猫猫(マオマオ)の気持ちは、壬氏(ジンシ)に対して確かに変わっています。ただ、「恋愛に目覚めてデレた」で片づけると、猫猫のいちばん面倒で面白いところを落とします。
最初は逃げる。面倒くさがる。それでも見捨てない。そして9巻以降、自分の側から壬氏へ返す行動が増えていく。猫猫のデレは、甘さより「逃げなくなる変化」です。
だから「恋愛要素はいらない」という引っかかりも無理に否定したくありません。薬と毒と謎解きを目当てに読んできたら、「恋愛が主役になるの?」と警戒する。それもよく分かるんですよ。
※この記事は原作小説13巻までの猫猫と壬氏の関係に触れます。アニメ未放送範囲のネタバレを含みます。
2026年9月9日時点、原作小説は16巻まで刊行。TVアニメ第3期は2026年10月2日から放送予定です。
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猫猫の気持ちは変わった?結論は「変わった。でも急にデレデレにはならない」
結論は、猫猫の壬氏への気持ちは変わっています。ただし一直線に恋へ走るのではありません。拒絶しきれない相手になり、信頼し、最後は自分の感情まで無視しなくなる。その順番です。
猫猫を動かしているのは「好きか嫌いか」だけではありません。身分も立場も危険も分かった上で、それでも感情を切り捨てなくなる。ここが変化の核心です。
| 段階 | 猫猫側に見える変化 | 読みどころ |
|---|---|---|
| アニメ第9話 | 壬氏との間に身分差の壁が立つ | 近づくより、まず距離の理由が見える |
| アニメ第12話 | 壬氏の自然な行動へ初めて反応する | 無反応だった関係が一段動く |
| 小説9巻 | 猫猫側から頬へ口づけする | 「返す側」へ初めて大きく踏み出す |
| 小説12巻 | 自分から壬氏との距離を縮める | 感情を避け続ける段階を越える |
| 小説13巻 | 壬氏の思いへ素直になる道を選ぶ | ただし身分と政治の問題は残る |
この並び、普通の“デレ落ち”とずいぶん違いますよね。壬氏に押されて陥落するというより、猫猫自身が「これは無関心では済まない」と逃げ道を一つずつ失っていくんです。
急に頬を赤らめて恋する乙女になったら、それはもう猫猫じゃない。変わったのに、変わり方まで面倒くさい。そこがいいんですよ。
なぜ猫猫は壬氏を避ける?「恋愛に興味がない」だけではない身分差の壁
猫猫が壬氏へなびかないのを「恋愛に興味がないから」で終えると、かなり大事なものを落とします。二人の間には、気持ち以前に身分差という逃げられない現実があります。
第1期第9話で突きつけられるのは、恋の駆け引きよりずっと重い話です。猫猫の死生観と身分の低さがむき出しになり、毒見役の命は貴人の命と同じ重さでは扱われないと分かります。
長沼範裕監督の第1期インタビューでも、第9話で意識したものとして「生と死」「死生観」「身分の違い」が挙げられています。
壬氏は「大切にしたい」と近づける。でも猫猫は、その好意を受けた先に何が起きるかまで見えてしまう。恋愛温度の差じゃない。生きている場所そのものが違うんです。
恋を知らないから鈍いんじゃない。男女の関係も、身分差の怖さも知りすぎているから簡単に乗れない。猫猫の冷たさは、無知よりむしろ現実感です。
だからこそ第12話の宴が効きます。あれだけ距離を置いていた猫猫が、壬氏の自然な行動には反応してしまう。監督も「最初のころの二人では絶対に起きなかった」と振り返る変化です。
第1期の「猫猫&壬氏編」特別PVで二人だけを続けて見ると、この距離の変化がよく分かります。最初から甘い二人ではないからこそ、反応が一つ増えただけでも妙に大きく見えるんですよ。
悠木碧さんは第2期の取材で、二人を「飼い主と猫」のような関係として捉えていました。懐くほど扱いが雑になる。普通の恋愛描写と逆向きなのが、妙に猫猫らしいんですよね。
猫猫は壬氏にだけ特別冷たいわけでもありません。猫猫の性格が「うざい・性格が悪い」と見える理由まで見ると、もともとの人との距離感が壬氏相手にもそのまま出ているのが分かります。
アニメで見えるのは、まだ「壁がある。それでも少し反応してしまった」段階です。そこから猫猫が自分の側から返し始める。原作9巻以降は、その一歩がもう誤魔化せなくなるんですよ。
猫猫のデレ描写はどこ?9巻・12巻・13巻で変わる温度
「猫猫がデレた場面を一つ」と聞かれたら、9巻は外せません。でも9巻だけ切り抜くと、この関係を少し見誤ります。9巻の一歩が、12巻、13巻で別の重さへ変わっていくからです。
