『薬屋のひとりごと』(薬屋)のやり手婆は、花街の高級妓楼・緑青館を取り仕切る女性です。若い頃には「月の精」と呼ばれた売れっ子妓女で、本名や正確な年齢は不明です。
猫猫(マオマオ)にとっては、幼い頃から身近にいた育ての親の一人。お金には厳しく、口も手も容赦がない。それでも、猫猫の帰る場所にはいつもこの婆さんがいます。
しかも緑青館には、やり手婆とは別に所有者がいます。店の主まで頭が上がらない仕切り役。あの迫力、単に年長だからでは済まないんですよね。
※アニメ第2期までの内容と、原作Web版の花街での出来事に触れます。Web版と書籍版・アニメでは、展開や細部が異なります。
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やり手婆の正体と名前|緑青館を仕切る、元売れっ子妓女
やり手婆は、緑青館の妓女や客、日々の商売を取りまとめる人です。「やり手婆」は本名ではなく、その立場を表す呼び名として使われています。
| 項目 | やり手婆のプロフィール |
|---|---|
| 呼び名 | やり手婆(やりてばばあ)。猫猫は「婆」とも呼ぶ |
| 本名 | 不明。公式の人物紹介でも「やり手婆」の名で紹介される |
| 現在の立場 | 緑青館の仕切り役。店の所有者は別にいる |
| 若い頃 | 舞で名を知られた売れっ子妓女。「月の精」と呼ばれた本人 |
| 年齢 | 正確な数字は不明。50年以上前から花街にいた |
| アニメの声優 | 斉藤貴美子さん |
アニメではやり手婆役を斉藤貴美子さんが担当しています。肩書だけで通じる呼び名に、あの声がつく。猫猫が気軽に逆らえない相手なのも納得です。
店の持ち主と、現場を動かす人は別
緑青館の「女主人」と呼びたくなる存在ですが、店そのものの持ち主は別の男性です。Web版「一、蝗」では、所有者の楼主が月に一度ほど訪れ、やり手婆と話し合っています。
| 人物 | 店との関わり | 二人の力関係 |
|---|---|---|
| やり手婆 | 館を取り仕切り、日々の仕事を動かす | 所有者にも遠慮なく叱る側 |
| 楼主(お館さん) | 緑青館の所有者。ほかの商売も営む | 小さい頃から知られていて、やり手婆に頭が上がらない |
Web版「一、蝗」で猫猫が会う楼主は、人のよさそうな初老の男性です。館の名前を背負っていても、商売の判断ではやり手婆に叱られてしまう。
持ち主が来たから、現場がかしこまる。そんな空気にはなりません。むしろ猫猫と梅梅(メイメイ)は、奥から聞こえる声だけで何かあったと察するほどです。
所有者の顔を立てるより、まず店の損を止める。この人を抜きに緑青館が回る気がしないのは、そういうところです。
若い頃のやり手婆は「月の精」|50年以上前の舞と年齢の手掛かり
やり手婆は、異国の特使の祖父が見た「月の精」その人です。アニメ第28話「鏡」で持ち込まれた無理難題が、第29話「月精」で昔の舞へとつながります。
煙管をくわえて客を値踏みする今の姿から、語り継がれる美女へ。この婆さんが、あの絵の人だったのか。昔話を聞く相手が、そのまま伝説の当人です。
- 50年以上前:若いやり手婆が、異国の特使を迎える宴で舞を披露する
- 特使の帰国後:見た光景が絵に描かれ、「月の精」のような美女の話として伝わる
- 第28話「鏡」:祖父の見た月の精に会いたいと、特使が壬氏(ジンシ)へ願い出る
- 第29話「月精」:猫猫がやり手婆から昔の話を聞き、桃園での再現に向けて動く
第28話では、祖父が見た月の精に会いたいという願いが壬氏を困らせます。伝説は語り継げても、当時と同じ姿をそのまま呼び戻せるわけではありません。
やり手婆の強さは、若い頃から舞台に立ってきた人の強さでもあります。客を見る側へ回った今も、何が人を引きつけるのかを知っている。かつての人気が、現在の仕事と地続きです。
