『薬屋のひとりごと』の里樹妃(リーシュヒ)がかわいそうなのは、上級妃でありながら、身近な侍女たちに軽んじられ、衣装や食事まで嫌がらせに使われているからです。
頼るはずの相手が、困らせる側に回っている。しかも外からは、里樹妃がしきたりを知らず、わがままを言っているように見えてしまう。ここが、ただの陰口よりつらいところです。
ただ、毒味役だった河南(カナン)は、猫猫(マオマオ)の忠告を受けて態度を変えます。河南と、簪を取り上げられる元侍女頭は別人。この区別で関係がぐっと見やすくなります。
※アニメ第2期・第38話「踊る幽霊」までのネタバレを含みます。侍女の言動や河南の変化について、原作Web版の場面も補足しています。
この記事でわかること
| 人物 | 里樹妃との関わり |
|---|---|
| 河南 | 園遊会では毒味役。のちに侍女頭となり、里樹妃を支える |
| 猫猫 | 食べ物の危険と侍女の嫌がらせに気づき、外から関わる |
| 壬氏(ジンシ) | 後宮を管理する立場から、相談や調査に関わる |
| 高順(ガオシュン) | 猫猫から、里樹妃へのいじめについて説明を受ける |
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里樹妃はなぜかわいそう?上級妃の身分が守ってくれない
里樹妃の苦しさは、身分の低さでは説明できません。皇帝に仕える上級妃なのに、生活を支える侍女たちが、その立場も本人の気持ちも大切にしていないのです。
里樹妃は、四夫人の一人である徳妃。先帝の妃となった後、出家を経て、現皇帝の後宮へ戻ったという特殊な経歴を持ちます。
幼くして後宮に入り、しきたりを十分に知らないまま、高い地位に置かれる。周囲の助けがあれば補えるはずの不慣れさが、侍女たちには見下す理由になってしまいます。
- 後宮の慣習に疎く、場に合う振る舞いを自分だけで判断しにくい
- 感情が顔に出やすく、侍女たちに未熟さを見透かされている
- 先帝と現皇帝の妃になった経歴を、周囲が偏見を持って見ている
もちろん、知らないことがあるからといって、嫌がらせを受けてよいわけではありません。むしろ教える人が必要な状況です。そこで足を引っ張るのは、あまりに意地が悪い。
本人の選択だけではない後宮入りを、里樹妃の品行の問題にされるのも理不尽です。幼い妃へ向ける非難と、彼女が実際に置かれた事情は、分けて受け取りたいところ。
高順には信じがたく、猫猫には見えていた
猫猫が侍女によるいじめを高順に伝える場面では、上級妃が侍女にいじめられるという話自体が、すぐには信じてもらえません。立場だけ見れば、上下は明白だからです。
| 見る人 | 目に入るもの | 里樹妃の状況の見え方 |
|---|---|---|
| 高順 | 上級妃と、その下で働く侍女という身分関係 | 侍女が妃をいじめるとは考えにくい |
| 園遊会での猫猫 | 妃と侍女の衣装、食事中の表情 | 本人の不慣れさに見えた違和感を、周囲の扱いから捉え直す |
| 里樹妃のそばにいる侍女たち | しきたりに疎く、身近な人を頼る若い主 | 助けるべき弱さを、軽んじる材料にしている |
高順の驚きで、里樹妃の置かれた状況がいっそう重く感じられます。外の人が当然守られていると思う場所で、本人は守られていない。助けを呼ぶ前に、事情の説明が必要になる。
詳しい人を頼ったら、その人こそ困り事の原因だった。里樹妃の場合は、身の回りの支度を任せる相手がそうなっています。相談先まで同じ侍女なら、出口が見えにくいですよね。
身分の高さと、安心して暮らせることは別。猫猫が衣装や料理の小さな違和感を拾うことで、肩書の陰に隠れていた扱いが、ようやく外へ伝わります。
里樹妃は、金剛宮に暮らす徳妃です。自分の宮まである上級妃が、身近な人へ希望を言いづらい。立場を知るほど、衣食の扱いとの隔たりが気になります。
里樹妃へのいじめ|侍女は衣装と「味方のふり」を使う
侍女たちの嫌がらせは、露骨に怒鳴るだけのものではありません。支度を手伝う立場を利用して里樹妃に恥をかかせ、外から来た人には主を守るような顔も見せます。
里樹妃は濃い桃色、侍女たちは白い衣装
