21話で4回転サルコウを初めて降りる
- 公式練習で着氷:全日本ノービスの公式練習で成功させ、他チームが作戦を練り直す
- 本番で2本:score34で冒頭の4回転サルコウ+2回転トウループと、単独の4回転サルコウを決める
面白いのは、4回転へ行く理由が「すごい技を覚えたいから」ではないところです。ルッツという苦手で止まっていたから、得意の側から壁を越えに行く。
4回転サルコウは基礎点9.70点のジャンプです。3回転の苦手を一つ直すより、得意を一つ上げる方が点数も大きく動きます。
ただ、初着氷の段階ではまだ試合で使える精度ではありませんでした。一度跳べたことと、本番の空気で跳べることは別物です。
公式練習の1本で、会場の空気が変わった
全日本ノービスの公式練習で、いのりは4回転サルコウを成功させます。その瞬間、会場のカメラと視線がいのりへ集まり、他チームのコーチが作戦を練り直し始めました。
ついこの前まで、クラブにも入れなかった子ですよ。その子が1本跳んだだけで、全国のライバル陣営が計算をやり直す。ここ、読んでいて鳥肌が立ちます。
でも「練習で跳べた」は、本番の保証にはならない。見ている側まで、うれしさと怖さが半分ずつになる場面です。
現実のノービス女子でも4回転は跳ばれている
「12歳の女子が4回転なんて漫画の話でしょ」と思う方もいるかもしれません。ところが現実でも、島田麻央選手が2021年3月、12歳で4回転トウループを成功させています。
もちろん、スケートを本格的に始めて約1年で跳ぶのは、いのりならではの誇張です。それでも「女子ノービスの4回転」そのものは、現実にもう起きていることなんです。
全日本ノービスの演技|4回転2本、ルッツ転倒、そして最後の3回転アクセル
全日本ノービスのいのりは、4回転サルコウを2本決めた後に3回転ルッツで転倒します。そこから最後のジャンプを3回転アクセルへ上げ、着氷まで持っていきました。
先に滑ったのは狼嵜光です。4回転トウループを入れ、ラストに3回転アクセルまで決めてノーミス。128.98点。他の選手が束になっても届かない数字です。
こんなものを先に見せられたら、安全策でまとめても優勝はありません。だからいのりと司は、4回転を2本入れる構成で真正面からぶつかりに行きます。
| 順番 | いのりのジャンプ | 結果 |
|---|---|---|
| 冒頭 | 4回転サルコウ+2回転トウループ | 着氷 |
| 2本目 | 4回転サルコウ | 着氷 |
| 3本目 | 3回転ルッツ | 転倒 |
| 最後 | 3回転アクセル(演技中に変更) | 着氷、ただしダウングレード |
題名そのままのscore34「4回転サルコウ」で、いのりは冒頭から2本続けて4回転を降ります。この時点で、基礎点の上では光を上回りました。
ここで優勝が見えた、と思った瞬間に落とすのが『メダリスト』です。3本目の3回転ルッツ。こっそり練習してきた、あの苦手なジャンプで転んでしまいます。
よりによってルッツ。4回転へ向かうきっかけになった、あの苦手で転ぶんですよ。うまくいきすぎていた流れが、ここで一気に冷えます。
「全世界 私に賭けろよ!」で、最後のジャンプを変えた
転倒で失った点を取り返すために、いのりは演技の途中で最後のジャンプを変えます。選んだのは、光がラストに跳んだのと同じ3回転アクセルでした。
その直前、いのりは心の中で怖さを認めています。負けたら罰を受けるから大丈夫、と自分に言い聞かせて、最後に叫ぶ。それがscore35「レベル4」の名台詞です。
「全世界 私に賭けろよ!」
自分に自信がなく、「できない子」と言われてきた子が、全世界に自分へ賭けろと言う。内罰的な気持ちを抱えたまま前へ出る、この危うさがいのりなんです。
score35「レベル4」で、いのりは3回転アクセルを降りて演技を完走します。判定を待つ間まで、読んでいる側の心臓がもちません。
ただ、ここで拍手だけでは終わらないのが残酷なところです。着氷したはずの3回転アクセルは、回転不足でダウングレード。これが順位を決めてしまいます。
全日本ノービス4位の理由|109.88点の内訳と、表彰台まで0.52点の差
いのりが4位になった理由は、3回転ルッツの転倒と、最後の3回転アクセルのダウングレードです。
ノービスAの全日本はフリーだけの一発勝負です。ショートで取り返す場面がないので、一つのミスがそのまま順位に響きます。
| 順位 | 選手 | 得点 |
|---|---|---|
| 1位 | 狼嵜光 | 128.98点 |
| 2位 | 鹿本すず | 110.55点 |
| 3位 | 胡荒亜子 | 110.40点 |
| 4位 | 結束いのり | 109.88点 |
| 5位 | 八木夕凪 | 105.43点 |
2位から4位までが、わずか0.67点の中にいます。3位との差は0.52点。ミスが一つ軽ければ、表彰台に届いていた点差です。
一方で、演技構成の基礎点はいのりが64.67点、光が62.97点。難しさの上では、いのりが優勝者を上回っていました。