「月の精」は本名ではなく、舞姿から生まれた呼び名
「月の精」は、若い頃のやり手婆の舞姿に寄せられた称賛の言葉です。本名を知る手掛かりというより、遠い国の人にどれほど強く印象を残したかが伝わる呼び名ですね。
当時の舞には、月明かりの中を蛾が飛ぶ幻想的な光景が重なっていました。人間の妓女が、見る側の記憶では月の精になる。その記憶が、次の世代の難題になるわけです。
孫の代まで残る名声はすごい。ただ、本人の年月だけ置き去りにして「もう一度会いたい」と言われても困りますよね。伝説になった側にも、ちゃんとその後の人生がある。
第29話では50年以上前の舞の話を手掛かりに、猫猫が桃園へ向かいます。昔の美女を探す話が、どう舞を再現するかという謎解きへ変わっていきます。
やり手婆が持つ昔の記憶を、猫猫が次の一手に使う。その先の宴へつながるのが、第29話「月精」です。
年齢は何歳?正確な数字は不明、手掛かりは50年以上前の舞
やり手婆の正確な年齢は、公表プロフィールでは不明です。確かな手掛かりは、50年以上前にすでに花街で活躍していたこと。これは誕生日や年齢を直接示した数字ではありません。
例えば当時二十歳なら、50年後は七十歳です。ただ、舞を披露した時の年齢自体がわからないため、現在何歳なのかを一つの数字には絞れません。
年齢の数字以上に目を引くのは、昔の出来事を本人から聞けることです。あの舞台に立った人が、今度は猫猫に話してくれる。伝説の手掛かりが、いつもの婆さんの記憶にある。
昔の舞姿と、今の仕切り役の顔を続けて追いたくなるやり手婆。漫画なら、花街での客あしらいから「月精」の過去まで、姿の違いを見比べながら読めます。
やり手婆の性格は金に厳しい現実派|売れっ子を送り出したい理由
やり手婆は、損得と貸し借りに厳しい人です。ただし目先の儲けだけを追っているわけではなく、緑青館がこれからも商売を続けられるかまで考えています。
| 場面 | やり手婆の判断 | 何が見えるか |
|---|---|---|
| 猫猫が李白(リハク)と里帰りする | 初めて来た客でも、体格や出世の見込みまで見る | 相手が上客になるかを即座に考える |
| 猫猫が客を紹介する | お礼だけでは済ませず、代金の不足を指摘する | 身内同然の猫猫にも勘定を緩めない |
| 三姫が店を支え続ける | 売れっ子だけに頼り続けず、世代交代も考える | 今の売上と、次の妓女の出番を両方見る |
Web版「里帰り」では、猫猫が連れてきた李白を、本人の前で品定めします。まだ客が落ち着く前から、店側の算段はもう始まっている。
猫猫もお礼は用意していて、後宮で稼いだ給金の半分を差し出します。それでも足りないと言われる。帰ってきた安心と、財布の安心は別なんです。
猫猫だから大目に見る、では済ませないところは手厳しい。その厳しさを知っているからこそ、二人のやり取りには遠慮のない交渉が混ざります。
三姫が売れていても、それで安泰とは考えない
商売人として面白いのは、三姫に頼りきりになることを嫌う点です。今の売れっ子が店を支えていても、その三人だけを前に出し続けるわけにはいかない。
Web版「身請作戦前編」では、店を支えた白鈴(パイリン)たちへの依存と、緑青館の世代交代が結びついています。店が安定している時に、次へ移る必要があるのです。
- やり手婆:三姫だけに頼り続けず、店が安定している間に次の世代へつなぎたい
- 李白:白鈴を身請けするため、必要な金額を猫猫に相談する
- 白鈴:借金はなく、年季が明けても仕事を続けている
やり手婆は、売れているうちから、その先を考えている。一方の白鈴は、借金に縛られて残っている人ではありません。本人にも、ここで働き続ける理由がある。