園遊会では、里樹妃が濃い桃色の衣装で現れます。隣の玉葉妃(ギョクヨウヒ)の色と近く、徳妃にふさわしい白から外れている。初めは、本人の知識不足にも見える場面です。
ところが、園遊会の里樹妃と侍女たちを比べると、侍女たちの衣装は白に準じています。主の色はちぐはぐなのに、自分たちは場に合った支度をしている。この差が引っかかる。
| 園遊会の支度 | 里樹妃 | 仕える侍女たち |
|---|---|---|
| 衣装の色 | 濃い桃色 | 白に準じた色 |
| 周囲から見える印象 | 徳妃として場に合わない装いに見える | 自分たちの装いは場に合っている |
| 猫猫が疑ったこと | 似合うと勧められ、衣装を信じて選んだのではないか | 適切な衣装を勧めず、主に恥をかかせたのではないか |
侍女が主の装いを整えるなら、慣習を教えるか、一緒に色をそろえるはずです。里樹妃だけが浮いたままでは、知らなかった本人にだけ失敗の印象が残ってしまう。
自分たちの衣装なら、ちゃんと白を選べるのか。だったら、その知識を里樹妃の支度にも使ってよ。
猫猫まで、初めは里樹妃を場の空気が読めない子だと思っていました。けれど侍女の衣装まで見れば、印象がひっくり返る。里樹妃だけを見ていたら、嫌がらせは見逃してしまう。
衣装を誰が勧め、どんな言葉で納得させたかは断定できません。猫猫が見た服の差と、そこから推測した嫌がらせの筋を分けると、侍女の内心まで決めつけずに読めます。
外の人を追い返す時だけ、主の味方になる
原作Web版「蜂蜜その参」では、里樹妃に質問する猫猫へ、侍女が無礼だと抗議します。けれどその侍女は、以前の茶会で主が困っていた時には、かばおうとしませんでした。
困っている最中には動かないのに、外から質問されると急に主を守る。猫猫が見抜くのは、この都合のよい切り替えです。声を上げる相手を選んでいるんですね。
- 里樹妃が困っていても、侍女が助けずにいる
- 外から来た人の言葉を、主への失礼として責める
- 里樹妃には、身近な侍女だけが味方であるように見せる
知らない人に質問されて不安な時、そばの人が抗議してくれたら、頼りたくなるのも自然です。だからこそ、かばう形をした言葉で外との接点を狭められるのが厄介。
味方らしい言葉より、困っている時に何をしたか。この違いで見ると、猫猫の質問と侍女の抗議は、口調の優しさだけでは判断できなくなります。
しきたりを知らない里樹妃に必要なのは、答えを教えてくれる人です。ところが侍女たちは、不慣れなままの主を頼らせようとする。学べないことまで本人のせいにされるのは、きつい。
衣装の問題に続き、もっと切迫した形で、この関係が食事へ持ち込まれます。主の安全を確かめる毒味役が、食べられないものを使って困らせる側に回っていました。
園遊会を漫画で読み返すなら、里樹妃だけでなく侍女たちの衣装と表情にも注目。華やかな席で、誰が主を立てているのか。その違いを絵で追うと、嫌がらせが見えてきます。
毒味役・河南の嫌がらせと、猫猫が伝えた食事の危険
園遊会で里樹妃の毒味役を務めていたのが河南です。主の食事を先に確かめる人が、膳を入れ替えて嫌がらせをする。守るための仕事が、困らせるために使われてしまいます。
第6話「園遊会」では、料理を前に表情を強張らせる里樹妃へ猫猫が目を向けます。食べ物を見る妃と、その後ろの侍女では、同じ食卓にいるのに表情が違います。
- 里樹妃と玉葉妃の膳が入れ替えられ、里樹妃が食べられない魚の料理が出る
- 猫猫は里樹妃の様子と、後ろで笑みを見せる毒味役に気づく
- 園遊会の後、猫猫は里樹妃と毒味役を呼んでもらい、食べ物への反応を確かめる
- 猫猫は、単なる好き嫌いでは済まない危険を毒味役に伝え、対応の責任を突きつける
里樹妃が魚介類を食べられないのは、食物アレルギーがあるためです。河南はそれを好き嫌いのように扱い、嫌がる主の後ろで笑っていました。食事を守る人が、危険を理解していない。
本人が嫌だと示しているのに、食べるよう追い込まれる。苦手なら我慢すればよい、では済まないものまで同じ扱いです。里樹妃の表情を見てほしい。わがままを楽しんでいる顔ではない。
