『ホタルの嫁入り』7話「正義の味方」は、酒で別人になった新渡戸の身請けを紗都子が断り、襖の陰から「助けに来たよ」と現れた進平が撃たれる回です。
6話で「私の手で君を守りたいんだ」と言った人が、7話では紗都子の手術痕を見て「なんて醜い…」。同じ客間で、同じ人の口から出る言葉が丸ごと入れ替わります。
7話でいちばんぞっとするのは、最後のページ。銃声がしても部屋に入るな、という言いつけの理由が、撃たれた進平の言葉で明かされます。
落ちたのは眼鏡一つなのに、求婚の言葉が全部裏返る。あの湯呑み、責任が重すぎます。
※この記事は原作漫画第7話までのネタバレを含みます。アニメ第3話との対応にも触れます。8話以降の展開には触れません。
この記事でわかること
『ホタルの嫁入り』7話のネタバレ|湯呑みの酒から「もっと好きになってもらえる機会を」まで
7話は、6話の最後で湯呑みの酒を口にした新渡戸が、眼鏡を落として紗都子をつかむところから始まります。舞台は6話と同じ、いせ吉の座敷です。
- 眼鏡が落ち、新渡戸が紗都子を布団へ倒す。紗都子は「もしかして…お酒?」と気づく
- 新渡戸は、厳しく育てられた「栄進」が「二人目の自分を作り出した」と自分で語り、紗都子に着物を脱げと迫る
- 胸の手術痕を見た新渡戸は「なんて醜い…」。それでも顔と家名を理由に、身請け話は生かしておくと言う
- 店の遊女たちを「欠陥品」と並べ、警視総監の息子と伯爵の娘婿の肩書きで島ごと買えると笑う
- 紗都子は頭を下げて身請けを断り、「下衆を桐ヶ谷家の名に連ねるわけにはいきませんので」
- 逆上した新渡戸がつかみかかったところへ、襖の暗がりから進平の「助けに来たよ」
- 進平は新渡戸の腕を刀で刺して引き離す。止める紗都子の前で刀を振るい、新渡戸の首を押さえつける
- 新渡戸の拳銃で、進平が肩のあたりを撃たれて倒れる。新渡戸は紗都子に銃を突きつける
- 階下では店の者が銃声を聞くが、部屋には入るなと言われている。その言いつけの主が、最後のページで分かる
6話は、求婚の返事を待つ間に水と酒がすり替えられて終わりました。新渡戸の求婚と天井のネズミの回は『ホタルの嫁入り』6話の感想・考察で追っています。
第7話「正義の味方」は、マンガワンのアプリでは2023年3月12日の深夜からコメントが付き、3月27日に通常公開。2026年11月3日時点で、読むにはアイテムが必要です。
アニメでは第3話「見守るネズミ」が、原作5話のいせ吉から7話の最後のページまでを一気に描きました。見られる配信先はアニメの配信をまとめた記事にあります。
酒で出てきた新渡戸の「二人目の自分」|手術痕を「醜い」と言った警視総監の息子
7話の新渡戸は、6話の誠実な客とは別人です。本人の言い方を借りれば、酒で出てきたのは「二人目の自分」でした。
説明するのも新渡戸本人です。栄進は親に厳しく育てられ、酒も女も知らないまま大人になった。だから欲望の発散のさせ方が分からず、自分が生まれた、と。
しかも自分を「栄進」と三人称で呼び、爆発しそうな栄進をこの島へ連れてきては、代わりに心と体を癒やしてやるのだと言います。
6話の新渡戸は、出禁の理由を酒で変な振る舞いでもしたのだろうと推し量っていました。当たっていたのは半分だけです。
自己紹介まで丁寧なのは、どうやら両方の人格に共通です。
そして紗都子の着物を脱がせた新渡戸は、胸の手術痕を見て「なんて醜い…」。「これは女として致命的だぞ」とまで言い、後ろを向かせて背中に傷がないことを確かめます。
出した結論は、傷が目に入らないよう後ろを向かせておけばいい。顔はいいし桐ヶ谷家の家名もついているから、身請け話は生かしてやろう、と続けます。
傷を見て引き下がるのではなく、条件を一つ足して交渉を続ける。譲歩しているつもりなのが、いちばん腹が立ちます。
| 比べる点 | 6話の新渡戸 | 7話の新渡戸 |
|---|---|---|
| 紗都子への言葉 | 「私の手で君を守りたいんだ」 | 「身請けしてやると言っているんだ 少しは喜んだらどうだ?」 |
| 結婚したい理由 | 一目惚れしてしまったようだ | 顔と家名。警視総監の息子と伯爵の娘婿、二つの肩書き |
| 病と体 | 国中の医者に診てもらおうと言う | 手術痕を「醜い」と言い、病気持ちを「一番の欠陥品」と呼ぶ |
| 店の遊女たち | 自分といる時間を楽しんでほしいと話す | 「欠陥品ばかりでウンザリしていた」 |
新渡戸が並べた「欠陥品」は、客を殺した女、容姿で客がつかない女、間夫と心中しようとした女、全身火傷の女。いせ吉の遊女たちの事情です。