9巻:頬への口づけ――甘いより先に「叱る」が来る
9巻の口づけだけ見ると、急にラブコメが進んだように見えます。でも前提はむしろ重い。壬氏が口外できない傷を負い、猫猫が人目を避けて治療へ通う。二人だけで抱える秘密が増えていきます。
原作小説9巻も、壬氏の「一世一代の行動」と、その後に二人が大きな秘密を共有するところから始まります。甘さの前に、まず秘密と傷がある巻です。
そして終盤、壬氏が迷う。そこで猫猫がするのは、慰めの言葉じゃありません。まず頬を叩く。その赤くなった頬へ、自分から口づける。いわゆる“痛みが飛ぶ”まじないまで添えます。
甘い場面の入口がビンタですよ。デレたのに、こちらが素直に「デレた!」と叫ばせてもらえない。猫猫、そこまで猫猫でなくてもいいのに。
それでも、ここで見るべきは口づけの甘さより主語です。壬氏に求められて応じたのではなく、猫猫の側から返した。ずっと押される側だった関係が、ここで初めて大きく反転します。
12巻:雀の言葉で、自分の感情を「事情」の後ろへ隠さなくなる
12巻まで来ると、もう「たまたま優しかった」では逃げにくくなります。猫猫は壬氏を気遣うだけでなく、自分から口づける。9巻で返した一歩を、今度は自分の意思でさらに進めます。
ところが、猫猫はそこで「好きです」と恋愛主人公になってくれない。雀(チュエ)に、事情を言い訳にして感情まで無視するなと突かれて、ようやく自分の内側へ視線を向けます。
書籍版とは細部が異なりますが、Web版「西都編2」第312部分では、猫猫が壬氏へ向ける感情そのものを、自分で考えざるを得なくなる場面があります。
そこで出てくるのが、燃え上がる恋心ではないのがまた猫猫です。壬氏と同じ強さで返せなくても、これほど安堵を寄せられる相手はそういない。ようやく自分でそこまで認めます。
ここで進んだのは告白ではありません。身分や事情を理由に、自分の感情まで無かったことにするのをやめ始めた。猫猫にとっては、これがかなり大きいんです。
13巻:「素直になる道」を選んでも、身分と政治の問題は消えない
13巻まで来ると、「それでも無関心です」はさすがに苦しくなります。巻紹介でも、猫猫は「壬氏の思いに対して素直になる道を選ぶ」ところまで進みます。
原作小説13巻は、その直後に「大きな問題」が残ることも示します。気持ちを認めた瞬間に、身分も政治も空気を読んで消えてくれる――そんな甘い世界ではありません。
だからこの恋愛、甘いのに楽じゃない。感情は前へ進むのに、現実は一歩も退いてくれません。恋を認めた瞬間だけ世界が優しくなる作品じゃない。そこまで含めて『薬屋』です。
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「恋愛要素はいらない」と感じる理由|ミステリー派の違和感は自然
「恋愛要素はいらない」を、作品を分かっていない感想として片づけるのは違うと思います。むしろ『薬屋』のどこに一番惹かれているかで、ここはかなり素直に好みが割れます。
猫猫の薬学、観察眼、毒への執着、事件をほどく頭の回転。ここに惚れて読み始めた人ほど、壬氏との押し引きが長く続けば「いや、その前に謎を見せてくれ」と思う瞬間はありますよね。
二人の関係を楽しむ声がある一方、放送時の反応には、恋愛より謎解きを見たいという声もあります。楽しみ方は最初から一枚岩ではありません。
もう一つ、初期の壬氏は猫猫へかなり強く距離を詰めます。しかも立場は圧倒的に上。そこをロマンスより「逃げにくい相手から迫られている」と受け取る人がいるのも、無理はありません。
だから、恋愛が苦手でも『薬屋』を楽しめます。謎解きを主役に置きたい読み方まで否定する必要はありません。そこもこの作品の太い魅力です。
そのうえで後半の関係が面白いのは、猫猫が壬氏仕様のヒロインへ作り替えられないことです。距離は縮むのに、相変わらず面倒くさがる。好意が出ても、性格まで丸くはならない。
近づいたのに雑。気遣うのに甘くない。そこが効くんです。「デレたら猫猫じゃなくなる」という一番怖い崩れ方を避けたまま、関係だけはちゃんと進んでいきます。
恋愛を主菜にはしない。でも、無かったことにも逃げない。前へ出しすぎないのに、無視もできない。この距離感が『薬屋』の恋愛なんですよ。
9巻から13巻まで通すと、「急に恋愛が割り込んできた」という見え方も少し変わります。猫猫は別人になったんじゃない。何巻もかけて、同じ猫猫のまま少しずつ逃げなくなったんです。
恋愛が進んでも猫猫が猫猫のままなのはなぜ?