迎えたい李白に、送り出したい婆さん。そこだけなら話は早そうなのに、肝心の白鈴が仕事を気に入っている。外で二人が急いでも、本人の足は止まっているんですね。
二人の恋や身請けの条件は、李白と白鈴の結婚・身請けの話へ。やり手婆の商売の中で、李白がどんな覚悟を試されるのかも追えます。
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やり手婆と猫猫の関係|帰る場所にいる、甘くない保護者
やり手婆は、猫猫が幼い頃から世話になってきた大人です。薬を教えた養父とは役割が違い、花街で生きるための厳しさも、客との距離感も知っている相手です。
猫猫を妓女にしたがる一方で、猫猫は薬師の道を選びます。二人は同じ将来を望んでいるわけではありません。それでも、顔を合わせれば用事を頼み、言い返し、また次に帰ってくる。
| 人物 | 猫猫との関係 | やり手婆と違う役割 |
|---|---|---|
| 羅門(ルォメン) | 猫猫の養父で、薬の師 | 薬学や医術を教えた存在 |
| 梅梅・白鈴・女華(ジョカ) | 緑青館の三姫。猫猫の姉貴分 | 幼い頃から身の回りの世話や芸事に関わる |
| やり手婆 | 緑青館を取り仕切り、猫猫の育ちを支えた一人 | 生活の場と店の都合の両方から、猫猫に接する |
やり手婆を「怖い祖母のような人」と受け取るのは自然です。ただ、家族のような距離と、実際の血縁は別。羅門が養父であることと同じ調子で、祖母と確定することはできません。
第7話の里帰りでは、再会早々に手厳しい歓迎
猫猫はやり手婆に、礼儀正しく挨拶する客の顔では会いません。帰ってきた場所の婆さんへ話しかける。その気安さのすぐ後に、容赦のないやり取りが来ます。
第7話の放送後に公開された公式の場面写真でも、猫猫はやり手婆の前で身体を折り曲げています。久しぶりの再会なのに、猫猫が余裕たっぷりでいられる相手ではないんです。
Web版の同じ里帰りには、猫猫が幼い頃に毒を試しては、やり手婆に吐き戻させられたという回想もあります。薬と毒への好奇心は、この頃から周りの大人の手を焼かせていた。
手荒い行動まで、全部「愛情だから」で片づけるのは違うでしょう。猫猫には懐かしい日常でも、外から見ればぎょっとする。李白が戸惑うのも無理はありません。
帰る家はあっても、猫猫は別の仕事へ進む
猫猫の居場所は、館に残り続けることだけでは決まりません。後宮を解雇されて花街へ戻った後には、壬氏のもとで働く道も開けます。
- 里帰り:花街でやり手婆や姉貴分たちと再会し、変わらない日常に触れる
- 後宮の解雇後:猫猫は花街へ戻り、緑青館の仕事も手伝う
- 宮廷での再就職:壬氏に迎えられ、緑青館の人々に送り出される
Web版「親父」では、梅梅たちが新しい勤めへ向かう猫猫に、化粧道具や衣を持たせます。仕事へ送り出す世話と、上客を連れてきてほしい算段が同じ見送りに混ざっています。
やり手婆だけが急に商売の話をするのではなく、姉たちまでその調子。薬のことで頭がいっぱいの猫猫も、客との付き合いだけは花街の空気から逃れられません。
それでも、猫猫が帰れる場所があるのは大きい。第12話の解雇から身請けまでをたどると、緑青館で育ったことが、宮廷へ戻る時にも効いてきます。
子供の寂しさに先に気づくのも、やり手婆
Web版「八、蛇神さまのいうとおり」では、外出する猫猫に趙迂(チョウウ)がついて行きたがります。邪魔だと渋る猫猫に、連れていくよう勧めたのがやり手婆でした。
- 猫猫は、薬草採りに子供を連れていっても邪魔になると考える
- やり手婆は、猫猫が留守の間、趙迂の元気がなかったと教える。親のいない子供には、猫猫の不在も心細い
- その後、育てる責任の話になると、やり手婆は受け取ったお金の分は面倒を見るという言い方に戻る