つまり、いのりは「難しい技が足りなくて負けた」わけではありません。一番難しい構成を組んで、決めきれなかった分だけ負けた。ここが悔しいところです。
3回転アクセルを跳ばなければ、表彰台には届いていた
安全なジャンプのまま最後を終えていれば、表彰台には乗れていた計算です。3回転アクセルの賭けが、そのまま4位への分かれ目になりました。
ただし、仮に3回転アクセルを完璧に決めても、光の128.98点には届きません。優勝との差は、ジャンプ一本で埋まる距離ではありませんでした。
いのりが欲しかったのは表彰台ではなく1位です。2位や3位を確実に取る道は、最初から選択肢に入っていませんでした。
表彰式では落ち着いて見えたいのりも、後から感情があふれます。そこで出てくる本音が、1位だけが欲しかったという気持ちでした。
4位で満足できない子だから、あの3回転アクセルを跳んだんですよね。負けた理由と、この子が強くなる理由が、まったく同じ場所にある。
光との差は「決めきる完成度」にあった
光の強さは、4回転トウループと3回転アクセルを入れたうえでノーミスだったことです。いのりは転倒と回転不足で点を落とし、合計では約19点離されました。
難しさでは勝った。完成度で負けた。
この約19点こそ、前年の金メダリストが積み上げてきたものです。勢いで一晩に詰められる差じゃないのが、また悔しい。
狼嵜光という「天才少女」の人物像を知ってから読むと、この128.98点がただの高得点ではなく、光の生き方そのものに見えてきます。
2本の4回転、ルッツでの転倒、そして叫びながら跳ぶ3回転アクセル。score34から結果発表まで一気に読むと、4位の数字の重さがまるで変わって見えます。
アニメは何話まで?4回転の本番は劇場版で描かれる
アニメ2期で描かれたのは、中部ブロック大会から4回転サルコウの初着氷、全日本ノービスの開幕までです。本番の4回転2本と4位の結果は、まだ映像化されていません。
- 2期第17話「下剋上」:中部ブロック大会で81.20点の1位
- 2期第21話「熱血」:新潟で4回転サルコウを初めて着氷
- 2期第22話「開幕」:全日本ノービス大会が始まる(2期最終回)
- 劇場版(2027年2月19日公開):全日本ノービス大会の本番
2期の最終回で全日本ノービスが開幕し、いよいよ光との直接対決、というところで次はスクリーンへ。アニメ勢にとっては、ここからが一番の山場です。
劇場版『メダリスト』は2027年2月19日公開。いのりと司が、光と夜鷹純に挑む全日本ノービス大会が描かれます。
公式Xも、2期最終回の直後に「全日本ノービス大会、開幕。」の一言で劇場版を告げています。あの4回転2本とルッツの転倒が動いて見られると思うと、今から落ち着きません。
劇場版まで待つ間に、1期・2期の放送時期と劇場版の公開日を押さえておくと流れがつかみやすいです。新潟での初着氷をもう一度見たくなったら、2期を見放題で見られる配信サービスからどうぞ。
原作で結果を知っていても、あの「全世界 私に賭けろよ!」に声が付くのは別物です。春瀬なつみさんがどう叫ぶのか、それだけで劇場へ行く理由になります。
結束いのりの天才性についてよくある質問
最後に、戦績や4回転を調べた人が気になりやすい点に答えます。
Q. いのりの4回転と全日本ノービスの結果は何巻で読める?
初めての4回転サルコウはコミックス7巻のscore26です。全日本ノービス本番の4回転2本と4位の結果はコミックス9巻に入っています。
Q. 全日本ノービスの後、いのりはどうなる?
4位の悔し涙の後、物語はいのりのジュニア1年目へ進みます。Bランクの強化選手に選ばれ、ジュニアグランプリの舞台で戦い始めます。
全日本ジュニアでは苦い結果も味わいますが、それでもジュニアグランプリファイナルの舞台まで勝ち上がります。ノービスの4位は、終わりではなく助走でした。
Q. いのりに実在のモデルはいる?
特定の選手をモデルにしたという発表はありません。ただ、女子ノービスの4回転は現実にも島田麻央選手が成功させていて、いのりの成長は現実の技術の進化と地続きです。
まとめ|結束いのりは、負け方まで天才だった
結束いのりは、遅い出発から約1年で全日本ノービスの4回転2本までたどり着いた天才です。そして、その才能が一番はっきり出たのが、4位に終わった演技でした。
安全に跳べば表彰台、攻めれば4位。いのりは迷わず攻める方を選びました。1位以外に意味がないと本気で思っているから、あの3回転アクセルを跳べたんです。
ルッツで転んだ直後に、さらに難しいジャンプを選べる。点数には表れないこの強さが、いのりを「天才」と呼びたくなる一番の理由です。
第1話の「氷上の天才」は、4回転を跳ぶ子という意味だけじゃなかった。転んでもなお全世界に賭けさせる子、という意味だったんだと思います。
いのりの執念に当てられて、もっと熱い作品に浸りたくなった方は、『メダリスト』みたいなアニメ・漫画もどうぞ。師弟と執念の物語が、まだまだあります。
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