恋愛が進んだ途端、主人公の関心が相手一色になる作品もあります。でも猫猫はそうならない。彼女の人生の中心は、壬氏だけではありません。薬も毒も仕事も、平然と続きます。
それが一番分かりやすいのが16巻です。13巻で二人の関係が動いたあとでも、物語の中心は疱瘡の発生と感染拡大の謎へ戻る。恋愛が進んでも、『薬屋』は薬と病を置き去りにしません。
恋愛は、猫猫の人生を上書きする「新しい本編」ではありません。薬師として生きる日常の中に、もう無視できない壬氏が入り込んだ。そのくらいの位置です。
ここで少しややこしいのが、媒体によって二人の距離がまるで違って見えることです。2026年9月9日時点では、アニメ・漫画・原作小説でここまで差があります。
| 媒体 | 2026年9月9日時点 | 猫猫と壬氏の関係 |
|---|---|---|
| TVアニメ | 第3期は10月2日放送開始予定 | 小説9・12・13巻の変化は未放送 |
| ビッグガンガン版漫画 | 17巻まで発売 | 17巻は原作小説4巻のクライマックス |
| 原作小説 | 16巻まで発売 | 13巻以降の関係変化まで追える |
アニメで追っている人にとって、9・12・13巻の変化はまだ先です。10月2日開始の第3期の放送日・配信予定を押さえておくと、「いま映像はどこにいるのか」も迷いにくくなります。
ここで、悠木碧さんの「懐いたからこそ雑になっていく」という捉え方が効いてきます。距離が縮まるほど丁寧になるんじゃない。猫猫の場合は、安心して雑になれる。
好意が育った結果、扱いが雑になる。普通のラブコメなら逆でしょう。最後まで「懐いた猫」の方向へ行くの、妙に納得してしまいます。
だから猫猫は、「恋愛キャラになった」と見るより、壬氏を自分の生活から完全には切り離せない人になったと見る方がしっくりきます。恋が猫猫を上書きしたんじゃないんです。
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まとめ|猫猫の気持ちは変わったが、恋愛が作品を乗っ取ったわけではない
猫猫の壬氏への気持ちは、確かに変わりました。でも「無関心からベタ惚れ」ではありません。拒絶しきれない相手になり、自分の感情まで無視しなくなった。この変化です。
9巻の頬への口づけも、12巻の一歩も、13巻の選択も、猫猫らしさを捨てた瞬間ではありません。面倒くさくて、現実的で、簡単には流されない。その猫猫のまま、壬氏だけが少しずつ特別になっていく。
恋愛が全部を飲み込んだら違う。でも、普段は逃げる猫が、たまに自分から一歩近づく。その一歩なら、僕はかなり見たいです。
※当サイトで使用しているイラストは、記事内容を補足するイメージです。特定の著作物・キャラクター・場面の再現を目的としたものではありません。本記事は作品公式および関係各社とは関係のない非公式記事であり、感想・考察には当サイトの見解を含みます。
※本記事の情報は2026年9月9日時点で確認しています。放送・配信状況、料金、特典、キャンペーン、商品情報などは変更される場合があるため、最新情報は各公式サイト・販売ページをご確認ください。
