『薬屋のひとりごと』(薬屋)の天祐(ティンユウ)と燕燕(エンエン)は、両思いの恋人同士ではありません。天祐は誘いをかけますが、燕燕が何より優先するのは、姚(ヤオ)です。
ただ、天祐のしつこさを一途な恋だけで受け取ると、後の独白に驚かされます。一方、羅半兄(ラハンアニ)が燕燕に惹かれるきっかけは、派手な告白ではなく、名前を添えたお礼でした。
壬氏(ジンシ)には丁寧に仕えても、姚から離れる原因になれば容赦がない。同じ燕燕を見ているのに、相手ごとに気持ちの向きがずいぶん違うんです。
※原作小説の先の展開と、Web版「疱瘡編」までのネタバレを含みます。Web版と書籍版では、展開や細かな描写が異なります。
| 人物 | 燕燕との接点 | 気持ちを読むときのポイント |
|---|---|---|
| 天祐 | 同じ医局で働く医官 | 燕燕を誘うが、後には主従の関係を揺さぶる好奇心も語る |
| 姚 | 以前から仕えてきたお嬢さま。医局では同僚 | 燕燕の行動の中心。ただし、望む世話や距離まで常に一致するわけではない |
| 羅半兄 | 姚をめぐる騒動で助けとなる相手 | 本名で礼を言われて燕燕に惹かれる。燕燕の同じ気持ちとは別 |
| 壬氏 | 期間限定で仕えた皇弟 | 仕事では気を配るが、姚から引き離されたことには不満 |
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天祐と燕燕は両思い?誘いをかわす燕燕と、恋だけでは読めない天祐
天祐には燕燕の気を引こうとする態度がありますが、燕燕が恋心を返す関係ではありません。後の天祐視点まで進むと、関心の対象が燕燕一人で終わっていないことも分かります。
日向夏さんが公開した8巻までの設定では、天祐は「燕燕に気がある」と紹介されています。最初から恋愛と無関係だった、と片付けるのも違います。
食事の誘いより、日誌と姚の防寒が先
Web版「二十四、呼び出し」の仕事終わりでは、二人の優先順位が行動にはっきり出ます。
- 天祐が、仕事のあとに食事へ誘おうとする。
- 燕燕は日誌を出し、先に済ませるべき仕事を伝える。
- 姚には上着と襟巻を用意し、寒さを防ぐ。
- 天祐が手を振っても、燕燕は振り返らず姚の夕飯の話へ進む。
誘いの返事を待っている横で、お嬢さまの防寒が進んでいる。燕燕、話を受け流すときまで手が止まりません。
「二十三、まずい料理」では、あとで姚にも話せると天祐が誘います。猫猫(マオマオ)には、燕燕が話題を得るために付き合っているように見えています。
二人きりになれれば近づける、とは限らないんですよね。燕燕が聞く理由の先にも、やっぱり姚がいる。天祐も、そこを分かって話を振っています。
猫猫の推察と、天祐本人の独白は分けて読む
冷たくされてもめげないのは、そんなに燕燕が好きだから? 猫猫が疑うのは、むしろ冷たい返事を面白がっている可能性でした。
| いつ・誰の視点? | 天祐が向ける関心 | 恋愛とのつながり |
|---|---|---|
| 作者の8巻までの設定 | 天祐は燕燕に気がある | 初期の関心を示す紹介 |
| Web版「十六、選抜」 | 猫猫は、燕燕の冷たい反応が興味深いのかもしれないと考える | 猫猫の推察で、天祐の告白ではない |
| Web版「七、医務室勤務」 | 天祐は、姚と燕燕が仲たがいしたらどうなるかと、ちょっかいをかけた過去を振り返る | 天祐の視点から語られる動機 |
天祐自身の視点で語られるのは、仲たがいへの興味です。しかもその時点では、ほかに面白いことがあるから、もうどうでもいいという態度。