猫猫は叱るだけでなく、何が危ないかを説明する
猫猫は、食べた後の里樹妃の皮膚の反応を確かめます。主が避ける食べ物を知り、その理由まで理解することが、毒味役の務めに関わってくる場面です。
ここで効くのは、里樹妃をかわいそうだと慰めるだけでは終わらないところ。猫猫は侍女へ向き直り、知りながら食べさせた場合の危険と、主に何かあった時の責任を伝えます。
里樹妃が食べられない理由を、侍女の都合で好き嫌いに変えない。猫猫が正すのは知識の不足だけでなく、主の訴えを軽く扱う態度でもあると受け取れます。
膳を入れ替えた嫌がらせと、料理へ毒を入れた事件は区別が必要です。河南が嫌がらせをしたことと、毒を混入した犯人であることは同じではありません。
第6話の膳の入れ替えと毒の発見を追うと、同じ食卓で妃を困らせた人と、危険を止めた人がいたことが分かります。猫猫が河南に向き合ったのは、宴が終わってからでした。
陰口も「毒」として描かれた第6話
監督の長沼範裕さんは、第6話の二つの毒を「物理的な毒と精神的な毒」と説明しています。料理だけでなく、里樹妃への陰口やいじめも、話の芯に置かれているのです。
監督の投稿でも、河南への忠告を、後の展開につながる起点として捉えています。怖い猫猫で終わらせず、この後に侍女がどう振る舞うかを見ると、場面の意味が続いていきます。
笑っていた河南が、猫猫の説明を受けて青ざめる。ようやく軽い嫌がらせでは済まないと気づく場面です。ただ、一度叱られたことだけで、過去の行為が消えるわけではありません。
河南が青ざめたのを見れば、猫猫の忠告は届いたように思えます。でも、その場で怖がっただけかもしれない。次に里樹妃が困った時、河南がどうするかまで気になります。
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侍女頭の河南は味方になる?簪の元侍女頭との違い
河南は、毒味役から侍女頭になり、里樹妃を支える側へ変わります。一方、第38話で里樹妃の簪を身につけ、壬氏に注意される元侍女頭は、河南とは別の人物です。
| 人物・時点 | 役目 | 里樹妃への態度 |
|---|---|---|
| 園遊会での河南 | 毒味役 | 里樹妃を軽んじ、食事を使った嫌がらせに関わる |
| その後の河南 | 侍女頭 | 里樹妃を気にかけ、困った場面で支える |
| 第38話の元侍女頭 | かつて侍女頭だった別の侍女 | 形見の鏡を軽く扱い、里樹妃の簪も身につけている |
河南も初めは加害側だったため、最初から優しい味方だったとは言えません。だからこそ、肩書が変わったことより、里樹妃が困った時に何をするようになったかが気になります。
河南の変化を見たいなら、里樹妃の不安にどう応じるか。園遊会では笑っていた侍女が、その後はそばで気にかける。向き合い方そのものが変わっていきます。
分からないことがある主を、そばで支える
原作Web版の妃教育の場面では、元毒味役の侍女が、最近侍女頭になった人物として登場します。授業後に青い顔をする里樹妃の背中を、心配そうにさすっています。
授業中も、侍女自身が戸惑いながら主を守ろうとしている。全部分かる、何でも任せて、という立派な顔ではありません。自分も不安なまま、里樹妃を一人にしないのです。
猫猫が伝えたのは毒味役の責任です。河南が侍女頭になる人事まで、その忠告だけで決まったと受け取るのは早計。態度を改めたことと、役目が変わったことは分けて読めます。
- 園遊会では、主が困る食事を嫌がらせに使う
- 猫猫から、食べ物の危険と毒味役の責任を伝えられる
- その後は侍女頭となり、不安を抱える里樹妃のそばで支える
河南もおどおどしている。でも、里樹妃を置いていかないんですね。背中をさするだけの短い描写で、園遊会では主を困らせた侍女が、今は違う側にいると伝わります。
河南が変わっても、侍女たち全員が変わったわけではない
味方が一人できたことと、いじめがなくなったことは別です。河南の行動で少し安心した後にも、里樹妃を軽んじる言葉や扱いは残っていました。