間夫(まぶ)は、遊女の情夫のこと(デジタル大辞泉「間夫」)。客とは別に、遊女が思いを寄せる男を指します。
身請け話をちらつかせると、どの女も声色を変えてすり寄ってきた。新渡戸は笑い、「汚物は屑籠の外に出るべきではない」と言い切ります。島を出る望みを餌にしておいて、出す気はない。
6話では、遊女にも自分といる時間を楽しんでほしい、と話していた人です。あの言葉まで芝居だったとは、まだ思いたくない。
「お父様は きっと望まない」|肩書きで選ぶつもりだった紗都子が、身請けを断った理由
紗都子が身請けを断った理由は、心の声に出ています。肩書きさえ良ければ、と思っていた紗都子が、この男との結婚を父は望まないと気づいたからです。
新渡戸が島ごと買ってやってもいいと笑う横で、紗都子の心の声は「肩書きさえ良ければ お父様を安心させられる」。続けて「どんな方であれ 結婚しようと思っていた」。
過去形です。紗都子は頭を下げ、「このような体で結婚相手を選べる立場ではございませんが」と前置きしてから、身請けのお話はお断りさせていただきます、と告げました。
| 話数 | 結婚についての紗都子の考え | その時の状況 |
|---|---|---|
| 1話 | 「私はお父様が望む相手と結婚することが目標だから」 | 家にいた頃。体のことを相手に伏せた縁談を嫌がる |
| 6話 | 相手がこれほど立派な家柄なら父も喜ぶ。断る理由がない | 誠実に見えた新渡戸に求婚された直後 |
| 7話 | 肩書きさえ良ければと思っていた。でも「お父様は きっと望まない」 | 手術痕を「醜い」と言われ、遊女たちを「欠陥品」と聞いた後 |
1話から目標は変わっていません。変わったのは「お父様が望む相手」の読み方です。家柄さえあればと考えていた紗都子が、相手の中身を条件に入れた。
冗談はよせ、ここでの暮らしに耐えられるわけがない、と迫る新渡戸に返したのが「下衆を桐ヶ谷家の名に連ねるわけにはいきませんので」でした。
新渡戸が欲しがったのは「桐ヶ谷伯爵の娘婿」の肩書き。紗都子はその家名を盾にして、肩書き目当ての男を門前払いにしました。
思い出すのは2話です。命を狙う殺し屋に、紗都子は伯爵の娘だと自分を売り込みました。あの時の家名は、命を買うための持ち札でした。
島から今すぐ出られる切符を、警視総監の息子の目の前で「下衆」と書いて突き返す。断り方まで伯爵令嬢です。
父への恩返しのために結婚を目指してきた紗都子の出発点は、『ホタルの嫁入り』1話の感想・考察にまとめました。
1話で父が縁談を持ってきた時の会話と、2話の売り込みは原作1巻。7話の「お父様は きっと望まない」の重さは、あの父の顔を見てから読むと増します。
「さーとーこ」「助けに来たよ」|正義の味方は、襖の暗がりから来た
新渡戸がつかみかかった時、進平は襖の暗がりから顔を出しました。題の「正義の味方」を名乗るような一言も、このあと進平の口から出てきます。
「病気持ちである貴様が一番の欠陥品だ」と新渡戸が胸ぐらをつかんで締め上げる。そのコマの下に、間延びした「さーとーこ」。
次のページの半分を使って、襖の暗がりから片目と片手を出した進平。口元だけ笑って「助けに来たよ」。助けられる側より先に、新渡戸が凍りつく登場です。
アニメ第3話でも公式Xがこの一言だけを投稿していて、見た人の感想にも、こんなに怖い助けに来たよはない、という声がありました。
新渡戸が誰の許可で入ったと怒鳴る間に、進平は背後へ回り、刀で新渡戸の腕を刺して「まずはその汚い手をどけろよ」。順番が逆です。
紗都子の肩を抱いて「紗都子の言う通り こいつはもうやめにしよう」。身請けの話を、刀つきで正式にお断りしたことになります。
| 6話で進平が言ったこと | 7話で進平がしたこと |
|---|---|
| 天井の梁から「ここで見守ってるよ」 | 紗都子がつかみかかられた後に、襖の陰から「助けに来たよ」 |
| 紗都子に指一本触れさせたくない | 触れた腕を刀で刺して離させる |
| 「絶対に殺さないようにするからさぁ」 | 侵入者がいるとバラすと叫ぶ新渡戸へ刀を振るい、紗都子に「殺しちゃダメ!」と止められる |
止める紗都子に、進平は「残念だなぁ こいつを使う以外この島から出られる方法が思いつかないのに…」。少し考えて「まぁ仕方ないか」。
惜しんでいるのは新渡戸の命ではなく、脱出の道具としての新渡戸。進平の算盤、刀を振りながらでもちゃんと回っています。
そして新渡戸の首を押さえつけたまま、にこやかに「妻を傷つける悪党はやっつけなきゃね」。正義の味方の決め台詞が、いちばん物騒な顔で言われています。
梁の上の笑顔から襖の陰の目まで、進平の顔の振れ幅は進平の目と表情の魅力をまとめた記事にも並べています。