振り向いてほしいから頑張る、という恋の筋道だけでは追えません。二人の仲を崩した先まで見たがっていたのか。燕燕からすれば、ずいぶん迷惑な好奇心です。
初期の「気がある」は消えません。ただ、後の独白を読むと、一途な求愛だと安心して見守る気分にはなれない。燕燕の冷たい応対にも、前よりうなずきたくなります。
天祐の家系そのものを追う場合は、女華(ジョカ)の出自と天祐との続柄へ。燕燕への態度とは別のところでも、彼の人物像が広がります。
日向夏さんは2023年9月28日のXで、14巻の女華・天祐関連を詳しく読むならヒーロー文庫版を、と勧めています。Web版と書籍版は、細かな描写まで同じではありません。
天祐の内側にも視点が移る原作小説は、燕燕へのちょっかいを読み直したいときの入口になります。誘い文句の先で、何を面白がっている男なのかを追いたい。
燕燕と姚は主従で同僚|大切だからこそ、望む距離がすれ違う
燕燕は姚に仕えてきた侍女で、医局では一緒に働く官女でもあります。姚への思いは強いものの、世話をする側の満足と、姚が望むことは同じとは限りません。
「桃と燕燕」のお嬢さまは誰?正式表記は姚
「桃と燕燕」という表記で見かけるお嬢さまは、姚を指している場合があります。原作公式の人物名は姚(ヤオ)です。
「桃」は一部の感想やレビューに見られる表記です。字は似ていますが、姚の左側は女へん。燕燕にお嬢さまと呼ばれる彼女を探すなら、この字を覚えておくと迷いません。
二人の過去をにおわせるのが、Web版「十三、燕燕の小話」です。助けられた料理人と妹の話を語った燕燕が、姚へ笑みを向ける。猫猫は、その話に二人の事情を読み取ります。
普段の無表情より、この話をわざわざ選んで口にするところが気になる。姚が気恥ずかしそうにしているのも含めて、単なる昔話では済まない近さがあります。
一番にしたい燕燕と、一緒にやりたい姚
燕燕は姚が上に立てるよう立ち回ります。Web版「九、燕燕」で猫猫が察するのは、試験の答えをあえて外した可能性。燕燕が手口を明かしたわけではありません。
| 場面 | 燕燕がすること | 姚の側にある気持ち・反応 |
|---|---|---|
| 試験成績の話 | 自分が首席になることはないと返す。猫猫は手加減を疑う | 自分が首席になれなかったことを悔しがる |
| 台所での手伝い | 姚の申し出を断り、自分で片付けようとする | 手伝いたいのに断られ、むくれる |
| 猫猫の根詰めへの注意 | 姚が真似をするからと、猫猫を止める | 猫猫と一緒に蔵書の確認を進める |
特に好きなのは、姚が台所でむくれるところ。燕燕は楽をさせたい。でも、何もしなくていいと言われるほうは、ちっとも楽しそうじゃない。
根を詰める猫猫への注意も、理由は「姚さまが真似します」。心配してくれたのかと思ったら、見ている先は隣のお嬢さまでした。
猫猫を休ませる理由まで、お嬢さま経由なのか。
羅半への関心と、長紗が踏み込んだ転機
書籍版9巻では、実家に帰りたくない姚と燕燕が、紹介された羅半(ラハン)の家に泊まります。姚にとって、その屋敷はやがて簡単には離れがたい場所になっていきます。
13巻では、燕燕の不安と、姚の言動・心境のずれも描かれます。いつも相手の世話を先回りできる燕燕が、お嬢さまの心の行き先には困ってしまう。
猫猫たちの一年ぶりの帰還後、友人たちにも視点を配る原作小説13巻。ヒーロー文庫の公式PVは、尾丸ポルカさんのナレーションです。
Web版で、その行き詰まりへ踏み込むのが後輩の長紗(チャンシャ)です。「十七、長紗無双」では、姚を全肯定し続ける燕燕と、居候を続ける姚の両方に、遠慮なく疑問をぶつけます。