漫画で河南を追う時は、里樹妃が困った場面でどちらへ動くかを見てみてください。主の背後で笑う頃と、そばに付き添う頃。同じ侍女の変化を、表情や立ち位置から読みたくなります。
第38話でいじめは終わった?里樹妃の気づきと外からの助け
第38話「踊る幽霊」では、河南が味方になった後も残る冷遇が見えてきます。同時に、里樹妃が周囲の態度を感じ取り、宮の外の人へ相談できるようになった姿もあります。
好みのお湯さえ、侍女に聞き入れてもらえない
里樹妃はぬるめのお湯が好きなのに、用意されるのは熱いお湯。第38話で語られる湯あみの扱いは、嫌がらせが華やかな行事の時だけではないことを伝えます。
お風呂くらい、自分が心地よい温度で入りたい。そんな小さな希望まで通らないのです。衣装のしきたりを知らないこととは関係なく、本人の好みを聞けば済む話なのに。
里樹妃も、侍女たちが自分をよく思っていないことには気づいています。ただ、それを口にできることと、毎日の扱いを変えられることは別。元侍女頭の冷たい言葉は、この後にも続きます。
幽霊の相談が、宮の中の扱いを外へ伝える
里樹妃が金剛宮で見た幽霊の話をする相手は猫猫です。侍女たちだけで話を閉じず、壬氏への相談と猫猫の調査につながっていくのが、この回の大事な動きです。
- 里樹妃が、金剛宮で幽霊を見たという話を猫猫へ伝える
- 猫猫が壬氏へ相談するよう勧める
- 壬氏の指示で、猫猫が金剛宮を調べる
- 調査を通して鏡の事情や侍女の態度が見え、壬氏が元侍女頭を諫める
園遊会では、猫猫が里樹妃の表情から異変を見つけました。今回は里樹妃の話が、外から調べてもらう入口になる。受け身のまま守られるだけ、と決めつけたくない変化です。
もちろん、相談できたからといって、毎日の嫌な扱いがすぐ消えるわけではありません。それでも、侍女の言い分だけで里樹妃の訴えを片づけない人がいる。そこは前と違います。
元侍女頭は形見の鏡を軽く扱い、壬氏は簪を諫める
鏡が亡き母の形見だったと分かると、里樹妃は母を思って涙を流します。ところが元侍女頭は、泣く姿を恥ずかしいと扱い、新しい鏡があれば古いものは不要だとするのです。
新しい鏡があっても、母の形見の代わりにはならない。里樹妃が気にしているのは、道具としてまだ使えるかどうかだけではありません。そこで不要だと決めるのは、話を聞いていない。
壬氏は、鏡が里樹妃にとって大切なものだとして、その扱いを問いただします。さらに元侍女頭が身につけていた、上級妃の紋のある簪を取り上げ、身分にそぐわないと諫めます。
古い鏡は要らないと言いながら、主の簪は自分で身につける。元侍女頭、その選び方はずいぶん都合がいい。しかも上級妃の紋までついているのに、そこは気にならないのか。
簪をめぐるやり取りは、TOHO animationの公式ショートでも公開されています。里樹妃の物を当然のように扱っていた侍女へ、壬氏が主との境界を示す場面です。
大切かどうかを決めるのは、取り上げる侍女ではなく里樹妃です。壬氏の介入がうれしいのは、身分の上下だけでなく、本人にとっての価値を無視させなかったから。
この一件で、侍女たち全員が優しくなったとは言えません。河南が味方となり、猫猫や壬氏へ話が届くようになった。その変化と、残っている問題を、両方見ておきたいところです。
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まとめ|里樹妃のかわいそうな境遇は、侍女との関係で変わっていく
里樹妃がかわいそうに見えるのは、頼るはずの侍女に日々の生活を利用され、本人の失敗やわがままに見せられるからです。河南の変化と外からの助けが、孤立を少しずつ変えていきます。
里樹妃を助ける人かどうかは、優しそうな言葉だけでは分かりません。食べられない理由を聞く、困った時にそばにいる、大切な物を勝手に取り上げない。その行動に、違いが表れています。
派手な救出より先に、好きなお湯の温度を聞いてほしい。里樹妃の話をたどると、そんな日常の扱いまで気になります。高い身分だから当然できるはずのことが、彼女には当たり前ではなかった。
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