撃たれた進平と最後のページ|銃声でも部屋に入るな、と言わせたのは誰か
進平は新渡戸の拳銃で撃たれて倒れます。けれど最後のページで、階下の店に「部屋に入るな」と言いつけていたのが進平の側だったと分かります。
「もうやめて 本当に死んでしまうわ」と紗都子が止めた直後、「パン」。肩のあたりを撃たれた進平が布団へ倒れ、新渡戸は紗都子に銃を突きつけて「近づいたらこの女を殺す…」。
銃口を向けられたまま、紗都子は「返事をしてください!」「進平さん」と呼びかけます。ここで初めて名前を呼んだ、と気づいた読者がコメント欄に何人もいました。
| 場所 | 銃声のあとに起きていたこと |
|---|---|
| 客間 | 倒れた進平、銃を突きつけられた紗都子、「返事をしてください!」 |
| 階下の店 | 「…銃声だね」「見に行くかい?」「気にするな」。銃声でも叫び声でも、絶対に部屋に入るなと言われている |
| 最後のコマ | 銃を構えた新渡戸と紗都子が、立っている着物の背中を見つめる |
なぜ入るなと言われているのか、と聞かれた店の者の答えは「邪魔されたくないそうだ」。その続きを、最後のページで肩から血を流した進平が引き取ります。
笑って立つ進平の言葉は「愛する人にもっと好きになってもらえる機会を」。邪魔されたくなかったのは、新渡戸ではなく進平のほうだったわけです。
銃声がしても上がってくるな、とまで念を押してある。進平、撃たれる場合の段取りまで店と済ませていませんか。
5話の作戦会議で、進平は、紗都子が危険にさらされ続ければ自分は必要不可欠な存在になれるかもしれない、と話していました。
7話では紗都子が危ない目に遭い、助けに入った進平が撃たれ、紗都子が「進平さん」と叫んだ。5話の一言が、そのまま一場面になっています。
撃たれることまで分かっていたのか。コメント欄では「銃で打たれることも想定済みだった」と読む人が多く、わざと撃たれたと見る声もあります。7話の時点で、進平がそう言ったわけではありません。
アニメ第3話も、この台詞で終わりました。放送中の公式Xは、店の者の言葉と進平の言葉を一続きにして投稿しています。
7話の読者の反応|いいねが集まったのは「思ったよりクズ」と「想定済み」
マンガワンの7話には850件を超えるコメントが付いています。いいねの多い順に並べると、上位は新渡戸の正体と、撃たれた進平の読み方でした。
| 書き込み | いいね |
|---|---|
| 「思ったよりクズ そして 思ったより狂気 最高!」 | 11,849 |
| 「進平、銃で打たれることも想定済みだったってことか、、、かっこよ」 | 10,012 |
| 「離れていかないようにもっと自分に依存させたい進平の思惑通りってことか…」 | 7,634 |
| 「進平くんも身体中傷だらけだから手術痕くらい気にせんわな」 | 6,240 |
| 「初めて進平さんと呼んだ!」 | 4,928 |
1位の「クズ」は新渡戸、「狂気」は進平でしょう。7話の男二人への感想が、一行で済んでいます。
3話の宿で、紗都子は傷だらけの進平の背中を流していました。4位は、その進平と手術痕を「致命的」と言った新渡戸を並べた書き込みです。
胸の手術痕を持つ読者からは、手術を頑張った勲章だよ、という書き込みに1,500件を超えるいいね。紗都子の傷を「醜い」で終わらせない声です。
新渡戸の受け止めは割れました。本来が優しい人なら治療すべきだと同情する声の一方で、もう一人の人格だから言うのか、元の人格も思っているのか、と首をかしげる人も。
登場の仕方には「ヒーローの登場、ホラーすぎ」が4,700件を超えるいいね。ブックライブの単話7のレビューにも、サイコパスで愛が深い男、と書いた人がいました。
アニメ第3話を見た人のXには、銃声を聞いても動かない店の者に驚く投稿や、島を出る機会より誇りを選んだ紗都子を挙げる投稿が並びます。
7話は原作2巻に収録。6話の客間から続けて読むと、誠実な求婚が湯呑み一口でひっくり返り、襖の陰の目が出てくるまでが一続きです。最後のページの進平の顔は、絵で見てこそ怖い。
まとめ|7話は、紗都子が肩書きより父の望みで断り、進平が撃たれても笑う回
『ホタルの嫁入り』7話「正義の味方」は、酒で「二人目の自分」になった新渡戸の身請けを紗都子が断り、助けに来た進平が撃たれて、それでも笑って立つ回でした。
6話は天井の梁の上、7話は銃口の前。進平が紗都子のそばに陣取る場所、回ごとに物騒になっています。
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