- 姚が羅半を気にして屋敷にとどまる一方、燕燕は引っ越しを望む。
- 長紗は、遠回しな注意だけでは現状が続くと燕燕へ指摘する。
- 姚が仕事のできる人として認められたいなら、家のことも覚えてはどうかと話が進む。
- 姚は甘えていたと認め、実家へ戻る方向で考える。
長紗は、姚の気持ちが恋なのか好奇心なのか、まだ本人にもはっきりしないことを踏まえて話します。いきなり恋の成就へ走らず、まず接し方と暮らし方を変えるという提案なんです。
同じ職場で同じ仕事をして、家では燕燕だけが家事をする。長紗はその不釣り合いまで突きます。そこまで言うのか、後輩。姚を守る話が、燕燕の負担の話にもなってきました。
翌朝の「十八、通り魔」では、姚は疲れながらもはにかみ、燕燕はげっそり。同じ恋話の翌朝なのに、顔がこうも違う。
原作小説13巻では、燕燕や姚の側からも日常が描かれます。猫猫の隣で何を考え、お嬢さまは誰に近づきたいのか。二人がそろっているだけでは分からない思いを追えます。
羅半兄と燕燕の恋は?本名で呼んだお礼が、思わぬ相手に届く
羅半兄が燕燕へ惹かれる転機は、姚をめぐる騒動のあとに訪れます。燕燕が俊杰(ジュンジェ)さま、と本名を添えて感謝した瞬間、彼の顔が赤くなるのです。
書籍版14巻でも、名持ちの一族の会合と羅半兄の恋が話題になります。Web版では「十九、付きまとい男」から「二十、心に響く銅鑼」へ続く場面が、その転機です。
姚を守ったのに、恋が向いた相手は燕燕
発端は、姚の意思を無視する結婚話です。Web版「十九、付きまとい男」で、羅半兄は男の横暴に反発。後見人の不在を狙うやり方にも、はっきり異を唱えます。
- 男が、姚の承諾を得ないまま結婚相手として紹介しようとする。
- 羅半兄が反論し、言い争いが決闘へ進む。
- 勝負に勝った羅半兄へ、まず姚が礼を言う。
- 続いて燕燕が、姚のために戦ってくれたことへ感謝し、本名を呼ぶ。
- 羅半兄が赤面し、猫猫と羅半が予想していた姚との恋とは違う方向へ動く。
Web版「二十、心に響く銅鑼」で、もう一度と言われた燕燕はお礼を繰り返します。羅半兄が聞きたいのは、その後ろの名前のほう。二人のずれ、ここでもう始まっています。
燕燕がこの時、彼を口説いたわけではありません。彼女が言葉にしたのは、あくまで姚のために尽くしてくれたことへの感謝。そのお礼が、羅半兄には別の大きさで届きました。
羅半兄の本名や、西都での働きまで知ると、通称で呼ばれ続けた人が名前を呼ばれる重みも増します。
その後は野菜を差し入れるが、燕燕の返事は仕事の話
Web版「十三、赤茄子」では、羅半兄が燕燕を見かけると身だしなみを整え、柱に寄りかかって声をかけます。なかなか張り切っている。ところが、そこから先が進みません。
| 人 | 話しかけるときの様子 | 会話の行き先 |
|---|---|---|
| 羅半兄 | 身だしなみを整え、野菜を勧める | 役に立つ作物の紹介を続ける |
| 燕燕 | 礼を言い、炊事場の横へ置いてほしいと頼む | 必要な食材や薬味の話になる |
| 姚 | 野菜への礼を言い、病人の世話について話す | 羅半兄が気負わず応じ、むしろ日常の会話が続く |
格好をつけたところまでは見ていたのに、決まったのは野菜の置き場所。羅半兄、そこからもう一つ、食材以外の話を。
燕燕は、姚と自然に話す羅半兄をじっと見定めます。野菜を受け取るだけだった彼女も、ここでは相手をよく見ている。
Web版「六、食堂」では、燕燕は自分目当ての相手を冷たく退ける人として語られ、猫猫は羅半兄を思い浮かべます。