いいことを言ったと思ったら、最後はきっちり勘定の話へ戻る。そこまで婆さんらしい。でも、趙迂が寂しがっていた事実は、その言い方では消えない。
同じ章で猫猫は、幼い自分が一人で泣いていた頃の話も思い返します。緑青館が傾いていた時期の育ちは、温かな思い出だけではありません。
幼い猫猫のつらさも、今の趙迂への気遣いも、同じ館にある。いつでも優しかったとは言えないからこそ、子供の心細さに気づいた今の言葉が残ります。
原作小説でも気になるのは、猫猫がいない間の緑青館。事件を追う薬師が気づかないところで、婆さんが何を見ているのか。花街の暮らしを読む楽しみが、そちらにもあります。
やり手婆に旦那はいる?楼主との噂と鳳仙の親子説
やり手婆の夫の名前や、誰と結婚していたのかは、公表された人物紹介では不明です。家族の手掛かりとして気になるのは、Web版で触れられる前の主人との噂です。
「一、蝗」には、今の楼主が、前の主人とやり手婆の子供だという噂があります。ただし、作中でも真実はわからない話として扱われています。
| 気になる関係 | わかっていること | 確定していないこと |
|---|---|---|
| 現在の楼主 | 緑青館の所有者。幼い頃からやり手婆に知られている | やり手婆の実子かどうか |
| 前の主人 | 現在の楼主の出生に関わる噂に登場する | やり手婆との婚姻関係 |
| 鳳仙 | 緑青館の元妓女で、猫猫の実母 | やり手婆との親子関係 |
子供だという噂があることと、夫婦だったと決まることは同じではありません。気になる過去ではありますが、名前のある夫が紹介された場面として読むのは早いです。
今いる楼主と、噂に出てくる前の主人は別人です。今の楼主が叱られている姿は、店での力関係の話。夫婦だという紹介ではありません。
鳳仙の母親、猫猫の祖母という説は?
鳳仙がやり手婆の娘なら、猫猫にとっては実の祖母になります。ただし、猫猫の世話をしたことだけで、その血縁まで確定するわけではありません。
そばで長く暮らしてきた人には、血縁がなくても家族のような距離が生まれます。猫猫にとっても、羅門や三姫とのつながりは、血のつながりだけでは説明できないものです。
鳳仙の母親説には、世話を続けた行動以外に、作者の回答をめぐる話もあります。その根拠と答え方は、鳳仙とやり手婆の親子説で掘り下げています。
身請けを断って、花街に残った人でもある
やり手婆自身の人生で目を引くのは、Web版「里帰り」にある、身請けを断り、年季が明けても館に残ったという過去です。誰かに迎えられる道だけを選んだ人ではありません。
自分は館に残り、今はほかの妓女を送り出す側にいる。同じ花街にいても、全員が同じ道をたどるわけではありません。
旦那の名前はわからない。それでも、身請けを断って緑青館に残ったという選択は残っています。この場所で生きたかったのか。その後の働きぶりを知るほど、昔の決断が気になります。
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まとめ|やり手婆は「月の精」だった、緑青館の仕切り役
やり手婆は、若い頃に月の精と称された元妓女で、今は緑青館を動かす人です。名前や年齢、夫について不明な部分があっても、商売と猫猫の暮らしを支える役目ははっきりしています。
猫猫の給金にも、売れっ子の将来にも、子供の留守中の様子にも目が届く。損得にうるさいからといって、見ているものまでお金だけではありません。
昔は客に見とれさせる側、今は客を値踏みする側。緑青館で、見る側と見られる側がそっくり入れ替わっているんですね。
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