羅半兄の恋は始まっていても、燕燕が同じ気持ちを返す場面ではありません。姚の相手として彼を見ている可能性もあり、この視線だけで両思いとは言えません。
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燕燕と壬氏の関係は期間限定の主従|丁寧な仕事と、姚をめぐる不満
燕燕は、期間限定で壬氏の付き人を務めます。恋愛相手として近づいたのではなく、皇弟の世話を任せる人選です。選ぶ側には都合がよくても、燕燕本人には大問題でした。
Web版「十八、選出の基準」で、燕燕は家柄や成績を理由に人選を問い直します。けれど、その場で一番はっきり口にしているのは、姚と離れたくない、という理由です。
| 立場 | 何を重く見るか | 辞令への反応 |
|---|---|---|
| 選ぶ側 | 良家の娘を付けて妃候補と勘繰られることを避けたい。壬氏の容貌に惑わされない人が必要 | 姚を最優先する燕燕が適している |
| 燕燕 | 姚の近くで世話をしたい | 異動を望まず、姚にも助けを求める |
| 姚 | 燕燕の能力を信頼している | 立派に務まると考え、送り出そうとする |
燕燕は助けを求めているのに、姚から返ってくるのは「頑張ってね」。それ、今いちばん欲しい返事とは違うんです、お嬢さま。
そばを離れたくない姚への思いまで、人選の理由にされてしまう。
姚が倒れたとき、燕燕が優先した相手
Web版「二十三 食事会と毒見の役割」では、毒の事件で姚の容態が悪くなり、燕燕は壬氏への務めより看病を優先します。壬氏も、その場から無理に連れ戻そうとはしません。
- 燕燕が、期間限定で壬氏の付き人に選ばれる。
- 食事会の毒見をした姚が、重い中毒症状に陥る。
- 燕燕は姚の看病へ向かい、壬氏もそれを妨げない。
姚の具合が悪いときに、皇弟の世話だからと引き離されなくてよかった。ふだんは疎まれる壬氏も、燕燕が姚のそばにいることを妨げません。
嫌っていても、茶の質には気を配る
Web版「十五、壬氏対羅漢」で、燕燕は壬氏を疎ましげに見ます。猫猫は、姚から引き離されたことが理由だろうと受け取ります。好意の裏返しとして語られる場面ではありません。
壬氏の立場や周囲の侍女たちと比べても、燕燕はかなり率直な位置にいます。容貌に心を奪われるより、姚と過ごす時間を返してほしい側です。
それでも「十六、指の主」では、相手が壬氏だと分かると、出す茶は上等なものにしようと気を配る。好き嫌いと、客に何を出すかは別。口は辛くても、仕事の手は抜かないんです。
Web版「二十、矢毒」で燕燕が猫猫に相談するのも、姚が壬氏を好きにならないかという心配。壬氏へ向く視線の先に、ずっと姚がいることは変わりません。
同じ章で、姚の将来の結婚相手を吟味する覚悟も語ります。姚自身が選んだ相手ならどうするのか、と問われると返答に詰まる。皇弟をあしらえても、この問いには強く出られないのです。
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まとめ|天祐・姚・羅半兄・壬氏で、燕燕との気持ちの向きは違う
天祐と燕燕は、両思いの恋人同士ではありません。燕燕の中心には姚がいて、天祐の好奇心、羅半兄の恋、壬氏からの仕事の信頼が、それぞれ違う方向から関わっています。
羅半兄の名前を呼んだ燕燕は、礼を尽くしたつもりだった。その後に野菜を抱えてやって来る彼まで思うと、あのお礼は、ずいぶん遠くまで届いています。
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